300mm以上の望遠単焦点レンズは、機種によってはレンズ鏡胴内部全ての硝子玉部位にアクセスできます。でも、カビ等の除去処置を施した後、正確に再組立したとしても、時々無限遠に支障が出てしまう事があります。原因は今のところ解明できていません。
この様な事態になってしまうと、人様の大切なレンズを壊してしまう結果になってしまいますので、当協会では類似機種の修理はお断りしております。今回のご依頼内容は、マウント側レンズユニットに組み込まれている部位限定の処置内容でしたので、お引き受けする事にしました。
Minolta MD Apo Tele Rokkor 400mm F5.6というレンズは、MCからMDにマイナーチェンジされた機種で、最初期のMCタイプは1976年に発売されました。あまり周知されていないと思いますが、この機種には蛍石が使われています。蛍石レンズといえばCanonレンズが有名ですが、Minoltaレンズもこの当時では、フローライトレンズのラインアップがありました。
蛍石の光学的な長所特性は古くから随所で生かされていて、例えば顕微鏡の対物レンズであれば天然の蛍石でも大きさが足りるため、19世紀頃から使われていました。レンズに応用する場合、大きさの点で、天然物では補えない為、人口の蛍石レンズに加工して、特に高級な望遠レンズに採用されることが多く、現在のキヤノンでいえばLレンズの一部に使われています。
主な会社としては、Canonオプトロン社が蛍石の販売を担っていて、販売数量は7割以上がカメラレンズ用ですが、顕微鏡・望遠鏡などの用途としても関連メーカー出荷しています。天然蛍石のオブジェを、カメラ店で見たことがある方も多いと思いますが、写真の緑は天然不純物の色で、不純物が取り除かれた人工蛍石結晶は透明になります。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
数十年前に一回後玉のくもりを当時ミノルタにお願いして取り除いてもらいましたが、また曇ってきました。中玉もほんのわずかカビが入っていますが、ごくわずかですので、無視するつもりです。Minolta MD Apo Tele Rokkor 400mm F5.6という望遠単焦点レンズですが、対応可能でしょうか?大丈夫な様でしたら、是非曇りを取り除いて頂きたくお願い申し上げます。
機種名 | Minolta MD Apo Tele Rokkor 400mm F5.6 |
シリアルNO | 3201495 |
付属品 | 前後キャップ、フイルター |
課題(所有者さん見解) | 数十年前に一回後玉のくもりを当時ミノルタにお願いして 取り除いてもらいましたが、また曇ってきました。 |
修理報告
曇り(白濁)の原因は無数の点カビでした。このユニットレンズには2枚のレンズが組み込まれていますが、カビそのものの除去処置施しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。付着していた点カビが腐蝕カビで、除去後の腐蝕痕が若干ですが残ります。ご了承下さい。外観、駆動系共に状態の良い個体です。今まで同様大切にご所有下さい。
今回曇ってしまった主な原因は、この様にカビの付着になりますが、未使用期間が長期化すると、再度付着物が発生してしまいますので、なるべく頻繁に使用して頂き、レンズ鏡胴内部に空気の流れを作ってあげて下さい。その際絞りを解放にして自然光を入射してあげると尚有効なカビ防止策になりますので、ご参照お願い申し上げます。尚、今回の整備工程にて撮影したいくつかの写真もご参照下さい。
参考写真
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ着払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 10,000円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔