A.Schacht社は、どちらかというと、戦後に登場したドイツの新興光学機器メーカーでした。日本における1960年代のドイツのブランドイメージといえば、Carl Zeiss、Leitz、Schneider等の銘柄レンズを連想する人が多いと思います。Meyer、Isco、Ludwig、Steinheil等の、代表御三家以外のブランドもドイツには存在していました。そんな競合メーカーの中で、A.Schacht社は中堅的な位置に認識されていたのではないでしょうか。
この光学機器メーカーの特徴として、1950年代から1960年代にかけて、主にスチル撮影用レンズ、引き伸ばし用レンズ、プロジェクター用レンズ、マクロ・エクステンションチューブなどを生産していた様です。カメラは生産していませんでしたが、主力商品はやはりスチル撮影用レンズで、 Schneider社からレンズの生産を委託されたり、 Leitz社からLeica Lマウントレンズの生産の正式認可を受けたりと、同業他社からも高く評価されていたメーカーの様です。今回お預かり致しました機種は、こんな背景のもと世にデビューしたレンズになります。
構造的にみたこういうレンズの特徴
単焦点望遠レンズで、レンズ鏡胴が細長いタイプのレンズがいくつも存在します。こういうモデルにはある共通点があります。単純に、レンズ鏡胴が大きく2つに分かれている構造を持ちます。
写真向かって左側は単なる筒です。フォーカス調整機構のみが組み込まれています。一方写真向かって右側の部位は、絞り羽ユニット機構と、光学系硝子部位が組み込まれています。なので、フォカス調整機構に何だかの問題があれば、左側部位を整備し、絞り羽ユニット機構に問題がある個体と、硝子部位の光学的な付着物除去の場合は、右側部位の整備をする事になります。今回のご依頼内容は、主にカビの除去でしたので、主に向かって右側部位の処置を施しました。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたメール
いつもお世話になります。今回は1本お願い致します。A.Schacht Ulm Travegar 100mm F3.3 Rというレンズを、ebayで購入して今届いたところです。レンズが曇っていてフレアー気味です。検査して頂いて、他に気になる個所がございましたら、その処置もお願いします。いつもの様に急ぎません。宜しくお願い申し上げます。
今回お預かり致しました機種
機種名 | A.Schacht Ulm Travegar 100mm F3.3 R |
シリアルNO | 317935 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | レンズが曇っていてフレアー気味 |
ご希望予算 | 30,000円(税込)前後 |
整備報告
全てのレンズ表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。只、付着していた点カビが腐食カビで、除去後の腐食痕が随所に残ります。又、レンズ表面にいくつも傷があります。レンズが綺麗に復元した分、この様な症状が目立ちます。お電話にてもお話し致しましたが、今回のこちらでの処置が、フレアー気味との実写に際しまして、どこまで改善できているかに関しましては、こちらでは確認できません。この様な諸々の点ご了承下さい。絞り羽ユニット機構問題ありません。フォーカス調整機構、ややそのトルク感の重さを感じますが、規格値以内と判断します。状態の良いレンズです。今後も大切にご所有下さい。
光学系付着物・除去前写真一例
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 28,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 東京都(一律)=930円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 28,930円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔