この機種は、1950年(昭和25年)頃発売されたと話に聞いた事がありますが、もう70年前のオールドレンズです。当協会の修理記録台帳を紐解きますと、この機種よりは、Leica Summaron 35mm F3.5という、構造が良く似た機種の方がご依頼件数は多いです。どちらも構造的には似ていますが、Canon Serenar 50mm F3.5の方は、絞り羽調整ダイヤルがフリー型で、Leica Summaron 35mm F3.5の方は、該当機構がクリック型になっています。
どちらの機種にしても、修理を施す立場の見解は、レンズ鏡胴内部に組み込まれている硝子部位がとても小さいので、その取扱いが難しい点が挙げられます。整備手順は、対物側及びリヤマウント側両方からレンズ鏡胴内部にアクセスします。
修理依頼内容によりますが、今回はレンズの白濁という課題でしたので、検査したところ、該当硝子部位の位置が絞り羽ユニット機構のリヤよりに組み込まれてる事が解った為、リヤ側からのアクセス手順にて整備しました。
この方向から、レンズユニットを取り出すと、小さな硝子玉部位のユニットが取り外せます。上記写真は、このレンズユニットを取り外した状態の写真になります。
この硝子部位は3枚の硝子玉が組み込まれている、3枚1郡の塊になります。この機種は時々この部位が白濁していて、そのままの状態だと、実写にはかなり影響が出てしまうケースが多いです。今回お預かりした個体も同様の問題を抱えていました。
この写真の状態だと、おそらくまともな写真は撮れないと思います。この現象は、2枚の硝子玉の貼り合わせ面で起きているバルサム切れではないので、カビが死んで乾いた状態で固まってしまっているのが主な原因ですから、この部位を綺麗に洗浄する事で、白濁という問題は解消されました。勿論、他の硝子玉部位に付着していた埃・カビも同時に除去しますので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元します。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はお電話にて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
孫から写真を教えてくれと頼まれたので、久しぶりに写真道具を取り出してみたのですが、昔お気に入りだったレンズが真白くなっていてとても撮影できる状態ではない事に驚いています。このレンズは修理できるものなのでしょうか?沈胴式のCanon Serenar 50mm F3.5という相当に昔のレンズになります。オールドレンズの撮影の楽しみを教えてあげたいので、可能な様でしたら是非修理して下さい。すぐにでも送ります。
機種名 | Canon Serenar 50mm F3.5 |
シリアルNO | 10185 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | 白濁 |
修理報告
鏡胴内部全てのレンズ表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。カビの種類は主に点カビと雲状カビでした。ここまでカビの付着が激しいと、撮影の為の道具としての機能は相当に削がれていたと推測致します。レンズが綺麗に復元した分、レンズ表面の傷が目立ちます。又、付着していた点カビが腐食カビで、除去後の腐食痕が残ります。この様な点、ご了承お願い致します。
お電話にてもお伝え致しましたが、レンズの様な光学機器は未使用期間が長期化するのと並行して、随所に支障をきたします。今後、その様な環境下で保管していくと、似た様なカビの症状が再発してしまいますので、時々レンズを手に取って、鏡胴内部に空気の流れを人工的にでも作ってあげて下さい。再発防止に有効です。
その他、参考写真
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ着払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 12,000円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔