CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4には、CONTAX Carl Zeiss Tessar T* 45mm F2.8と同様に生産時期・生産国の違いによる4タイプが存在します。AEJ(1975年発売)、MMJ(1985年発売)が日本製、AEGとMMGがドイツ製です。修理の分野からこの4種類を解説すると、その構造に大きな違いは見られません。
CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4の基本的なスペック
焦点距離 | 50mm |
最短撮影距離 | 0.45m |
開放F値 | F1.4 |
レンズ構成 | 6群7枚 |
絞り羽根枚数 | 6枚 |
フィルター径 | 55mm |
マウント形状 | Y/C(ヤシカコンタックス) |
標準レンズの帝王
年数の経過によるレンズ個体の状況の変化によって、シャープ感の低減やその他の写りの繊細さの低下が散見されるのも事実ですが、その点もレンズの個性として捉え、楽しむのもオールドレンズの魅力になります。懇意にしている写真家の方に聞くと、CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4の魅力は、標準レンズの帝王とも言われている性能の高さ、濃厚な発色と空気感を写し込む柔らかな感じと繊細なシャープ感が両立しているレンズという位置付けになります。当協会の修理ご依頼件数からも、この機種の人気の高さが窺えます。
Planarレンズ
Planarの一つであるCarl Zeiss Planar T* 50mm F1.4は、1896年に天才数学者パウル・ルドルフによって設計された最初のPlanarをベースに、1972年に当時の最新光学技術と光学レンズの進歩を取り入れて再設計され発売されました。標準レンズの帝王は、発売時のキャッチコピーとして使われたそうですが、その性能の高さから多くのファンを魅了し、その名を不動のものにしました。
Planarはレンズの種類が多く、Hasselblad用やContax用など、さまざまなマウントのレンズがあります。その中でも最も入手しやすいのが、Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4のマウントでもある、Yashica/Contaxマウントのレンズです。Planarのレンズを調べると出てくるY/Cは、Yashica/Contaxマウントを略したものになります。
Yashica/Contaxマウント
普段愛用のカメラの規格と合ったマウントアダプターで、気軽にオールドレンズでの撮影を楽しめるいい時代になりました。
CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4レンズ新規購入時の留意点
この機種を新たに入手しようとした場合、少し留意して欲しい点があります。それは、合成レンズ張り合わせ面の白濁と、レンズ鏡胴対物側稼働筒の固着になります。レンズ鏡胴内部を光源をかざして目視した際、明らかに白濁している個体の入手は避けた方が無難です。同時に、もしも実店舗での購入の場合は、レンズ鏡胴対物側稼働筒を反時計回りに回してみて、この部位が固着している個体は避けた方がいいです。
理由は、この部位が固着しているとカビ等付着物の除去等の必要な処置が施せない為です。又、合成レンズ張り合わせ面にてカナダバルサム自体が劣化している個体は、その白濁の処置ができない事にあります。AEJ、MMJ、AEG、MMG等全ての機種に合成レンズが組み込まれているわけではありませんが、はっきりと白濁している個体の入手は避けた方がいいです。
この様なこの機種の特徴を踏まえた上で、今回はご依頼者様の了解を得て整備させて頂きました。ネット上からのお買い物の場合は、そもそも出品者さんがレンズに関してあまり詳しくないケースも多いので、正確な状態の把握は難しいとは思いますがご参照下さい。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたメール
いつもお世話になります。前回同様、今回も購入から修理全般に至るまでアドバイスして頂けますと幸いでございます。Contax標準レンズの購入を検討しています。前々から欲しかった機種で、50mm F1.4です。ネット上でいくつか候補がありますので、その出品URLを添付しましたので、でき得る範囲で結構です。Zoomにてご指導お願いします。週末でしたら時間はいつでも大丈夫です。いつもの様に、購入したレンズは直接協会さん宛に届く様にしておきますので、修理の範疇で問題点を復元させて下さい。何卒宜しくお願い致します。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 |
シリアルNO | 7960280 |
付属品 | 前後キャップ、フイルター |
課題(所有者さん見解) | 全体的な検査 |
ご希望予算 | 15,000円 |
光学系レンズ整備報告
先ずは、届きましたレンズの状態ですが、懸念していた合成レンズ張り合わせ面にて、カナダバルサム自体の劣化による白濁症状は進行していませんでした。勿論、カビ等光学系付着物は確認されましたので、レンズ鏡胴内部に組み込まれている全てのガラス部位表面に付着していた付着物は除去処置施しました。
レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しております。カビ除去後の腐食痕も殆ど残らず、スカッと抜ける様な眩しい個体に復元しております。ご安心下さい。未使用期間が長期化しますと、カビの再発の可能性が高まります。納品後はなるべく頻繁に使用してあげて下さい。
駆動系レンズ整備報告
次に、駆動系に関する整備報告になりますが、フォーカス調整機構関連螺旋状部グリスが完全に抜け落ちてしまっていましたので、洗浄後、再グリスUP処置施しました。このトルク感は人により嗜好がまちまちなので、どこまでお好みの感覚になったのかに関しましては不安は残りますが、しっとりとした丁度いい感覚に仕上がったと感じています。
次に、絞り羽ユニット機構に関してですが、上記フォーカス調整機構螺旋状部グリスが抜け落ちて、絞り羽ユニット機構に、汚れを巻き込んで付着していましたので、その油分を含む汚れの除去処置施しました。絞り値から解放指標値まで、スムースに駆動しています。Zoomにてもお伝え致しましたが、保管時の向きにも留意して頂き、絞り羽が開放のまま固着してしまわない様、ご協力お願い致します。駆動系、外観共にとても状態の良いレンズです。今後も大切にご所有下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 15,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 神奈川県(一律)=930円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 15,930円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔