今回お預かり致しましたNikon Nikkor-S Auto 50mm F1.4というレンズは、1972年から製造・販売されていたレンズで、私の記憶によると、グアム島で元日本兵であられた、横井庄一氏が発見され、同氏の「恥ずかしながら帰って参りました」という発言が話題となった年でした。Nikon Nikkor 50mm F1.4のモデルは、沢山の機種が製造されていて、私自身もその全てに関して解説するだけの経験値がございません。
Nikon Fというフイルムカメラ時代の交換レンズとして製造され、このNikon F自体も、そのデザインの斬新さも当時は話題を集めていました。レンズの鏡胴は金属製でずしりと重く、絞りリングの感触も現代レンズとは一味違う重厚さがあり、市場で流通している個体は、光学系付着物として殆どの硝子部位表面にカビが発生し、フォーカス調整機構の螺旋状部はグリス切れで、そのトルク感はスカスカな個体が多いのが実情です。
カビに関しましては、オールドレンズ特有の写りを味わうという視点で、あまり神経質になる必要はないと思うのですが、硝子部位全面を覆った様な状態の個体は、除去処置を施した方がいいかもしれません。フォーカス調整機構螺旋状部はとても上質な金属同士でできていますが、乾いた状態で使用されていた個体は、その金属が摩耗してしまっているので、トルク感の調整は再グリスアップ処置では補えきれないのが実情になります。
Nikon F というフイルムカメラ
このカメラは、Nikon初の一眼レフフイルムカメラで、ボデイーデザインは、Nikonのロゴデザインを手掛けてきたグラフイックデザイナーの亀倉氏が発案したという逸話が有名です。このカメラの外観の一番の特徴のピラミッド型ファインダーは、日本では幽霊の三角頭巾を連想させると一部批判的な意見もあったそうですが、全体としての直線的なフォルムは、海外では好評でした。今回お預かり致しました機種は、こんな時代背景に製造・愛用されたレンズになります。
修理ご依頼に至るまでの経緯
今回はメールにてお問い合わせ頂きましたので、内容を簡潔にまとめてみました。
ご依頼者様から頂いたメール
ネットでカビが生えている事を承知の上で購入したのですが、実際に手に取ってみると、やはり気持ち悪いので、綺麗にしてもらいたくてメール致しました。レンズは、Nikon Nikkor-S Auto 50mm F1.4という機種になります。ネットで検索すると、カビは除去できてもその跡が残るという様な記事がありますが、カビが除去できれば、痕跡があっても構わないと思っております。何卒宜しくお願い致します。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Nikon Nikkor-S Auto 50mm F1.4 |
シリアルNO | 608013 |
付属品 | 前後キャップ、フィルター |
課題(所有者さん見解) | カビの除去 |
ご希望予算 | 15,000円くらい |
整備報告
レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度はかなり復元しています。お電話にてもお伝え致しましたが、付着していた点カビ・菌糸状カビが腐食カビで、除去後の無数の腐食痕が随所に残ります。この腐食痕は実写には影響ありませんのでご安心下さい。
除去前カビの写真
又、フォーカス調整機構螺旋状部洗浄処置施しましたが、駆動域にあまり大きな変化は見られません。過去の使用・保管環境の何だかの影響で螺旋状部に相当大きなダメージがあります。この復元は修理の範疇では補えませんのでご了承下さい。まだまだ撮影の友として活躍してくれると思いますので、大切にご所有下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 15,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 群馬県(一律)=930円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 15,930円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔