Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 修理記録

Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5

明るいハイスピードレンズ

Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5というレンズは、Leitz社初の大口径ハイスピードレンズとして発売されました。大口径とは鏡胴内部に組み込まれた硝子部位の表面積が大きい事を意味し、 ハイスピードレンズとは、開放F値が小さいレンズの通称なのですが、レンズ鏡胴内部を通過して、カメラ撮像素子に届く光束=レンズの光総量が大きいレンズの事を差します。速いシャッタースピードで撮影できる明るいレンズという意味合いになります。

ハイスピードレンズの利点

ハイスピードレンズとは、速いシャッタースピードで撮影できる明るいレンズなので、実写時に、手振れ防止に一役かってくれます。それと、明るいレンズの方が、被写界深度が浅いので、どんな写真を撮りたいのか?という写真家にとって選択肢を広げてくれます。主に、この二点がハイスピードレンズの利点と言えます。

その反面、明るいレンズ程、色々な撮影シーンを考える場合、その扱い=操作・設定には難しさも伴うので、被写体の目的が限定されている撮影シーンでは、必ずしもレンズは明るい物が必要という訳ではない様です。撮影家にとっての、ハイスピードレンズの特徴も、今回の修理のご依頼を機に、私自身が学習できるとてもいい機会になりました。

Summaritの意味

次に、Summarit=ズマリットの意味なのですが、Leitz・Leicaのレンズは、レンズの明るさ=開放絞り値=F値によって、名称を分類しているレンズがあります。このレンズの分類の仕方は、他にも切り口があって、二つの単語の合成語で命名されているレンズもありますが、その分類の仕方の詳細は、Leitz Hektor 13.5cm F4.5という機種を整備した際に、修理報告台帳にて過去にレポートしておりますので、そちらを参照して下さい。

それでは、明るさ=解放F値によって、どの様に名称が分類されているのか解説致します。

Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5+keica

解放F値によるレンズ銘柄の由来(定義)

銘柄読み方分類
NOCTILUXノクティルックスF=0.95~F1.25のレンズ
SUMMILUXズミルックスF=1.4のレンズ
SUMMARITズマリットF=1.5~2.5のレンズ
SUMMICRONズミクロンF=2.0のレンズ
ELMARITエルマリートF=2.8のレンズ
ELMARエルマーF=3.4~のレンズ

なので、今回お預かりした Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5というレンズは、解放F値が1.5なので、 Summaritと定義されています。

GmbHとは

ちなみに、 Leitz・Leicaのレンズを整備していると、その銘柄にGmbHという表記が見られます。以前の記事で解説したかもしれませんが、この GmbH=ゲーエムベーハーと発音します。独語ではGesellschaft mit beschränkter Haftungとなるのですが、ドイツ国における有限責任会社の事を意味します。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

メールにてのお問い合わせ

いつもお世話になります。又、オークションでのレンズの購入に関するアドバイスもありがとうございました。落札したレンズ、直接協会さん宛に送る手はずになっておりますので、到着致しましたら、必要なメンテナンス宜しくお願い致します。今回のレンズは、昔から欲しかった機種なので、とても楽しみです。組み込まれている硝子玉が柔らかな材質で、カビ除去後の腐蝕跡が残り易い事も承知致しました。

今回お預かり致しました機種

Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 付属品
Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 付属品
機種名Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5
シリアルNO1515339
付属品前後キャップ、フイルター
課題(所有者さん見解)全体的に検査
ご希望整備費30,000円(税込)くらい

ご自宅で整備する場合

もしも、ご自宅で硝子部位をクリーニングする場合は、専用クリーニング溶液と、専用ペーパーを使って下さい。あまり深くレンズ鏡胴内部にアクセスする必要はありませんが、レンズ鏡胴を大きく二つに分けてから整備すると、クリーニングしやすくなります。

Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 順番に検査
Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 順番に検査

この写真の様な状態にするには、特に特殊な治具は必要ありません。該当箇所を手で反時計方向に回すだけで、上記写真の様な状態に分解できます。高価なレンズですので、これ以上のアクセスは、構造の理解がない段階では、控えた方がいいと思います。

各部位の解説=どの部位をクリーニングするのか

この機種に限らず、レンズ鏡胴内部に組み込まれている硝子部位には、汚れやすい部位があります。全ての硝子部位はこちらでクリ-ニングしますので、納品後は下記写真の硝子部位だけ、ご自宅で時々洗浄して頂ければ、状態を維持できると思います。

クリーニングする部位
クリーニングする部位

向かって左側の鏡胴には、光学系硝子と絞り羽ユニット機構と、フォーカス調整機構の駆動系部位が組み込まれています。絞り羽を解放状態にして、その向こう側にある硝子玉の表面のみを洗浄してあげて下さい。絞り羽に振れない様に気を付けて下さい。

Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 解放時
Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 解放時

一方、向かて右側の鏡胴は、光学系硝子部位のみで構成されています。写真ユニットの裏側の硝子面も比較的汚れやすい傾向にありますので、該当面のみの処置で、随分きれいに復元します。この二つの硝子玉表面をきれいに維持できれば、当分の期間は状態が保てると思います。処置後の再組立も容易です。

整備報告

全てのレンズ表面に付着していた埃・カビ除去しました。カビの種類は主に点カビと雲状カビでした。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。点カビの一部が腐食カビで、除去後の腐食痕が若干ですが残ります。又、白濁の主な原因は、中玉レンズユニット表面に付着していた雲状カビでした。

この、雲状カビ自体は除去しましたが、少し根が深く、若干ですが除去後の腐食痕が薄っすらとした白濁症状として残ります。この様な症状、ご了承お願い致します。絞り羽ユニット機構及びフォーカス調整機構共に問題ありません。以前から欲しかったレンズとの事、今後も撮影の友として大切にご所有下さい。尚、今回の整備工程にて撮影した写真UPしておきますので、併せてご参照下さい。ご自身にても整備されたい主旨も、このレポート内の知識でお願い致します。

Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 絞り時
Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 絞り時
Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 点カビ
Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 点カビ=処置前
Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 白濁
Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5 白濁=処置前

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ着払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費30,000円(税込)
クロネコさん送料ご依頼者様ご負担
決済方法銀行振り込み
合計30,000円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。