Canon EF 85mm F1.2 L 修理報告

Canon EF 85mm F1.2 Lというレンズは、クラス最高の明るさを誇る大口径85mm。研削非球面レンズとフローティング機構の採用で、最短0.95mから諸収差を良好に補正。開放絞りからフレアの少ないシャープな描写力を備え、全撮影域で安定した高画質を発揮します。静粛・高速AFと滑らかなマニュアルフォーカスを実現する、USMを搭載。女性ポートレートやファッション撮影などに最適な機種の一種です。

引用元サイト＝Canon Camera Museum

この機種の修理依頼内容で一番多い現象がフォーカス調整機構の不具合です。MFでもAFでもフォーカス調整ダイヤルが関連伝達部位に伝わらず、ピントが合わないという症状なのですが、今回のご依頼内容の様にカビ等の光学系付着物の課題を抱えている個体も散見されます。

レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

一番大切にしているレンズにカビを生やしてしまいました。Canon EF 85mm F1.2 Lというレンズなのですが、きちんと保湿庫に保管しておいたのに何故カビが生えてしまったのかわかりません。他のレンズにカビが移るかもしれないので、心配でメールした次第でございます。修理可能な機種なのかどうかも解りませんが、できましたら綺麗にしてもらえると嬉しい限りです。

機種名	Canon EF 85mm F1.2 L
シリアルNO	31543
付属品	前後キャップ
課題（所有者さん見解）	きちんと保湿庫に保管しておいたのに何故カビが生えてしまったのかわかりません。

修理報告

お電話にても確認させて頂きましたが、鏡胴内部全てのレンズ表面に埃・カビの付着が確認できました。カビの種類は主に点カビ、菌糸状カビ、雲状カビでした。全て除去できていますので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。只、付着していたカビが腐蝕カビで、除去後の腐蝕痕が随所に残ります。又、中玉の一部のコーティングが白濁していますが、この症状は付着物ではないので、除去できません。又、後玉表面に擦れ傷があります。後玉近くの中玉表面は過去にクリーニング処置が施された形跡がありますが、その際の腐蝕痕跡が目立ちます。この様に、新品同様の全く問題のない個体への復元は不可能ですので、復元した現状にてご納得して頂きます様お願い致します。鏡胴内部を通過する【光束】総量は増えています。外観共に状態の良い固定です。今まで同様大切にご所有下さい。宜しくお願い致します。今回の整備工程にて撮影した光学系付着物及びレンズ鏡胴内部の写真もご参照下さい。保湿庫は湿度を一定に保つという意味では活用してもらって構いませんが、レンズ自体が未使用状態のまま長期間時間が経過しますと、レンズ鏡胴内部に空気の流れが発生しなく、カビが繁殖しやすい環境になってしまいますので、この点も今後はご留意お願い致します。