Industar-50-2 50mm F3.5 修理記録

今回お預かり致しましたレンズは、1953年に製造されたIndustar-50という機種をベースに設計された、旧ソ連製テッサー型オールド標準レンズになります。ちなみにユピテルと発音するのですが、キリル文字表記だとЮПИТЕР-50-2 50mm F3.5となり、KMZマークが銘柄リングに刻印されていますので、旧ソ連時代のモスクワ州 ルクラスノゴルスク機械工場で生産されたレンズという事になります。

ロシア語は勉強していない人にとっては勿論意味不明な言語ですが、この国はレンズの様な光学機器を工業生産扱いで製造・管理していますので、ロゴマーク等を勉強すれば、生産地も解る仕組みになっています。他にも幾つか生産工場のマークはありますが、気になる様でしたらご自身で学習してみて下さい。

Industar-50-2 50mm F3.5 というレズは、手に持ってみると解るんですが、とても軽量でコンパクトなボデイーになっています。個人的には、重いレンズ程機能的には優れているのかな？という偏見があるのですが、このレンズに関しても、普段から懇意にしている写真家の方に意見を聞いてみました。

撮影面での評価としては、メリハリの利いたシャープな描写が特長という事で、当時のソ連光学分野に於ける第一人者で、Mikhail Dmitrievich Maltsev（ミハイル・ドミトリエビッチ・マルツェフ）博士により設計された、設計に無理の無いF3.5という開放F値ということも相まって、外観からは想像もつかない程、遠景から近景まで、しっかりとしたシャープな描写が得られるレンズだそうです。只、形状上、レンズフードの装着は難しく、レンズにはマルチコートが施されていないため、逆光時にはフレアやゴーストが発生し易いとの事でした。

元々は、旧ソ連で最初に大量生産された1眼レフフイルムカメラ＝ZENIT Cの付属レンズで、1955年から61年にかけて23万台あまり製造された歴史を持ちます。こんな経緯で製造され、今でも愛用されているレンズを今回はお預かりする事になりました。

レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

今回お預かり致しました機種

整備報告

フォーカス調整機構螺旋状部グリスがレンズ鏡胴内壁を伝わって、汚れを巻き込みながら、絞り羽ユニット機構まで流れ落ちてしまったのが主な原因でした。その汚れを除去しましたので、駆動は復元しております。絞り値16から3.5全領域に渡って、適正な開閉状態で駆動しております。

お電話にてもお話し致しましたが、この様な症状になってしまう傾向の固定は、整備後も同じ様な症状に再びなってしまう可能性が強いのですが、その際は送料のみご負担頂ければ、無償でこちらで整備致しますので、その点はご安心下さい。今回の様に、未使用期間が長期化しますと、その可能性が高まります。今後はマメに使ってあげて下さい。宜しくお願い申し上げます。

整備工程にて、2か所硝子部位表面のカビが気になりましたので、併せて除去処置お度こしました。レンズ全体としての、光学的なクリアー度も復元しております。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法	クロネコ発払い便
送り状NO	別途メールにて報告
配送状況	お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費	10,000円（税込）
クロネコさん送料	埼玉県（一律）＝930円（税込）
決済方法	銀行振り込み
合計	10,930円
お願い	ご決済後メールにてお知らせ下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
（一社）日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔