Carl Zeiss Planar 85mm F1.2 60Years 修理記録

機種名にもあるように、メーカー設立60周年を記念する限定生産品で、総生産台数の関しましては定かではありませんが、当時はもちろん今でも入手は難しい様で、中古市場価格も相応に高額なレンズの様です。同じくこの60周年記念モデルにはより希少な大口径標準レンズCarl Zeiss Planar T* 55mm F1.2 MMも発売されていますが、その希少さゆえ現代の中古市場でもまず見ることの無い、今や幻のレンズとなっている様す。実用はもちろんですがコレクションにもなる希少コンタックスレンズ。私は写真家ではないので、これら記念モデルの実写の妙に関しては語れませんが、レンズ構造に関して研究する意味合いで、55mm、85mm 、135mmの3機種は当協会で保有しております。どちらの機種も製造から半世紀たっていますので、特に未試用期間が長期化した個体は光学系付着物等、随所に問題を抱えているのが実情です。是非、定期的に整備して良い状態をいつまでもキープして下さい。

レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

内部レンズ表面にカビが生えています。クリーニングを希望します。父親からもらいました。写真は撮れるようなのですが、レンズを覗くとカビの様な汚れが酷くて前から気になっていました。綺麗になるものでしょうか？聞く所によるととても希少なレンズの様なので、綺麗にして大事にしたいと思っています。レンズを修理に出すのは初めてで、色々わからない点も多いのですが、友人から御社を薦められました。お願い致します。

何故カビが生えるのか？

レンズ鏡胴内部硝子表面にカビが生えているのに気付いてあわててお問い合わせ頂くケースが多いのですが、そもそもレンズ鏡胴内部は無機質な構造になっていますので、カビの様な菌にとっては本来は環境的にはむいていません。写真愛好家の方々の中には、レンズを大切にする目的で保湿庫なる空間で光学機器を保管していますが、当協会では研究用レンズの個体数が多いこともあってこの様な施設には保管していません。しかし、カビが生えているレンズは1本もありません。他の記事で同じ内容の解説をいくつもしておりますが、保管環境よりもより頻繁に使ってあげることの方がより重要です。フォーカス調整機構螺旋状部にはグリスという栄養分が塗られているので。カビの主な発生源はこの部位になります。

*Carl Zeiss Planar 85mm F1.2 60Years 付属品*

機種名	Carl Zeiss Planar 85mm F1.2 60Years 付属品
シリアルNO	7330093
付属品	前後キャップ、Lens Guard、Metal Hood
課題（所有者さん見解）	内部レンズ表面にカビが生えています。クリーニングを希望します。

修理報告

お電話にてもお伝え致しましたが、鏡胴内部に組み込まれている全てのレンズ表面に各種カビの付着があります。未試用期間が長期化致しますとこの様な症状に至ってしまいます。カビの種類は点カビ、雲状カビ、菌糸状カビです。全て除去致しましたが、除去後の腐蝕痕跡が随所に残ります。この点ご了承お願い致します。点カビの腐蝕痕は目視的にはキラキラと光る点の様に見えます。又、雲状カビの腐蝕痕は極々薄っすらとですが白濁して目視できます。外観、駆動系と主に大変状態の良い個体です。今後は未試用期間が長期化しない様、大切にご所有下さい。お願い致します。今回の整備でまだまだ撮影の道具として充分に活躍できるレンズですので、今まで同様大切にご所有下さい。整備工程にていくつかの写真UPしておきますので併せてご参照下さい。