今回お預かりしたレンズはErnst Leitz社(現Leica社)のSummicron 5cm F2の沈胴式モデルになります。過去に同機種で沈胴式タイプでない個体(固定鏡胴モデル)を修理した経験がある様に記憶しています。このシリーズは製造年台によって、硝子素材に放射性物質トリウムを使っているものがあり、その経年劣化で黄色く変色している個体もありますが、シリアルナンバーの棲み分けに関してはそこまで詳しくありません。今回お預かりした個体は硝子玉の黄変は確認できないので、推測の域を出ませんが100万台以前の機種が酸化トリウムを使用していたのではないかと思っています。懇意にしている写真家の方に聞いてみると、蛍光灯に照らされた薄暗い室内の雰囲気や黄色い街灯の発色の様なソフトな描写は現代レンズからは感じられない何ともいえない品があるそうです。1954年(昭和29年)頃製造されたレンズの性能は確実に現代でもその魅力を再現できる名機の一種だそうです。修理の視点では、この機種は少し独特な構造でできていますが、光学系付着物も絞り羽ユニット機構等の駆動系部位も、付着した汚れやカビを除去すれば、スムースな動きも綺麗な硝子玉を復元しやすい構造になっています。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
駆動系及び光学系検査をお願いします。写真倶楽部の仲間からこのレンズを紹介されてネットで購入したのですが、見た目にもレンズが白濁しています。何枚か実写してみましたが、やはり白く霞がかかった様な絵になってしまいます。又、フォーカス調整ダイヤルと絞り羽調整ダイヤル両方共にトルクが重くて扱い難いです。オーバーホール扱いになるとは思いますが、折角手にいれたレンズですので今後も大切に使っていきたいです。
機種名
機種名 | Ernst Leitz GmbH Wetzlar Summicron 5cm F2 |
シリアルNO | 1194035 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | 駆動系及び光学系検査 |
修理報告
駆動系に関しましては、この機種は主に3か所の異なった部位があります。全ての個所経年の汚れ除去しそれぞれの動きは復元しています。お電話にてもお伝え致しましたが、ご自宅で今後整備する場合、この機種は扱い慣れていないと少し難しく感じる個体の一種ですので、簡易的な整備方法とはいえ、お伝えしました解説動画3篇に分けて別途ページにUP致しましたのでご参照頂ければ幸いです。光学系付着物に関しましては、鏡胴内部全てのレンズ表面の埃・カビ除去しました。カビの種類は主に雲状カビでした。カビ除去後の腐蝕痕も少なく、復元状態は上々と判断致します。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。レンズが綺麗に復元した分、前後玉表面の無数の擦傷が目立ちますがこの点ご了承お願い致します。硝子素材はそんなに柔らかくないので、あまり神経質になる必要はありませんが、硝子玉のクリーニングの際は専用ペーパー若しくは専用布を使って下さい。外観共に状態の良い個体です。今まで同様大切にご所有下さい。整備工程にていくつかの光学的な付着物写真とレンズ鏡胴内部写真をUPしておきますので併せてご参照下さい。
参考写真
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ着払い便 |
送り状NO | 別途メールにて記載 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 25,000円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔