レンズ×2本 修理記録

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8×2本

今回お預かりしました2本のレンズ=Nikon Nikkor-O 50mm F2.8は、どちらも中判カメラ Zenza Bronica用の交換レンズになります。このレンズ名は、開発者の名前に由来があり、吉野善三郎氏の名前の善三郎にちなんでつけられ、1959年に発売されました。価格も手頃だったことから、和製Hasselbladとも言える身近な6×6判一眼レフカメラとして愛されてきました。

懇意にして頂いている写真家に聞くと、Hasselbladはクイックリターンミラーではないのに対し、Zenza Bronicaはクイックリターンミラーを持っていました。写真家にとっては、この相違だけでもZenza Bronicaと当時のHasselbladはまったく別のカメラの扱いだったそうです。

中判カメラ ゼンザブロニカ S2
中判カメラ Zenza Bronica S2

レンズマウントは3本ツメのバヨネット式ブロニカマウントです。ボディに直接レンズをつけるのではなく、着脱式のヘリコイド=フォーカス調整機構に対してレンズが取り付けられます。40mm・50mm・75mm・100mm・150mm・200mmの規格の交換レンズは、Nikkorレンズ群になります。後に一部のレンズがZenzanonブランドで東京光学や旧東独Carl Zeiss等から供給される歴史をもっている機種になります。

今回お預かりしましたNikon Nikkor-O 50mm F2.8という機種の、この50mmという6×6の画角は、35mmカメラでは28mmに相当しますので、かなりの広角レンズの一種になります。レンズ自体にフォーカス調整機構が組み込まれていない構造ですので、殆どの課題がカビの付着です。絞り羽ユニット機構に支障がある個体は滅多に見かけませんので、そういう意味では丈夫なレンズだと思います。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はお電話にて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

お電話にてのお問い合わせ

Zenza Bronicaの電子パックを購入して、仕事で使いたいので、このカメラ用の交換レンズを今後機会あれば購入する予定です。その際、いつもの様にそちらに送りますので、検査して頂いて、問題のある個所修理して下さい。その後も、入手出来た段階で追加で送付しますので、宜しくお願い致します。尚、料金は区切りのいいある期間で、それまでの個体数を計算してまとめて振り込みます。

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253

この個体は、ハッキリいって手遅れという所見の感想でした。レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての硝子玉表面に相当酷いカビが付着していました。カビだらけ・・・というイメージで、硝子部位以外の金属部位のも青カビが発生していて、末期症状なのかと診断しましたが、全てのカビの除去処置を施すと、除去後の腐蝕痕は随所に残ったものの、レンズ全体としては綺麗な状態に復元できたと思います。

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 無数のカビ②
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 無数のカビ(処置前)①

この機種は硝子素材にプラスチックが含まれていない時代の個体なので、カビの付着期間が相当に長かったとしても、復元状態はそこそこのレベルまでには復元します。

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 付属品
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 付属品
機種名Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253
シリアルNO27253
付属品フイルター
課題(所有者さん見解)全体的な検査

修理報告

このレンズには、フォーカス調整機構が組み込まれていません。駆動系部位としての絞り羽ユニット機構問題ありませんでした。カビ等の光学系付着物は全て除去できていますが、除去後の腐蝕痕が随所に残ります。レンズ全体としてのクリアー度はかなり復元しています。処置前のカビの参考写真併せてご参照下さい。

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 無数のカビ①
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 無数のカビ(処置前)
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 無数のカビ③
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 無数のカビ(処置前)

順番に検査

この機種は、対物側及びリヤ側両方向から、レンズ鏡胴内部にアクセスしていきます。今回は、リヤ側からのアクセス時撮影した数枚の写真をご参照下さい。

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 解放時
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 解放時
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 絞り時
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 絞り時
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 後玉レンズユニット
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 後玉レンズユニット
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 後玉ユニット更に検査
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO27253 後玉ユニット更に検査

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430

この個体も、駆動系部位絞り羽ユニット問題ありません。カビ等光学系付着物に関しては、NO27253程カビの付着が激しくなく、随所に付着した小さな点カビと、レンズ外周の菌糸状カビが特に目に付いた程度でしたので、綺麗に復元すると診断しました。

Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430 カビ①
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430 菌糸状カビ(処置前)
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430 カビ②
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430 点カビと菌糸状カビ(処置前)
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430 カビ③
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430 点カビ(処置前)
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430 付属品
Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430 付属品
機種名Nikon Nikkor-O 50mm F2.8 NO29430
シリアルNO29430
付属品前後キャップ
課題(所有者さん見解)全体的な検査

修理報告

レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての硝子玉表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。レンズ外周の菌糸状カビが、腐蝕カビで、カビそのものは除去できていますが、除去後の腐蝕痕が薄っすらとですが残ります。この点、ご了承お願い致します。NO27253レンズよりはこちらの個体の方が状態はいいと判断致します。

納品に関しまして

※お願い・・・速やかに納品させて頂きます。今後何れかのタイミングで、お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。

発送方法クロネコ着払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費レンズ×1本=5,000円(税込)
決済方法銀行振り込み
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。