修理行程コンテンツを公開する主旨
この教材に使用するレンズは、全て当協会に実際にメンテナンス依頼のあった実際の個体を使わせて頂き解説を加えております。従いまして、その内容を写真を見ながらじっくり再現すれば貴方が所有する同じ機種にも当てはまる様に構成されております。
自分のレンズと同機種なのかを先ずはよく確認して頂き、焦らずにじっくり取り組んで下さい。レンズ鏡胴内部の普段は滅多に触れる事のないガラス玉や絞り羽根に直接アクセスできる様になります。手順通り行えば、貴方のレンズは今後も末永くクリアーな状態で、良き撮影ライフのパートナーになってくれると思います。
古き良きレンズをメンテできる職人さんも私同様、だんだん高齢化なさっています。各メーカーさんも昔のレンズ程受け入れていないのが実情です。又、この種の修理を教える機関そのものが、日本には殆ど存在しないのも事実です。
このままですと世界中にある特に昔のレンズを修理できる人がいずれいなくなってしまいます。一般社団法人 日本レンズ協会は、この様な現状と今後の予測をもとに、レンズ修理事業と並行して教育分野の一環として、このレンズ修理の教科書をシリーズ化し、電子書籍の体系としての出版も並行して、コンテンツの配信を実行する事を第二の事業の柱にする事に致しました。
Ernst leitz Wetzlar Summaron 3.5cm F3.5というレンズ
この機種も当協会に毎月修理依頼がある人気の機種です。又、製造本数が多く、ライカレンズの中でも手頃な価格で入手できるそうなので、ご自宅で整備できる様になれば、カビが生えている個体でも、より安価に安心して購入できると思います。整備工程はそんなに複雑ではないのですが、各種部位が小さいので、取扱いには充分気を付けて下さい。取り出したガラス玉の裏と表の間違えという様な単純なミスが混乱する原因になり易いです。
第Ⅰ部(この機種の構造の理解)
この機種は、鏡胴内部に組み込まれているレンズが、白濁してしまうという共通の課題を抱えているのがひとつの特徴です。その除去工程を解説しますが、その前に、第Ⅰ部ではこの機種の構造について解説します。尚、今回の修理依頼レンズの課題は、リヤ側からのアクセスは必要なかったので、フロント側からのアクセスのみの解説になります。
この様にレンズを覗くと白濁している個体が殆どです
・この原因は【F3】レンズ(前玉から数えて3番目)の付着物です
・このWebサイトでは合計3枚のレンズのクリーニングについて解説します
・この処置を習得すればご自身のレンズはクリアーに蘇ります
・絞り羽根ユニット、フォーカス調整機構はとても丈夫にできています
・動画も参照し、クリアーなレンズ維持の為にじっくり習得して下さい
検査・分解のGOOLはこの様な状態です
・フロント側から検査・分解しこの様な状態にします
・レンズ×3枚にアクセスする事になります
・この状態にする為の手順を解説します
・前玉【F1】×両面、中玉【F2】×両面、中玉【F3】×表面を処置します
・この教材ではフロントから数えて一番目レンズ=【F1】レンズと呼びます
アクセス手順①
・レンズフロント側からアクセスします
・この個体の機種名が刻印されている面です
・リヤ側は処置しないのでリヤキャップは付けたままで結構です
アクセス手順②
・レンズリヤ側は今回のWebサイトでは解説しません
・こちら側からのアクセスが必要な課題は個別にお問い合わせ下さい
・リヤキャップは付けたままでも処置はOKです
アクセス手順③
・前玉【F1】レンズを外します
・この様な形状をしています
・表裏の形状が明らかに違うのでマーキングは不要です
アクセス手順④
・使用する治具です
・前玉【F1】レンズと同径規格のゴム治具を用意して下さい
・この径サイズは応用範囲が広く一つあると重宝します
・入手先:お近くのホームセンター等
・価格目安:100円前後
・ユニデイー
アクセス手順⑤
・この様にゴム治具をレンズフロント部に当てがいます
・押しつけながら反時計廻りに回転させます
・固着していなければすんなり回転します
・固着が酷い時は個別にお問い合わせ下さい
アクセス手順⑥
・次に中玉【F2】レンズを外します
・この様な形状をしています
・表裏の形状が明らかに違うのでマーキングは不要です
・向きはしっかり覚えておいて下さい
・レンズ鏡胴本体を逆さまにすると取り出せます
アクセス手順⑦
・今までの処置で分解作業は終了です
・これ以上分解する必要はありません
・作業台上はこの様な風景になります
・外した順番は解り易いように工夫して下さい
注意点
・金属製の治具は使わないで下さい
・力が入り過ぎてレンズを壊してしまう場合があります
・リング径と同サイズのゴム治具を使用して下さい
・万が一固着して外せない場合は個別にお問い合わせ下さい
第Ⅱ部(洗浄とその為の治具・溶剤)
第Ⅱ部では取り出したレンズの洗浄とその為の治具・溶剤について解説致します。必要な治具に関しては、他のWebサイトにても解説している同様の内容になりますので、既に学習済の読者さんはスキップして下さい。
クリーニング専用ペーパー
・レンズの洗浄には専用ペーパーを使って下さい
・推奨は【dusperΣ】です
・チョット高価ですが是非【ダスパー】を購入して下さい
・一枚一枚が大きいので四分の一にカットして使って下さい
・同じくカメラ量販店のメンテナンスコーナーで扱っています
・入手先:カメラ量販店
・価格目安:1,500円前後
・ヨドバシカメラ
かなり大きいので一枚全部を使うのは勿体ないです
・ポイントはレンズの中央から外側に向かって拭きます
・円を描くようになるべく均等な力で拭きます
・あまりもたもたしないでササット拭き取るのがポイントです
四分の一サイズがベストです
・もしかしたら小さいサイズの規格商品が市販されているかもしれません
・ハサミでカットして下さい
・1クリーニング=1枚を使用します
・同じペーパーを何度も使い回ししない事
・使用後のペーパーは鏡胴外観等の拭き取りに使います
カットしたダスパーを木製のトングに巻き付けます
・上手く巻きつけができない時はセロテープを使ってださい
・その際はなるべく根本にテープを巻きます
・金属製のピンセットは使用禁止です
・レンズを傷付ける恐れがあります
ハンドラップの先端をプッシュします
・必要分が出てきます
・高価なのでほんの少しで充分です
・沢山使えば綺麗になるという訳ではありません
ハンドラップとレンズ専用クリーニング溶剤
・当協会ではカビが除去しやすく、拭きムラが残り難い専用溶剤を使っています
・一般の方はカメラ量販店等で扱っているレンズクリーニング溶剤で十分です
・それでもかなり高価ですから、無駄なく使って下さい
・沢山使用すればよいと言うものでもありません
・カメラ量販店のメンテナンスコーナーで扱っています
・入手先:カメラ量販店
・価格目安:3,000円前後(300ml)
・ヨドバシカメラ ヨドバシカメラ
・保管容器のお勧めは【ハンドラップ】です
・蒸発も防止できて必要分をプッシュして使えます
・片手で必要量が出てくるのでとても重宝します
・入手先:東急ハンズ等
・価格目安:2,000円前後(材質・サイズによります)
・東急ハンズ
それでは【F3】レンズ表面から洗浄していきます
・この表面は絞り羽根ユニットの向こう側にあたります
・絞り羽根を開放状態にして処置して下さい
・この工程で絞り羽根ユニット機構も動きもチェックできます
・動作に課題がある場合は別途お問い合わせ下さい
絞り羽根開放時
・この状態で処置します
・洗浄時この絞り羽根本体に触れない様に注意して下さい
・慣れないうちはあまりレンズ外周までは洗浄しないで下さい
・それでも十分にレンズはクリアーに復元します
絞り羽根絞り時
・この状態ではレンズ表面をクリーニングできません
・必ず開放状態にしてから処置して下さい
次に【F2】レンズをクリーニングします
・表と裏両面洗浄します
・レンズ中央から円を描く様に外側に向かいます
・ササッと素早く仕上げます
・何度も同じペーパーを使うと上手くいきません
・一枚のペーパー=一回の処置が原則です
次に【F1】レンズをクリーニングします
・表と裏両面洗浄します
・レンズ中央から円を描く様に外側に向かいます
・ササッと素早く仕上げます
・何度も同じペーパーを使うと上手くいきません
・一枚のペーパー=一回の処置が原則です
再組立て作業に移ります
・一枚一枚のレンズの状態を再度確認して下さい
・問題がなければ再組立て作業に進みます
・空気中の埃が必ず付着していますのでブロアーで仕上げて下さい
・この時、少し時間がかかりますのでレンズに空気中の埃が付着します
・必ず組立る直前にその埃をブロアーで飛ばして下さい
・お勧めのタイプは、独立起立型のブロアーです
・少し割高になりますが、コロコロ転がるタイプのものは作業に集中できません
・ヨドバシカメラ
・価格目安:2,500円前後(サイズによります)
レンズが綺麗に復元しました
・付属品を確認して下さい
・折角メンテしたレンズです
・前後キャップを装着して大切に保管して下さい
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この機種は、今でも人気があり市場価格もそれ程高くはありません。日本レンズ協会にも毎月修理依頼のある機種の一つです。でも、何故かレンズ鏡胴内部に組み込まれた部位にカビが付着しやすい傾向があり、この課題をご家庭でも解決できれば、より一層入手しやすい機種になると感じています。
その為の整備手順を解りやすく解説しました。本書に使用するレンズは、全て当協会に実際にメンテナンス依頼があった実際の個体を使わせて頂き解説を加えております。従いまして、その内容は写真を見ながらじっくり再現すれば、あなたが所有する同じ機種にも当てはまる様に構成されております。自分のレンズと同機種なのかをまずはよく確認して頂き、焦らずにじっくり取り組んで下さい。古き良きレンズをメンテできる職人さんも私同様、だんだん高齢化になっています。各メーカーさんも昔のレンズ程受け入れていないのが実情です。また、この種の修理を教える機関そのものが、日本には殆ど存在しないのも事実です。このままですと、いずれ世界中にある昔のレンズを修理できる人がいなくなってしまいます。一般社団法人 日本レンズ協会は、この様な現状と今後の予測をもとに、レンズ修理事業と並行し、教育分野に取り組んでいます。その一環として、本書『カメラレンズ修理の教科書』をシリーズ化してまいります。
ご挨拶
最後までお読み頂きありがとうございました。以上がこのレンズのすべてでございます。この手順・使用治具・溶剤にてあなたもこの機種に関してはプロ並みのメンテナンスが可能な内容になっております。途中途中で、ポイントをお伝えしましたが、何度も読みかえして完璧なメンテができる様になって下さい。
写真と文章にて伝えきれなかった微妙なニュアンスもありますが、その都度こちらにお問い合わせ頂ければ、可能な限り応対させて頂きます。当協会ではプロ養成の講座も準備しておりますがこの教材はご自身にて御所有のレンズに関して外部に頼る事無く自分でメンテナンスができる事を目的とした内容になっております。この点最後になりますがご了承頂きたいと思います。
どんなレンズも道具としての定期的なメンテナンスが必要です。折に触れ、大切なレンズをメンテして頂き、末永く良いコンデイションにてレンズを御所有されるお手伝いができましたら、当協会も本望でございます。
尚、まだ掲載されていない個体で、その修理方法・工程がお知りになりたい方は、お気軽にお問い合わせ下さい。優先的に採用しコンテンツとして販売させて頂きます。
あなたの素晴らしい撮影ライフを祈っています。
一般社団法人・日本レンズ協会代表理事兼光学研究所所長 田斉健輔