一般的に、Leitz・Leicaのレンズは高価な機種が多く、興味はあっても、中々入手しずらかったり、逆に価格に関係なくこのメーカーの機種しか所有していない写真家の方も沢山いらっしゃる、ある意味、光学機器の一種独特なフアン層を確立しているレンズメーカーだと思います。今回ご依頼の機種は、そんなメーカーさんの、モデルの中では比較的入手しやすい価格帯で、懇意にしている写真家の方に聞くと、価格に関係なく、その映りはとても素晴らしい機種の様です。修理ご依頼の他に、Leitz・Leicaの銘柄表記に関する質問も頂きましたので、このメーカーさんのレンズ銘柄の由来に関しても調べてみました。
レンズ銘柄の由来=二つの単語の合成語
以下、当協会にてお預かりした経験のある機種限定になりますが、簡単な表を作ってみました。由来を知りながら、レンズを所有するのも趣(おもむき)があると思います。
銘柄 | 読み方 | 由来(解説内容が正しいかどうかはあまり自信がありません。) |
Noctilux | ノクティルックス | Noct=夜を意味します。luxは照度の単位であるルクスから来ていて 簡単に理解すると光を意味するのでしょう。 合わせるとNoctiluxは夜の光を意味するレンズということになるのだと思います。 |
Summilux | ズミルックス | Summはラテン語のSumma=ズンマからきている様で、訳すと最高のという意味の様です。 Summiluxは最高の光という直訳になり、最高の明るさを意味することになるのかなと思います。 初めてSummiluxが発表された時、当時の実際に最も明るいレンズでした。 |
Summicron | ズミクロン | 最高を意味するSumm。cronもラテン語のMicron=ミクロンで、小さいという意味合いになります。 1mmの1/10,000であるミクロン単位まで写すという意味でSummicronと 命名したのではないでしょうか。 |
Elmar | エルマー | LeitzにはもともとElmax=エルマックスというレンズ機種がありました。 このElmaxはErnst Leitz=エルンスト・ライツとレンズ設計士のMax Berek=マックス・ベレクの 頭文字の合成で、Elmarはこれの派生ということになりまるのだと思います。 |
Hector | ヘクトール | レンズ設計士=Max Berekの愛犬の名前からとったそうです。由来はギリシャ神話のトロイ戦争の 勇者の名だそうです。 |
Thambar | タンバール | ギリシャ語のThambos=タンボスで、驚きを意味しています。驚くような幻想的な描写をするThambar という意味合いになるのだと解釈しています。 |
Super Angulon | スーパー・アンギュロン | Angulonはラテン語のAngulus=角から来ていて、スーパーな角、つまり特別な画角 という意味になっているのだと思います。 |
Telyt | テリート | Teleとは望遠レンズにおいて、良く使われる遠距離を意味する接頭語になります。 elyt=Elite、つまり選ばれたものの意味で、Tele+Eliteで高性能な望遠レンズという意味なのでしょう。 |
Elcan | エルカン | Ernst Leitz Canadaの頭文字をとってElcanとした単純な命名なのだと思います。 |
APO | アポクロマート | APOとはアポクロマティック=Apochromaticの意味で、色収差を補正したレンズの事を意味します。 |
Hologon | ホロゴン | ギリシャ語のホロス=全てと、ゴニア=角度を合わせてHologonとしたという説があるそうです。 超広角レンズに使われているので、すべてを写すレンズという意味なのだと思います。 |
ASPH | アスフェリカル | 非球面レンズの事。歪曲収差の補正や、レンズの小型化と軽量化の為に 非球面=アスフェリカル=Asphericalの形状をほどこしたレンズの事を意味します。 |
なので、今回お預かり致しました、Leitz Hektor 13.5cm F4.5というレンズは、Hector= ヘクトールと読み、レンズ設計士=Max Berekの愛犬の名前からとったという事になり、その意味の由来はギリシャ神話のトロイ戦争の勇者の名前だったという事になりそうです。尚、このレンズ銘柄の由来は、二つの単語の合成語として解説しましたが、Leitz・Leicaの銘柄表記に関しましては、レンズの明るさ=F値による分類もあります。この分類に関しましては、Ernst Leitz GmbH W Summarit 5cm F1.5というレンズの修理記録レポートにて、少し詳しく解説していますので、そこらを参照して下さい。
私は、写真家でも収集家でもないので、この様な知識に関して、元々あまり興味はないのですが、ご依頼者様から、様々な質問を頂く機会がありますので、そういう機会に関連知識を学習しております。この様な機会を頂きまして、ありがとうございます。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ライカのレンズを始めて購入してみました。10,000円くらいで整備してもらえないでしょうか?前々からライカのレンズが欲しかったのですが、どれも高くて買えませんでした。ネットで、Leitz Hektor 13.5cm F4.5というレンズを18,000円で購入しました。カビだらけで、使えるのかどうか不安です。綺麗になるのでしたら、是非お願い致します。勝手いってスイマセンがご検討お願い致します。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Leitz Hektor 13.5cm F4.5 |
シリアルNO | 575495 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | レンズを綺麗にして欲しいです。 |
整備希望価格 | 10,000円くらい |
ご宅で整備できる機種
この機種の様な、レンズ鏡胴がとても細長いレンズは、特別な修理治具を使わなくても、比較的簡単にご自宅で整備できると思います。写真で簡単に解説させて頂きますので、日常の硝子部位の洗浄の際に参考にして下さい。
大きく二つの部位で構成されています
この機種は、二つの部分に分解する事が出来ます。一つは単なる金属の筒で、機能としては、フォーカス調整機構のみが組み込まれています。筒の中身は空洞です。もう一つの部分との接合部分を反時計方向に回すと、簡単に分離します。
この部位は、フォーカス調整ダイヤルのトルク感を調整する必要がある個体の際は、関連螺旋状部を洗浄して、再グリスUP処置を施すケースがありますが、カビ等の光学系付着物除去の際は、全く関係しない部位になります。
この部位に全ての硝子玉が組み込まれています。駆動系として、絞り羽ユニット機構も組み込まれていますが、絞り羽フイルム枚数が12枚で、どの絞り値指標でも、円になる様工夫された、上質な構造になっています。カビ等付着物除去はこの部位内部にアクセスする事で、除去が可能になります。
整備報告
レンズ鏡胴内部全てのガラス玉表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。只、付着していた雲状カビが腐食カビで、除去後の腐食痕が若干ですが残ります。雲状カビはレンズ表面に面状で成長しますので、処置後も薄っすらとですが白く曇っている個所が確認できます。
又、レンズ表面に傷があります。レンズが綺麗に復元した分、レンズ本来の姿が露わになります。この様な諸々の症状、ご了承お願い致します。レンズの様な光学機器は、未使用期間が長期化する程、カビ等随所に支障をきたします。放置しないで、なるべく頻繁に使ってあげて下さい。尚、処置前の光学的な付着物を撮影した写真の内一枚を代表としてUPしておきますので、併せてご参照下さい。この機種を切っ掛けに、Leitzレンズにての撮影が楽しめます事お祈り申し上げます。
参考処置前写真
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ着払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 8,500円(税込) |
クロネコさん送料 | ご依頼者様ご負担 |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 8,500円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔