特にレンズ外周が傷みやすい傾向の機種がある
機種によってレンズ鏡胴内部に組み込まれているガラス玉の材質はそれぞれ異なりますが、特にレンズ外周が傷みやすい傾向にある機種があります。レンズ中央部は綺麗に復元するのに。外周がリング上に、カビを除去した後の腐蝕痕が残ってしまいます。科学的な原因はまだハッキリしていませんが、今回お預かりした機種もこの様な特徴を持っています。付着物除去処置を施した後は、レンズ全体が綺麗に復元するので、逆にレンズが綺麗になった分、この様な症状が目立つ結果になってしまいます。
頂いたメール
レンズを覗くと少し曇っている様です。カビ等があるのかはわかりません。これからも使っていきたいので、一度修理して下さい。レンズはCarl Zeiss Distagon 35mm F3.5です。お願い致します。
30,000円位を希望します。
お返事メール
お問い合わせありがとうございます。一般社団法人 日本レンズ協会 代表理事 田斉と申します。
白濁の原因が光学系付着物でしたら、除去処置にて、レンズがクリアーに復元するケースはありますが、この機種は、レンズ外周が傷みやすい傾向を持っています。
この点ご了承頂きまして、もし当協会で宜しければ、ご検討下さい。
頂いたメール
お願いしたいので、送付しても宜しいでしょうか・
お返事メール
○○様のご都合に合わせて、こちらまでご送付下さい。
〒270-2267
千葉県松戸市牧の原1-24Lm101
(一社)日本レンズ協会宛にてお願い致します。
付属品 | 前後キャップ、ソフトケース |
シリアルNO | 8788769 |
納期 | 7日間 |
整備費用 | 28,000円(税込) |
解説
検査致しました。鏡胴内部全てのレンズ表面に付着していた埃・カビ除去処置施しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。主に2枚のレンズ外周に雲状カビがサークル状に付着していましたが、カビそのものは除去できていますが、除去後の腐蝕痕がレンズ外周に線状サークル状態として残ってしまいます。
レンズが綺麗になった分、この症状が目立ちますが、この点ご了承お願い致します。こちらの個体も、外観・駆動系共に状態の良い個体です。今まで同様大切にご所有下さい。尚、お電話にても解説しましたが、今回の様に未試用期間が長期化しますと、再びカビ等付着物が発生してしまいますので、カメラ本体に装填して撮影する時間が取れない様な期間は、レンズ単体を手に取って時々いじってあげて下さい。ご協力お願い致します。
作業工程参考写真
処置後の所感
今回整備をご依頼された写真愛好家の方は、ご自宅にレンズとカメラ専用の保湿庫をお持ちでした。湿度を一定に保つ設備ですから、それなりに高価で、光学機器を保管するには理想的な環境と言えます。
でも、この様な状態になってしまったので、例えこの様な設備の中で保管していても、万能ではないという事になります。ちなみに当協会は研究用のレンズが常時100本以上あるので、この様な保管庫では保管していません。
私自身が暑がりという事もありますが、作業場全体を一年中冷やしています。梅雨時期から夏場は勿論クーラー仕様で、その他の季節も殆どドライスイッチで過ごしています。でも、もっと大切なのはレンズを放置しない・・・という事です。
同じことを何度もいっていますが、やはり未試用期間が長期化すると、光学機器は随所に支障をきたします。極端な言い方をすれば、保湿庫はなくても、しょっちゅう使っていれば問題はありません。もしかしたら、人間と一緒なのかもしれません。