Carl Zeiss Jena Sonnar 5cm F1.5 T 修理記録

Carl Zeiss Jena Sonnar 5cm F1.5 Tという機種は、Carl ZeissのContaxカメラ用レンズとして発売されました。旧Contaxマウントはフォーカス調整機構がカメラ側にある構造の為、このレンズには、駆動系としてフォーカス調整機構が組み込まれていません。

なので、一般的なデジカメとマウントアダプターの組み合わせで実写する際に、どの様な撮影技術が必要になるのか、個人的にはとても興味があるのですが、カメラマウントとレンズマウント形状規格に沿ったヘリコイド付きマウントアダプターを介す必要性がある事以外は、知識として持ち合わせていません。

私は、写真家ではないので、レンズとカメラの中間部位をどの様に選択するのかに関して、少し難しい印象を感じてしまいます。一方、解放F値調整ダイヤル目盛が11までしかないこの機種は、鏡胴内部に組み込まれている硝子玉にコーティング加工が施されていない戦前のタイプで、長い期間発売されていた製造時期によってスペックが異なる同機種の中でも、大変貴重な1本だと感じております。

いずれに致しましても、今回修理の範疇で光学系付着物処置は完璧に施せましたので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。只、付着していたカビの内、一部の点カビが腐蝕カビに成長していましたので、カビそのものは除去できましたが、除去後の腐蝕痕が随所に残ります。この点ご了承お願い申し上げます。

レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

メールにてのお問い合わせ段階では、中玉のカビの除去という内容でしたが、検査後のお電話のお話しによると、レンズ鏡胴内部に黒色の付着物があり、更にレンズ全体が白く曇っている症状とのご見解を頂きました。いずれに致しましても、この機種には合成レンズが組み込まれていないので、その原因の全ては光学系付着物と診断できますので、修理の範疇で付着物除去処置を施しました。

機種名	Carl Zeiss Jena Sonnar 5cm F1.5 T
シリアルNO	2520382
付属品	前後キャップ、ハードケース
課題（所有者さん見解）	中玉のカビ、黒い付着物、白濁

修理報告

レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての光学系部位に付着していた埃、カビ除去処置施しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元致しました。対物側から入射してきた光の総量を光束と呼んでいますが、処置前の数値が45くらいだったのですが、付着物を除去後は光束総量が95くらいまでに復元していますので、実写に際して、このレンズ本来の持ち味が発揮できるものと推測しております。

点カビ除去後の腐蝕痕に関してはご了承お願い致します。実写には影響しません。黒い付着物に関しましては、こちらの検査では確認できませんでした。お電話にてもお伝え致しましたが、鏡胴内部で黒色に目視される付着物は、昆虫の死骸とコバ剥がれの破片だけなのですが、このレンズにはこの様な付着物はありませんでした。

製造から80年近く経過している個体ですが、今までお預かりしてきた同機種と比べても、非常に状態の良いレンズです。未試用期間が長期化しない様にご留意頂きまして、今まで同様大切にご所有下さい。又、整備工程にて撮影した光学系除去処置前の硝子玉の状態写真、パソコンへの保存時にデータを紛失してしまいました事、ここにお詫び申し上げます。お許し下さい。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

ご決済に関しまして

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
（一社）日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

納品後、ご依頼者様からお礼のメールを頂きました

田斉さま。修理依頼をしましたHです。修理いただいたレンズを受領しました。澄んだレンズに驚きました。誠にありがとうございました。