Flektogonは旧東ドイツの人民公社VEB Carl Zeiss Jenaが一眼レフカメラ用に開発した広角レトロフォーカス型レンズのブランドです。その第一弾は1952年に焦点距離35mmで登場し、黎明期のレトロフォーカス型レンズの中においてコマ収差を有効に補正できる唯一無二の存在として注目されました。続く1959年には焦点距離を25mmまで短縮させたフレクトゴン25mm F4を開発し、翌1960年のLeipzig Spring Fairで発表したという経緯を持ちます。さらに西側の競合他社が送り出したAngenieux R61 24mm F3.5やWestrogon 24mm F4などの機種を意識して、翌1961年10月には焦点距離を20mmまで短縮させたこの新型モデルを発表しています。このCarl Zeiss Jena Flektogon 20mm F4というレンズが実際に市場に登場したのは発表から2年後の1963年春に開催されたLeipzig Spring Fairからで、実際に市場に出回り始めたのは同年夏からと言われています。製造年により、絞り羽調整切替レバー等レンズ鏡胴外観に微妙な変化はありますが、修理の分野での見解はどのタイプも構造的には基本的な違いはなく全て共通の構造で構成されています。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
カールツァイス イエナ フレクトゴン 20㎜が不具合になりました。M42-EOSアダプターを介しキヤノンデジタル一眼で使っていましたが、絞りリングを回しても、絞られなくなってしまいました。修理可能でしょうか?修理可能なのであればお値段はいかほどでしょうか?お教えください。日本レンズ協会 代表理事 田斉様。先日は大変ご丁寧なご指導頂戴致しまして誠に有難う御座いました。
さて色々考えまして、世にあるレンズを一台でも健全な姿にしておくべきという事で、修理に出したいと思います。不具合の内容については先日やり取りさせていただいた通りです。下記を再参照ください。また予算については15,000円から25,000円程度ということにしたいと思います。
機種名 | Carl Zeiss Jena Flektogon 20mm F4 |
シリアルNO | 9109681 |
付属品 | 前後キャップ、専用ケース |
課題(所有者さん見解) | 絞りリングを回しても、絞られなくなってしまいました。 |
Carl Zeiss Jena Flektogon 20mm F4の構造上の問題点
この機種に限った問題点ではないのですが、そもそもレンズ鏡胴内部には二つの駆動系部位が組み込まれています。フォーカス調整機構と絞り羽ユニット機構です。殆どの機種は、絞り羽調整ダイヤルで明るさ=露出をコントロールしますが、Carl Zeiss Jena Flektogon 20mm F4というレンズは、この調整ダイヤルの他に、カメラ接点ボタンと【Auto】⇔【Man】切り替えレバーという動作伝達部位を持っています。絞り羽調整ダイヤルだけでも固着しやすい構造に加え、この二つの動作伝達部位の影響で構造がより複雑になってしまい、固着の原因がその分増えてしまう結果となってしまいます。製造元さんが良かれと考えたこの構造は、固着という現象を考えると疑問としか言いようがないと個人的には感じています。いずれに致しましても、フォーカス調整機構螺旋状部のグリスがこれら関連部位に付着してしまうと、殆どの場合で絞り羽が解放のまま固着してしまいます。
修理報告
レンズ鏡胴内部フォーカス調整機構螺旋状部から流れ落ちてきた油分を含む汚れが付着している部位洗浄処置施しました。絞り羽調整ダイヤル及び切替レバー及びカメラ接点ボタンでの動作は復元しています。文章及び写真ですとその復元状態がお伝え難いので、解説補足動画もご参照下さい。お電話にてもお伝え致しましたが、レンズ鏡胴内部に組み込まれている一部金属部位が相当に錆びています。この錆も修理の範疇で落としましたが、該当部位が痩せてしまっていて本来の形状を保っていません。この部位が原因で、スプリングの力の方が力関係が強く、どうしても解放状態に引っ張られてしまう傾向があります。もしも可能でしたら、レンズ保管時はできましたら絞られた状態で保管して頂けますと、より復元した状態が長続きするものと診断致します。この事を留意して頂き、未試用期間が長期化しなければ復元状態が維持できるものと診断しますが、一度この様な傾向になってしまった個体は再び同じ様な症状になってしまう危惧を孕んでおります事、ご了承お願い申し上げます。その際はご連絡頂けましたら、ご自宅でできる簡易的な処置方法お伝えしますので、その旨お問い合わせ下さい。今回の整備でまだまだ撮影の道具として充分に活躍できるレンズですので、今まで同様大切にご所有下さい。整備工程にていくつかの写真と、復元した絞り羽ユニット機構の動作確認解説補足動画UPしておきますので併せてご参照下さい。
参考写真
整備後復元状態解説補足動画
こちらの処置(整備)後は絞り羽フイルム本体に動きが伝達されて問題なく駆動していますが、この様な症状になる個体は、再度似た様な症状になってしまう危惧を孕んでいます。今後その様な状態になてしまった場合は、こちらにお問い合わせ下さい。ご自宅でできる簡易的な処置方法をお伝えします。
個人的な趣味で、作業場で水の研究をしております。その環境下で飼育水槽から観賞水槽に水を送るポンプの音等が動画に録画されてしまいお聞き難い収録になっています事ここにお詫び申し上げます。お許し下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ着払い便 |
送り状NO | 別途メールにて記載 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 20,000円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔