1896年に天才数学者パウル・ルドルフによって設計された、対称型のダブルガウスタイプレンズの初期Planarは、発売時、標準レンズの帝王というキャッチコピーで発売されました。当協会の修理依頼件数の数からも、今でも人気の機種であることは想像できます。Planarモデルはレンズの種類が多く、 Hasselblad用やContax用など、様々なマウントのレンズがあります。マウント形状を意味するY/CはYashica/Contaxマウントを略したものです。
戦前・戦後Carl Zeissの看板レンズといえば、TessarとSonnarでした。Planarの名が認知されたのはコーティング技術が発達し、フランジバックの長い一眼レフカメラが主流となってからの事です。Yashica Contax用が富岡光学の流れを汲む京セラオプテック製になりますが、Cosinaによって設計・製造・発売されているモデルも流通しています。マウント形状が豊富な点は、写真家の方にとってはありがたい機種になると思います。
修理の世界でこの機種を扱っていて感じる事は、レンズ鏡胴内部に組み込まれている合成レンズが白濁してしまっている個体が散見されるという事と、絞り羽が開放のまま固着してしまう傾向がある個体があるという現象です。どちらの症状も、製造・発売時には想定できなかった現象だと考えています。駆動系の課題は解決するケースはありますが、2枚のガラス部位の貼り合わせ面にて起きている天然樹脂素材流動性粘着物=カナダバルサム自体の劣化に関しては、修理の範疇での復元は難しいのが実情になります。
修理ご依頼に至るまでの経緯
今回はメールにてお問い合わせ頂きましたので、内容を簡潔にまとめてみました。
ご依頼者様から頂いたメール
初めまして。ネットでプラナー50mmというレンズを購入しました。カビの様な汚れも多く、絞り羽が全く動きません。自分で修理してみようと思ったのですが、何一つ部品を外すことすらできませんでした。この様な症状は修理できるものなのでしょうか?この様なレンズでしたので、相場よりはかなり安く購入できました。15,000円くらいで引き受けてもらえる様でしたら、お願いしたいと思っております。お返事お待ちしております。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 |
シリアルNO | 6876447 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | 絞り羽根とカビ |
ご希望予算 | 15,000円 |
修理報告
先ず光学系付着物に関しましては、レンズ鏡胴内部に組み込まれている全てのガラス部位表面に付着していた埃・カビ除去処置施しましたので、光学的なクリアー度は復元しております。付着していたカビの種類は主に点カビと菌糸状カビでした。レンズが綺麗に復元した分、元々あったガラス部位表面の擦れ傷が目立ちます。次に駆動系に関してですが、絞り羽ユニット機構は絞られた状態から開放まで全領域にてその動きは復元しております。
開放状態のまま固着してしまっていた主な原因は、フォーカス調整機構螺旋状部グリスの付着なのですが、こういう症状になってしまう個体は、整備後に再度同じような症状になってしまう危惧を孕んでいます。お電話にてもお伝え致しましたが、今後似たような症状になってしまった場合は、別途整備手順を動画にてお伝えしましたので、Videoの解説通りに行ってみて下さい。あくまでもご自宅でできる簡易的な方法になりますが、再度お金をかけなくても済むと思います。
この写真の様な状態にアクセス後、お伝えいたしました治具・溶剤にて処置して下さい。もしその工程で分からなくなってしまった場合は、ご連絡下さい。Zoomアプリを使ってわかりやすく指導させて頂きます。今回の処置にて、かなり状態の良い個体に蘇りました。今後も大切にご所有下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 15,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 福岡県(一律)=1,300円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 16,300円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔