Voigtländer Color-Ultron 50mm F1.8 修理記録

二つの駆動系部位

今回の修理ご依頼内容が、光学系付着物除去と、フォーカス調整機構トルクの復元という事でしたので、ご依頼内容に沿って整備を施しました。絞り羽調整ダイヤルは駆動伝達部位＝金属が摩耗してしまっているので、軽すぎるトルク感は修理の範疇では改善できませんでした。

フォーカス調整ダイヤルのトルク感は、関連螺旋状部の汚れを除去し、再グリスUP処置を施しましたので、正規のトルク感に近い感じには復元しましたが、時々ムラを感じます。この機構も関連螺旋状部アル合金部位同士の摩耗が激しい為、洗浄と再グリスUP処置では限界があります。この点ご了承お願い申し上げます。絞り羽調整ダイヤルのトルク感が軽すぎるので、その感触と比較すると、フォーカス調整ダイヤルのトルク感がやや重めに感じるかもしれません。

光学系付着物

カビ等光学系付着物は全て除去しましたので、納品段階で付着物はありません。カビの種類は主に点カビと雲状カビでした。只、付着していた点カビが腐蝕カビで、カビそのものは全て除去できていますが、除去後の腐蝕痕が随所に残ります。この腐蝕痕と付着物は見分けが付き難いのですが、実写には影響はありませんので、この点もご了承お願い申し上げます。

レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ヘリコイドの修理とレンズの清掃をお願いすると費用と納期はどれくらいかかりますでしょうか？教えていただけると幸いです。貴協会にて一度現物を拝見いただき、改めて修理の可否を判断頂きたく思います。送付させて頂いてもよろしいでしょうか。

こちらからのお返事メール

１、フォーカス調整機構
フォーカス調整機構螺旋状部は二つの金属部位で構成されています。フイルムカメラがまだレンジファインダーのL39マウント形状が主流の時代はアルミ合金＋真鍮という組み合わせが一般的でした。その後、一眼レフフイルムカメラに移行するにつれアルミ合金＋アルミ合金という組み合わせに変化してきました。この時代のマウント形状はM42形状のスクリュータイプが代表的です。

どちらの金属も金属素材としては柔らかく定期的に整備しないと、金属同士が摩耗してしまいます。フォーカス調整機構トルク感にムラがあったり重く感じる場合は、その軌道が歪んでいたり傷が付いてしまっているケースが殆どです。反対に、軽くスカスカに感じる場合は二つの金属同士の隙間が原因になります。どちらの場合も、修理の可否に関しましては実際に個体を初見してみないと課題が解決するか否かはメールのお問い合わせ段階では明言する事が難しいです。

2、光学系付着物
カビ等光学系付着物に関しましてはレンズ鏡胴内部へのアクセスが順調に進行できれば除去は可能と推測致します。只、カビの付着期間にもよりますがカビそのものは除去できたとしても除去後の腐蝕痕が残ってしまうケースがあります。この腐蝕痕は実写には影響ないことが多いのですが見た目を気にする方は充分に検討する事を推奨しています。

3、納期に関しまして
その時の修理依頼件数に左右されますが現時点では一週間程お時間を頂いております。

4、修理費用に関しまして
今回お問い合わせ頂きました機種は過去の修理記録台帳を紐解きますと同機種にて12,000円（税込）くらいかかっております。いずれに致しましても、O様の大切な光学機器です。業者さんの選定等々、充分にご検討下さい。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに2021年7月7日着指定にて納品させて頂きます。

発送方法	クロネコ発払い便
送り状NO	別途メールにて報告
納品ご指定日	2021年7月7日
配送状況	お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費	12,000円（税込）
送料	大阪府 京都府 滋賀県 奈良県 和歌山県 兵庫県＝1,040円（税込）
合計	13,040円
決済方法	銀行振り込み
お願い	ご決済後メールにてお知らせ下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
（一社）日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔