レンズ修理販売の特徴

レンズ修理とレンズ販売の違い

筆者は光学機器の修理の分野で日々生きていますので、全国の写真愛好家の方々からのレンズ修理依頼を受ける仕事がメインとなります。同時に光学機器に関する技術サポートも生徒さんに施していますので、そういう意味では、教育分野での仕事も行なっている事になります。この技術サポートを受けている生徒さんの中に、元々レンズの転売を仕事としている方がいらっしゃいます。筆者は光学機器に限らず、転売というビジネスモデルにはあまり興味がないのですが、今回はこのレンズ修理販売という仕事とレンズ修理依頼という仕事の違いから、レンズ修理販売というビジネスモデルの特徴に関して私が普段感じている事を語ってみたいと思います。

結論

先ず初めに結論から言いますと・・・

レンズ修理依頼整備する事で感謝され、その分の費用を受けとることができる
レンズ修理販売整備という付加価値が整備後の状態に左右されてしまうので
必ずしも販売価格に反映するとは限らない

という事になります。

レンズ修理依頼

レンズ修理依頼とは、主に写真愛好家の方等からその方が所有しているレンズの修理を依頼されて、修理の範疇にて整備を施して依頼主に納品する仕事を意味する。

レンズ修理依頼

このレンズ修理依頼という仕事も、後に述べるレンズ修理販売という仕事も、共通点としては該当レンズが抱えている問題点を修理の範疇で解決する事にある。一般的には、光学系付着の除去や、絞り羽ユニット機構の固着緩和や、フォーカス調整機構ダイヤルトルクの改善という課題だ。

対象となるレンズの課題を解決した後は、当然の流れとして、その後は所有者さんに納品する事になる。なので、レンズ修理依頼という仕事は、仕入れという作業がない。先ずはこの事が大きな特徴と言える。

又、レンズ修理依頼という仕事の特徴として、整備前後に於いての該当レンズの状態の評価基準という問題がある。どういう事かと言うと、整備を施す前の状態を所有者さんとこちらの両者は知っている。なので、整備後の改善されたレンズの状態との比較評価が可能になる。

例えば、カビ等の光学系付着物がそのレンズの課題だとすると、整備前はカビの付着はあったが、整備後はそのカビが除去されていて、クリアーな個体に復元した変化を両者間で確認・評価する事が可能になる。その場合、仮に付着物除去後に腐蝕痕が残ったとしても、その事を検査段階で、所有者さんに報告して了解を得ておけば問題はないケースが多い。

レンズ修理依頼の対象となるレンズは、主に昔の機種が多い。どんな課題を抱えているレンズも、整備を施せば完全復元する訳ではない。しかし、レンズ修理依頼の仕事の場合、依頼主と整備を施すこちらの二者は復元前後の状態の変化が把握できるので、完全な復元ができなかったケースでも依頼主さんから納得して頂き、喜んでもらった上で、入金して頂き、納品する事ができるのが、このレンズ修理依頼という仕事の、もう一つの大きな特徴だ。

レンズ修理販売

一方、レンズ修理販売という仕事は、ビジネス目的で最初にレンズを仕入れて、修理の範疇で整備を施し、改善された状態の付加価値を販売価格に反映させて利益を得る仕事の事を意味する。筆者は個人的にこのビジネス構造にあまり関心がないので、協会の活動としても積極的にこの仕事をした事がない。懇意にしている写真愛好家の方から依頼されて、その方が求めている機種を仕入れて、整備を施して、購入してもらう事がある程度の活動を時々している程度に過ぎない。

レンズ修理販売.

このレンズ修理販売という仕事は、当然だが、最初に仕入れという作業を行う必要がある。仕入れた後に販売する事を前提としているので、なるべく安価に仕入れたいという考えが働くのは当然だ。筆者は転売ビジネスの専門家ではないので、詳細を語る資格はないが、光学機器の転売に関しては、修理の範疇で整備して後に販売するのが、本来のあるべき姿なのではないか?と感じている。なので、技術サポートを受講している生徒さんには、もしもレンズを転売するのでれば、修理ごの個体を販売する事を推奨している。

その際、このレンズ修理販売という仕事は、先に解説したレンズ修理依頼という仕事と比べると、大きな違いがひとつある事に気が付いた。それは、どんな課題を抱えているレンズも、整備を施せば完全復元する訳ではない。・・・という要素に大きく関係する。どういう事かというと、レンズ修理依頼という仕事は、例え処置後の復元状態が100%ではなくても、依頼者さんには喜んでもらえるし、納得してもらえるが、レンズ修理販売の場合は、そもそも処置前後の復元状態の変化を整備を施した本人しか知らないので、整備後のレンズを販売する際、その経緯を文章で説明するしかない・・・という事になってしまう。

なので、復元状態が検査段階の予測通りあまり芳しくない結果に至ってしまうと、折角整備を施したとしても、付加価値が低く評価されてしまう結果となってしまう。該当レンズを欲しいと思ってネット上で探している将来の購入者さんは、該当レンズの整備前の状態を目視できない。この点が、レンズ修理依頼とレンズ修理販売の決定的な違いとなる。二つの仕事にはこの様な違いがあるので、両者ともにその仕事は社会的な意義はあるものの、レンズ修理販売の場合は整備を施しても、必ずしも整備に見合った付加価値を販売価格に反映できるわけではない事を常に意識して、この分野の仕事をして欲しいと思っています。 

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。