お問い合わせ頂きました内容が、少し複雑なので、写真を併用してお答えさせて頂きます。今回のお問い合わせ内容は、ご自身で所有するレンズを、ご自身で分解し、必要な処置を施した後、再組立が出来なくなってしまった・・・という内容になります。課題解決の為の情報源として、少しでもお役にたてば幸いでございます。
頂いたお問い合わせメール
件名=スーパー・セミ・イコンタのレンズがはまらない
ヤフオクで落札したものですが。前レンズの内側に曇があるので、反時計周りにペンチで回して外しました。綺麗に掃除して、いざはめようとしてもネジが合いません。どうしてなんでしょうか?何か手順がちがうのか、お伺いいたします。場合によっては修理に出さないといけないでしょうか。ご判断お願いいたします。よろしくお願い申し上げます。レンズ番号ですと1935年頃の製造です。
現在はイコンタのレンズを元に戻したくて、藁おも掴みたい気持ちです。どうぞご相談させてください。大変勝手ですが、現状の写真を添付いたしましたので、何でも結構ですからアドバイス頂ければありがたいと存じます。どうかご覧頂き、ご指導を頂けますよう、よろしくお願いいたします。
お問い合わせありがとうございます。
ご自身で何だかの処置を施した後の再組立等の不具合に関しましてはメールやお電話のお問い合わせ内容だけですとその症状がこちらでは正確に把握できません。なるべくお金を出費しないで課題を解決したいとお感じになっておられると思いますので、Zoom等のアプリを活用して、リモートにて状態の詳細を聞き取り、課題解決の為の相互通信を行なうケースもございます。
この様な診断により、お問い合わせ頂きました機種の問題が解決する場合もございます。尚、遠隔による診断は事前予約制ですので予めお互いのご都合の良い日時を打ち合わせする必要がございます。この点ご了承お願い申し上げます。宜しければご検討下さい。
リモート相談会に関しましては樫村様のご都合の良い15分程度の日時を教えて頂けますと幸いでございます。
・2021年5月10日(月)11:00~16:00
・2021年5月11日(火)10:00~16:00
・2021年5月13日(木)10:00~16:00
・2021年5月15日(土)10:00~16:00
・2021年5月16日(日)10:00~16:00
上記日程の中で、樫村様のご都合の良い日時ございましたら、お選び頂いた上で、その旨教えて頂けますと幸いでございます。お忙しいとは思いますが宜しくお願い申し上げます。
ツァイス・イコン スーパーセミイコンタという機種に関しましては、知識と修理経験がそんなに豊富ではない為、製造された年代によりどの様な機種が存在するのかが把握できておりません。Mamiya RB67シリーズの様に、フォーカス調整機構が蛇腹の様に、カメラ本体側にある構造であれば、そもそもレンズ側にはフォーカス調整機構が組み込まれていない事になります。対物側レンズを取り外してしまったという該当部位が、ユニットレンズ単体の事なのか?それとも、駆動部位を指すのか?が改題解決の為には、情報として必要になります。
メールで添付して頂いた写真×4枚
見解
取り外した部位が単なるレンズユニットであれば、再組み立てはそんなに難しくないものと推測します。関連螺旋状部が一般的な溝の構造をしているので、再組立の際も容易にねじ込む事ができる筈です。一方、該当部位が、ユニットレンズ単体ではなくて、フォーカス調整機構の駆動系全体だとすると、再組立時に少し苦労するケースがあります。フォーカス調整機構の螺旋状部形状は、一般的なネジ山の構造と比較すると、いくつかの点で大きな違いがあります。
Carl Zeiss Distagon 35mm F1.4という機種で解説します。
1、螺旋状部溝形状
一般的なネジ山形状は、一筆書きといって、1本の連続した線の形をしています。それに反して、レンズのフォーカス調整機構の螺旋状部は、何本もの溝がそれぞれ独立した形で彫られています。Aという入口から始まった独立した溝は、直線的に進み、Aという出口に向かいます。同じ様に、Bという入口から始まった独立した溝は、直線的に進み、Bという出口に向かいます。
同じ様に、Zという入口から始まった独立した溝は、直線的に進み、Zという出口に向かいます。何時本もの溝が刻まれていて、凹凸の組み合わせはたったの1か所しかありません。なので、この部位を二つに分解する際は、完全に分離させてしまうと、再組立時、ややこしい事になります。
2、材質の違い
一般的な木ネジは、素材が鉄かステンレスの場合が多いです。一方、フォーカス調整機構の螺旋状部は、凹=真鍮、 凸=アルミ素材でできている機種が多いです。上記写真の様などちら共に金属としては柔らかい素材でできています。なので、あまり無理な力で強引に再組立しようとすると、簡単に溝の形状が変化(つぶれて)しまいます。
1、で解説した様に、凹凸のAという入口同士の位相を見つけて、それ以外の組み合わせ個所では決して回転させない事がポイントになります。この位相関係を焦らないで、じっくり見つけるのに、かなり時間がかかるケースが多いですが、構造の理解ができていれば、焦る必要はなくなります。
3、溝底部の形状の違い
一般的な木ネジの底部は、殆どの場合が60度の角度を持った谷型形状になっています。一方、フォーカス調整機構の螺旋状部は、凹凸共に底部形状が四角形の角ばった形状をしています。なので、一方、フォーカス調整機構の螺旋状部の二つの凹凸部位を完全に分解してしまうと、再組立の際に難しく感じられる要因にもなります。間違った入口同士の凹凸で、無理に回してしまうと、この角ばった形状が変形してしまい、二度と再組立ができなくなってしまう事にもなりかねませんので、注意が必要です。この点も充分に理解して下さい。
4、ネジの回転方向の違い
一般的な木ネジは、時計回りで締め付けが強まり、反時計回りで、緩むピッチ構造になっていますが、フォーカス調整機構の螺旋状部は、その反対で、時計回りで緩み、反時計回りで締め付けが強まるという、真逆な構造になっている機種が殆どです。なので、レンズを時計回りに回していると、この螺旋状部が外れてしまうという予想外の状態になって、慌ててお問い合わせ頂くケースも散見されますので、こういう構造を理解しておくと、困った事になるのを回避できると思いますので、参考にして下さい。
まとめ
一方、フォーカス調整機構の螺旋状部に関する構造上の特徴を解説してきましたが、この様な事柄に留意して頂き、少し慎重に、バラバラになっている二つの部位の凹凸関係を、お互いの部位を少しづつづらして、強い力で加圧する事無く、ばらす前の位相関係位置を地道に見つけていくしか方法はありませんので、焦らずにじっくり取り組んで下さい。尚、この解説は、取り外した部位があくまでもユニットレンズ単体ではなくて、フォーカス調整機構の駆動系全体だという事を前提として解説したものであることをご了承下さい。
電話にての受付
今回解説しましたお返事内容に関しまして、もっと解説の必要性を感じられたり、その他ご質問等ございましたら、ご都合のよい日時を予め予約して頂きまして、お気軽にお電話下さい。
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