Nikon Nikkor 50mm F1.4という機種は毎月修理依頼があるとても人気があるレンズの仲間になります。同じ焦点距離、解放F値でありながら、実は沢山の種類があります。対物側レンズ押えリングだけを例にとっても、Nippon Kogaku Japanという形式で刻印されているものもあれば、今回ご依頼頂いた機種の様に、Nikon Nikkorという表記の仕方を採用している機種もあります。
私は写真家ではないので、機種の細かい実写の際の差異は解りませんが、修理の視点での各種類の構造はそれぞれ異なった機構を持っています。Nikon Nikkor 50mm F1.4の場合は、レンズ押え化粧リングを外す手順ではなくて、レンズ鏡胴やや先端部にあるマイナス形状のとても小さいイモねじを外す事によって、レンズを大きく二つに先ずは分離させる手順で必要な処置を施していく流れになります。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
お世話になります。以前(今年10月に)、Carl Zeiss Jena Tessar 28mm F8(Contax C用)の見積もりを頂きました。もう一本、クリーニングの見積もりをお願いしたいです(2本のクリーニングをまとめてお願いする予定です)。レンズはAi Nikkor 50mm F1.4で、そんなに酷くはないのですが、以下の点が気になります。
・後玉に、中心部分を除いて、全体に薄曇りがあります
・全体的にホコリが混入しています
・ピントリングが軽く回すとスースー音がします
機種名 | Nikon Nikkor 50mm F1.4 |
シリアルNO | 4579087 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | 白濁とフォーカス調整機構の音 |
ご希望予算 | 10,000円くらい |
修理報告
お電話にてもお伝え致しましたが、フォーカス調整機構の音に関しましては、関連螺旋状部金属同士が適切なグリス量がない状態で使用していた為、摩耗してしまっていて大きな隙間が発生しています。この隙間は再グリスUP処置では補えきれません。逆に、再グリスUP処置を施しますと、隣接している絞り羽ユニット機構にその油分が流れ落ちて、絞り羽フイルム本体がスプリングが常時効いている解放状態で固着してしまう危惧を孕んでおりますので現状のままご所有して頂く事を推奨致します。
光学系付着物に関しましては、レンズ鏡胴内部全ての部位に付着していた埃・カビ除去処置施しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。レンズを通過して、カメラ本体素子に届く光の総量=光束・・・と呼んでいますが、新品時の状態を100としますと、処置前75から処置後95くらいの状態になりました。付着していたカビの種類は主に点カビでした。
その内の一部が腐蝕カビで、カビそのものは除去できていますが、除去後の腐蝕痕が随所に残ります。又、薄っすらと白濁して見えたもう一つの原因は合成レンズの貼り合わせ面で起きている天然樹脂素材流動性粘着物自体の劣化の進行です。これは付着物ではないので除去できません。
この劣化の進行状態も機種によりまちまちなのですが、今回お預かりしました個体は、その進行がほぼ止まっていると診断しますので、今後カビが発生しない限り復元状態が維持できると診断致します。レンズが綺麗になった分、腐蝕痕と白濁が目立ちますが、この点ご了承お願い致します。外観共に状態の良いレンズです。未試用期間が長期化しない様、今後も大切にご所有下さい。以下、作業風景の一部撮影しましたので、解説文章と併せてご参照下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ着払い便 |
送り状NO | 別途メールにて記載 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 10,000円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔