Nippon Kogaku Nikkor-HC 5cm F2 修理記録

戦前の時代、日本光学工業は軍需産業として、生産の主力として、軍需品の測距儀であり、潜望鏡や双眼望遠鏡を主に製造していた。測距儀は簡単に言ってしまえば、単体で三角測量を行なう機械の事で、対物までの距離を測る為に作られました。実際に戦艦大和と武蔵では全長15mという想像を超えた大きさの測距儀が採用されていて艦橋のテッペン付近に載せられていました。1945年、第二次世界大戦終結によって日本光学工業（現株式会社ニコン）は、この様にそれまで携わってきた軍需産業から民需産業へ方向転換を図ることになります。そして、次々にライカ用交換レンズを開発していく事になるのですが、Nippon Kogaku Nikkor-HC 5cm F2というレンズは当時に製造された機種の一種になります。勿論写真用レンズだけではなくて、双眼鏡やメガネレンズも民需産業としての商品群として製造される事になりました。このレンズ以外の仲間としては、ライカマウント用5cm F3.5（1945年）、13.5cm F4（1947年）、8.5cm F2（1948年）、3.5cm F3.5（1948年）、5cm F1.5（1949年）といった5つの機種が製造されていて、この5cm F2タイプは1946年に世にデビューする事になりました。この様なレンズ誕生の歴史を振り返ると、70年以上も昔に製造されたレンズが今でも愛好家の方に使われている事は実に感慨深いものがあります。引用元＝Nikon公式サイトには、戦後の復興を支えたレンズと謳われています。

引用元＝Nikon公式サイト

レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

Nippon Kogaku Nikkor-HC 5cm F2という昔のレンズを持っていますが、中を覗くと真っ白で、このままだと使えそうにありません。田舎の押し入れから出てきたものですが、綺麗になる様であればこれからも使っていこうと思っております。他の不具合等は今のところ不明ですので、綺麗にしてもらうついでに何か問題がありましたら整備お願い致します。修理の相場が解りませんのでお任せします。

機種名	Nippon Kogaku Nikkor-HC 5cm F2
シリアルNO	653843
付属品	前後キャップ、フィルター
課題（所有者さん見解）	中を覗くと真っ白で、このままだと使えそうにありません。

修理報告

付着していたカビは主に点カビと雲状カビでした。鏡胴内部を覗いた際に白濁して見えたのはこの付着物が原因です。全て除去できておりますので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。除去後の腐蝕痕が若干残りますがこの点ご了承お願い致します。駆動系、外観共に状態の良い個体です。今まで同様大切にご所有下さい。整備工程にていくつかの処置前のレンズ鏡胴内部硝子表面付着物写真と鏡胴内部写真をUPしておきますので併せてご参照下さい。まだまだ現役のレンズとして使ってもらえる状態ですので、未試用期間が長期化しない様に留意して末永くご所有下さい。