Ernst Leitz GmbH Wetzlar Summicron 5cm F2というレンズの製造年は1954年(昭和29年)頃と認識しております。今からもう67年も昔の話です。Ernst Leitz(エルンスト ライツ)社はもともと35mmフィルムカメラを開発した事で知られています。それ以前の生い立ちとして、Optisches Institut=オプティシェス・インスティトゥートという顕微鏡メーカーだった事はあまり周知されていない様です。
エルンスト・ライツ (Ernst Leitz)1世という人物が Optisches Institut の経営を引き継ぎ、 Ernst Leitz(エルンスト ライツ) というのが社名になった歴史的経緯を持つメーカーのレンズになります。日本の企業で例えると、Bridgestone =ブリジストンも創業者の石橋さんの名前からその由来から来ていますし、古いライカのフイルムカメラやオールドレンズにErnst Leitzという刻印や表示がされているのは、それがその当時の社名だった事に由来します。
ちなみにWetzlarという刻印の意味は、 Ernst Leitz 社の創業の地が Wetzlar という地名だった事に由来しています。これは、ドイツという国の習慣で、ローライ=Rolleiの古いカメラにもBraunschweig=ブラウンシュヴァイクという創業地が刻印されていますし、時計メーカーのIWCにもSchaffhausen=シャウハウゼンという刻印が施されています。ちなみに、GmbH=ゲーエムベーハーとは、ドイツ国内での有限責任会社の意味合いを持ちます。
Ernst Leitz GmbH Wetzlar Summicron 5cm F2という機種は、沈胴式モデルの一種になりますが、同じ名前のSummicron 5cm F2でも、1956年(昭和31年)頃に固定鏡胴モデルが発売されています。この二つのタイプのレンズの実写の違いに関しては言及できませんが、どちらのタイプも毎月修理依頼を受けますので、 Ernst Leitz 社のレンズの中でも人気があるのは事実です。そして、構造的にはどちらの機種も金属・硝子部位共々とても上質な素材からできています。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ライカズミクロンL沈胴についてです。沈胴引き出そうと回転させたら前玉がネジから前で外れ、元にねじ込もうとしましたが、ねじ込んでも隙間が開き、また、絞り指標も変な場所で止まってしまいます。よろしくお願いします。田斉さま。早速の返信ありがとうございます。ご案内くださったやり方で、自分で何度もチャレンジしましたが、絞りリング指標?🔴マークが絞り値の場所に来ず、また、奥まで締まり切らず、そこからはかなり硬く、怖くて力を入れて締め切ることもできず、今回、修理をお願いいたしたく、連絡した次第です。何とぞ助けてください!
田斉様ありがとうございます。では、個体を送付させていただきます。よろしくお願いします。
こちらからのお返事
○○様。ご自身で外してしまった部位の再組立が上手くいかないという趣旨のお問い合わせ内容になりますでしょうか?頂きましたメールの文面からの推測になりますが外してしまった部位を時計方向に水平に回しながらゆっくりと締め付けていけば、元の状態に復元するものと思います。実際に該当個体を初見した上でのお返事にはなりませんがゆっくりと丁寧に再組立してみて下さい。その上であまり上手くいかない様でしたら再度ご連絡頂けますと幸いでございます。いずれに致しましても○○様の大切な光学機器です。業者さんの選定等々充分にご検討下さい。
お預かりしておりますレンズ機種
機種名 | Ernst Leitz GmbH Wetzlar Summicron 5cm F2 |
シリアルNO | 1096828 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | 再組立が上手くいかない |
お電話にての打ち合わせ | 諸々整備内容等承諾済 |
修理報告
お電話にても詳細お伝え致しましたが、所有者さんが意図せず外してしまった部位が、絞り羽ユニット機構部位を押えている構造になっていまして、本来ですと所有者さんが外してしまった部位以外の構造の緩みが原因で、再組立が上手くいかない主な原因になっていました。この緩みは、対物側ではなくて、マウント側の固定リングが担当しているのですが、この部位の調整を施しましたので、正規の位置に全て復元しております。
この部位が通常使用下で緩んでしまう事は稀なのですが、今まで通り普通に使って頂いて結構です。今回の処置工程にて、カビ等の光学系付着物も気になりましたので、除去処置施しております。レンズ全体としての光学的な付着物は除去後一切ございません。スカッと抜ける様な眩しい個体に復元しております。
処置(除去)前の硝子部位写真
付着物は全て除去できております。レンズが綺麗に復元した分、元々あった擦れ傷が目立ちますが、この点ご了承お願い申し上げます。又、いい機会ですので今後ご自宅でレンズ鏡胴内部の硝子玉表面をご自身で定期的にクリーニングしてあげて下さい。意図的ではなかったにしろ、今回ご自身で外してしまった部位の裏側硝子表面ともう一方の部位に組み込まれている絞り羽の向こう側の 硝子表面の2面をクリーニングする事で、今後ほぼ永遠に綺麗な状態を維持できます。
その為には、今回ご自身で外してしまった機構の構造を知っておく必要がありますが、以下写真と動画で解説しますので、お時間ございます時に閲覧して頂き、この部位の構造だけでも理解して頂ければ、どこかの業者さんに依頼する事なく、大切な1本を自分で整備できる事ができると思います。硝子玉単体を整備する場合は、少し難しいのですが、塊=ユニットの扱いですので、ご自身で整備しても光軸等の光学系数値に支障をきたす事はありませんのでご安心下さい。それでは、該当部位の構造に関して以下解説させて頂きます。
動画での解説
初めにこの部位の基本的な構造を解説しますのでポイントを押えて下さい。一番大切なのは絞り羽調整ダイヤル指標リングという金属部位の存在です。この部位は単独で中間リングととして機能していますのでこのリングの扱いを理解して下さい。尚、このリングが単体で組み込まれているのは、Ernst Leitz GmbH Wetzlar Summicron 5cm F2 沈胴式モデルの場合は前期型のみの構造になります。
4分間くらいの動画解説になりますが、是非全画面表示にて学習お願い申し上げます。
写真にて解説
もう少し詳しく写真にて解説させて頂きます。ポイントは重複しますが、 絞り羽調整ダイヤル指標リングという金属部位の存在です。 この金属リング部位の扱いを特に再組立時に留意して下さい。ここさえ押さえておけば大丈夫ですので・・・
再組立時のポイント
下記2枚の写真の様にそれぞれの部位の凹凸部分をきちんと位相を合わせて組み立てて下さい。
この構造の理解さえ押さえておけば、今後もしもレンズユニットが外れてしまった場合も冷静に対応できるものと判断させて頂きます。この二つの部位の凹凸関係を理解していれば、 絞り羽調整ダイヤル位置指標がずれてしまう事はありません。 又、上記留意事項を守って頂いた上で、再度同じ様な症状になってしまった際には、送料だけご負担頂ければ、今後無償にて整備致しますのでご安心下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 15,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 神奈川県(一律)=930円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 15,930円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔
お礼のメールを頂きました
今後の仕事の励みになります。ありがとうございました。今まで同様大切にご所有下さい。