レンズ鏡胴内部に組み込まれた硝子玉外周にブツブツの付着物がある様に見えたり、黒い何かが付着している様に見える症状の個体があります。その症状は、一般的にはカビの様な付着部と感じる方も沢山いらっしゃいます。レンズ内部に発生する付着物には幾つか種類があります。カビ、埃、コバ剥がれの破片、昆虫の死骸等です。
人様の大切なレンズを、日々修理していての見解になりますが、一番多い症状が、カビ・埃の付着です。レンズは撮影の為の大切な道具ですから、やはり定期的に整備しないと、いい状態を保つ事はできません。昆虫の死骸は、夜間に何だかの撮影をするシーンでレンズ内に小さな虫が入ってしまう様です。今回解説したいのは、コバ剥がれという現象です。
この画像は、今回修理依頼のレンズの現象になりますが、これは付着物ではありません。製造された時は、真っ黒だったのですが、経年変化でこんな具合に劣化してしまう個体があります。このコバという言葉は、レンズの端っこ(端面)のことを表していて、他で例えると、眼鏡のレンズの端っこの厚みのあるすりガラス状になっている断面部分のことを示します。
カメラ用のレンズではメガネのようにそのまますりガラス状態というわけにはいかず、光が変な反射をおこさないように、黒色の塗料が塗ってあります。実は、その塗料というのが、昔は墨=粘度の濃い和墨を塗っていましたが、工場によっては、現在でも使われているそうです。塗料としては、和墨だけではなく、専用の工業製品が開発され、光学用特殊塗料や硬化剤液タイプ、水溶性の墨塗り材が使用されています。
この症状のレンズを修理する場合は、厳密な精度を求めないのであれば、今でも、すずりと墨と筆があれば復元できます。補足ですが、何で和墨なのか?というと、墨の安定性にあります。考古学の世界の木簡の墨文字もそうですし、古文書等の墨で書かれたものは何年経過してもその黒さを維持しています。変化の少ない素材・・・という利用理由があります。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
Contaxのレンズなのですが、レンズの縁にカビ状の汚れがあります。今のところ、撮影に支障を感じた事はないのですが、前から気になっていました。先般、Planarを綺麗にしてもらったので、いい機会なのでこちらも綺麗にしてもらおうと思いました。見て頂き、他に何か整備しておいた方がいい個所ありましたら、併せてお願い致します。納期は急ぎません。できれば、2万円以下でお願い致します。
機種名 | Carl Zeiss Distagon T 18mm F4 |
シリアルNO | 8136362 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | 前玉群の奥ふちにカビ状の汚れがあります。 |
修理報告
お電話にてもお話致しましたが、ご指摘のカビ状の汚れに目に映っていた症状は、中玉レンズユニットのコバ剥がれ症状です。再度塗り直しましたが、厳密な厚みの精度は不確かです。鏡胴内部全てのレンズ表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。付着していた点カビが腐蝕カビで、除去後の腐蝕痕が残ります。又、後玉表面ほぼ中央部に少し大きめの傷があります。この様な、この固体本来の元々あった症状も併せてご了承お願い致します。駆動系、外観共に大変状態の良い個体です。今まで同様大切にご所有下さい。お願い致します。又、今回の整備工程にて撮影した光学系付着物及びレンズ鏡胴内部の写真もご参照下さい。
参考写真
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ着払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 18,000円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔