日本国内では、あまり知られていない機種だったかもしれませんが、世の中がまだマニュアルフイルム時代に、Tokina SL 400mm F5.6という普及型汎用単焦点望遠レンズがあって、海外市場を中心に販売されていました。やがてAF時代が到来し、同じく普及型汎用超望遠レンズとして、登場したのが、今回お預かりする事になったTokina AT-X AF 400mm F5.6という機種になります。 SL 400mm F5.6とほぼ同じスペックなのですが、AF駆動時に有効なIF＝インターナルフォーカスとして再設計された機種が、Tokina AT-X AF 400mm F5.6というモデルになります。価格の割には描写性能が良く、今でも結構人気がある機種の様です。
AF機種は修理可能なのか？
AF且つZoomレンズは、当協会ではお預かりしておりませんが、AF機構単焦点レンズの場合は、その個体の抱えている課題によります。でも、望遠レンズの場合は、処置後再組立時検査に、無限遠に支障が出たケースが過去に一度あったので、積極的にはお預かりしておりません。今回は普段から懇意にしている写真家の方から熱いメッセージ依頼がありましたので、レンズ後群硝子部位のみの処置限定でお預かりする事になりました。
インターナルフォーカスとは
各種交換レンズのフォーカス調整機構には、大きく3種類のフォーカス駆動方式が選択されています。それぞれ表にして解説致します。
| フォーカス駆動方式 | 仕組み | メリット・デメリット |
| 全体繰り出しフォーカス方式 | レンズの全長が変化する | メリットは、フォーカスの位置により収差の変化が少ないために画質が安定して優れている。 単焦点レンズやマニュアルフォーカス専用レンズに使用されることが多い。 デメリットは、レンズの全長が変化するために、レンズ重心が変動してバランスが変わる。 望遠レンズには特に不利な場合が多い。 |
| 前玉フォーカシングフォーカス方式 | レンズの1番前のレンズ群を繰り出す | メリットは、構造がシンプルにでき、ズームレンズに使用されることが多い。 全群繰り出し方式よりオートフォーカス速度は有利。 デメリットは、レンズの全長が変化するために、レンズ重心が変動してバランスが変わる。 前玉が回転することがあるため、PLフィルターを取り付ける場合などに操作し難い。 |
| インターナルフォーカス方式 | レンズ内部のレンズ群を移動させる | メリット ・軽量なレンズ群を移動させることでオートフォーカスの高速化とマニュアルフォーカスの軽快さ ・レンズの全長が変化しないために、レンズ重心の変動が少なくバランスが良い。特に望遠レンズに有利な場合が多い。 ・フィルターを取り付ける前玉が回転しないために、円偏光フィルターの操作性が良い ・レンズ系全体のコンパクト化が可能 ・最短撮影距離を短くできる |
文章だけだとチョット解り難いと思いますので、前玉フォーカシングフォーカス方式と、インターナルフォーカス方式に関しましては、解説補足動画を撮りましたので、ご参照下さい。
前玉フォーカシングフォーカス方式
オートフォーカスでレンズが繰り出し、前玉が回転する方式で、レンズボディ内DCモーターで駆動する際、オートフォーカスの動作音が大きいのも特徴です。
インターナルフォーカス方式
今回お預かり致しましたTokina AT-X AF 400mm F5.6という機種は、まさにこのインターナルフォーカス方式でフォーカスを調整しています。フォーカス調整ダイヤル目盛窓にて駆動を確認します。
レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたメール
いつもお世話になっております。写真友達からもらったレンズなのですが、思ったより使いがってが良く気に入っているレンズがあります。Tokina AT-X AF 400mm F5.6という機種で、携帯性はイマイチなのですが、これからも頻繁に使っていこうと思っています。レンズリヤ側に、細かな埃の様なものが気になってメールしました。実写には影響は感じられないのですが、一度気になると不安なので、連絡しました。協会さんでは、AFとかZoom機種は取り扱っていないといっていたのは覚えていますが、何とかお願いできないでしょうか？
今回お預かり致しました機種
| 機種名 | Tokina AT-X AF 400mm F5.6 |
| シリアルNO | 5000896 |
| 付属品 | 前後キャップ |
| 課題（所有者さん見解） | 後群硝子部位付着物除去 |
| ご希望予算 | 20,000円くらい |
整備報告
レンズ鏡胴内部後群レンズユニット内硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去しました。所有者様のご見解によりますと、点カビの付着が特に後郡にあるとのご指摘でしたが、絞り羽ユニット機構よりリヤ側の中玉ユニット及び後玉ユニットレンズ表面に、点カビと雲状カビが集中して付着していました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。只、雲状カビと点カビが一部腐食カビで、除去後の腐食痕が若干ですが残ります。
レンズ全体が綺麗になった分、この様なこの個体特有の、除去できない本来の姿が明確になります。この症状がどの様に眼に映るかはその人によって違いはあるとは思いますが、現状付着物はありませんので、この点、ご了承お願い申し上げます。絞り羽ユニット機構及びインターナルフォーカス調整機構問題ございません。お気に入りの機種との事、今まで同様今後も大切にご所有下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
| 発送方法 | クロネコ発払い便 |
| 送り状NO | 別途メールにて報告 |
| 配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
| 整備費 | 18,000円（税込） |
| クロネコさん送料 | 千葉県（一律）＝930円（税込） |
| 決済方法 | 銀行振り込み |
| 合計 | 18,930円 |
| お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
（一社）日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔
