Nikon Series E 35mm F2.5 修理記録

Nikon Series E 35mm F2.5

このレンズは、プラスチック素材で作られていて、コンパクトで軽量なのが特徴です。このモデルを設計したメーカーさんの意図を知る事はできませんが、硝子素材等も含めた材質のみから判断すると、製造後いつまでも使用してももらう事を想定して作られたレンズではない様です。懇意にしている写真家の方に聞くと、値段の割には写りは素晴らしく、携帯性と日常の撮影には利便性が高いレンズなのだそうです。

一方、修理の側面から診断すると、とてもシンプルな構造ですので、プラ素材の部位が固着していなければ、整備は容易なのが利点です。又、巷(ちまた)では、レンズの曇りが取り上げられている様ですが、そもそもこのモデルには合成レンズが組み込まれていなので、プラレンズの課題の、固着をクリアーできれば、カビの除去処置にて、クリアーな個体に復元できます。

こういう構造のレンズですので、最低限必要な治具・溶剤と、構造の理解と、適切な指導者がいる環境下でしたら、ご自宅で自分で整備可能なレンズの部類に入ると思っております。只、普及廉価版Canon FDレンズ同様、レンズユニットが三つの木ネジで固定されている構造=三点固定式になっているので、この部位を外す際には、分解前の状態を忠実に再現する様、再組み立てには注意を払って下さい。

Nikon Series E 35mm F2.5 レンズユニット
Nikon Series E 35mm F2.5 レンズユニット3点固定式

Nikon Series E 35mm F2.5というレンズ

アイキャッチ画像=写真の様に、このレンズはNikon製なのにNikkorという種別銘柄表示がされていないモデルの機種になります。日本光学が初めて造ったプラスティック外装のカメラニコンEM用のセットレンズとして世にデビューしました。現在も中古市場では、35mmシリーズとして三つのモデルが流通しています。

Nikon EM
プラスティック外装 Nikon EM

今回お預かり致しましたレンズの仕様書の概要欄には、1980年 日本光学製 ニコンEM用 広角レンズと書かれていますので、 Nikon EMフイルムカメラの広角レンズとして開発されたレンズ、という位置付けになるのだと思います。同機種を過去に整備した際、このレンズに関して詳しく解説しておりますので、その記事をご一読下さい。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂いたお問い合わせメール

Nikon Series E 35mm F2.5というレンズを所有しております。ここ数年間何かと忙しくて撮影する機会がなく、放置しておりました。保湿庫に保管していたのですが、レンズが曇っていて実写にも影響があります。ネットで検索すると、プラスチックレンズは修理ができないという情報が多いのですが、何とかならないものでしょうか?以前修理をお願いした時と同じくらいの費用でお願いできますととてもありがたいです。宜しくお願い致します。また、絞り羽の動きもスムースではない様な気がします。

今回お預かり致しました機種

Nikon Series E 35mm F2.5 付属品
Nikon Series E 35mm F2.5 付属品
機種名Nikon Series E 35mm F2.5
シリアルNO2005929
付属品フロントキャップ
課題(所有者さん見解)カビの除去
ご希望予算15,000円くらい

整備報告

レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度はかなり復元しています。付着していた、特に点カビが腐食カビで、除去後の無数の腐食痕が薄っらとですが、随所に残ります。

除去前光学系付着物写真

Nikon Series E 35mm F2.5 菌糸状カビ
Nikon Series E 35mm F2.5 菌糸状カビ
Nikon Series E 35mm F2.5 点カビ
Nikon Series E 35mm F2.5 点カビ

やはり、プラ素材含有率が高いガラス部位は、カビにも弱いのだと推測致します。レンズが明るくなった分この様な症状がとても目立ちます。実写には影響はないのですが、見た目的にご了承下さい。駆動系処置に関しましては、絞り羽ユニット機構も今回の処置にて復元しております。

絞り羽ユニット機構

Nikon Series E 35mm F2.5 開放時
Nikon Series E 35mm F2.5 開放時
Nikon Series E 35mm F2.5 絞り時
Nikon Series E 35mm F2.5 絞り時

今回の整備にて、光学系・駆動系共に状態の良いレンズに復元しておりますので、未使用期間が長期化しない様ご留意頂きまして、今まで同様今後も大切にご所有下さい。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ発払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費15,000円(税込)
クロネコさん送料京都府(一律)=1,040円(税込)
決済方法銀行振り込み
合計16,040円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。