日本のカメラの技術的な歴史を振り返りますと、1980年代頃から、先進的なカメラを目指してオートフォーカスカメラを次々と発表し、それぞれのメーカーが世界にどんどん進出していきました。当時、オートフォーカスカメラは未来のカメラの象徴とまでいわれ、その実用化は無理とまで言われていました。
今ではこういう便利な機種が当たり前の時代になりましたが、当時からまだ40年くらいしか経っていません。インターネットの世界同様、僕たちを取り巻く技術革新のスピードは目まぐるしいものがあります。AF機能が組み込まれたZoomレンズは、その構造上、レンズ鏡胴内部全ての部位にアクセスできないので、当協会ではほとんどこの手の機種に関しては、記事にしていないのですが、今回ご依頼頂きましたMinolta AF 85mm F1.4というレンズの整備を機会に、写真家の意見を聞きながら、少しだけ解説したいと思います。
Minolta α-7000というカメラ
日本のカメラメーカーは、あっという間に諸難題を解決して、オートフォーカスカメラ全盛期を築いたのですが、MINOLTA α-7000という機種が、世界初のAF一眼レフカメラシステムを構築した事は有名な話です。そして、1985年Minoltaから発売されたこのα-7000は世界初のAF一眼カメラで、このカメラの登場以降ついに本格的なオートフォーカス時代に突入する事になります。
Minolta AF 85mm F1.4仕様レンズモデル
Minoltaのレンズは世界初の本格的オートフォーカス対応中望遠レンズとも言えるのですが、今回お預かり致しましたMinolta AF 85mm F1.4というレンズ群には、いくつかのモデルが存在します。以下表にして解説致します。
銘柄=モデル | 製造年 |
Minolta AF 85mm F1.4 | 1987年 |
Minolta AF 85mm F1.4G | 1993年 |
Minolta AF 85mm F1.4G(D) | 2000年 |
Minolta AF 85mm F1.4G(D)Limited | 2001年 |
Sony Planar T* 85mm F1.4 ZA | 2006年 |
Minolta 85mm F1.4仕様レンズの系譜は、マニュアルフォーカス時代のRokkorレンズ時代にはF1.7が最大口径機種で、F1.4の大口径レンズは存在しませんでした。それが、1987年にF1.4の大口径レンズモデルが、突然オートフォーカス対応で世にデビューしたという事になります。企業的には、Minolta社からSony社へ、カメラ事業が譲渡される頃まで生産されていましたから、おそよ20年間に渡り生産・販売が続いた長寿命レンズでもありました。
当協会でも、上記モデルは全機種お預かりした経緯はありますが、中でも、Minolta AF 85mm F1.4G(D)Limitedというモデルは、確か限定700本で発売されたプレミアムレンズなので、もしもの事を考えた場合、勇気=覚悟が必要で、かなり緊張しながら整備した事を思い出します。こんな風に歴史的な背景を振り返りますと、今回お預かり致しましたMinolta AF 85mm F1.4というレンズは、Minoltaの歴史の中で、1987年に製造・販売された世界初の本格的オートフォーカス対応中望遠レンズ初期モデルといえると思います。そういう背景を踏まえて整備させて頂きました。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたメール
初めてメール差し上げます。学校で写真倶楽部に入っているのですが、卒業する先輩からレンズを譲ってもらう事になりました。レンズはカビだらけという条件付きです。この様な症状は解決するものでしょうか?もし解決する様でしたら、是非修理をお願い致します。予算は、アルバイトで貯金しましたので、3万円くらいまでなら大丈夫です。レンズの動きは問題ないと言われていますが、一応検査して頂き、必要な個所は修理して下さい。Minolta AF 85mm F1.4というレンズになります。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Minolta AF 85mm F1.4 |
シリアルNO | 22601071 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | レンズを綺麗にする |
ご希望予算 | 30,000円くらい |
整備報告
レンズの構造上、二か所の硝子部位にはアクセスできないのですが、たまたまその該当部位には付着物がなく、他の硝子部位表面全てに付着していた埃・カビ除去処置施しました。カビの種類は主に菌糸状カビと雲状カビでした。
レンズ全体としての、光学的なクリアー度はかなり復元しています。スカッと抜ける様な眩しいレンズに蘇りました。只、一部菌糸状カビが腐蝕カビで、除去後の腐蝕痕が薄っすらとですが残ります。この点ご了承お願い致します。絞り羽ユニット機構及びフォーカス調整機構共に問題ありません。
もしこのレンズをマウントアダプターを介して使う場合は、AF機能は使えなくなりますので、調べてからお使い下さい。製造から35年くらい経過しているレンズですが、まだまだ現役で活躍してくれます。今後も大切にご所有下さい。整備途中で撮影したカビの写真等、UPしておきますので、併せてご参照下さい。
整備前参考写真
レンズが綺麗に復元した分、上記写真の様な硝子部位外周の大きめの傷が目立ちます。
この硝子部位表面に除去後の腐蝕痕が薄っすらと残ります。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 25,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 東京都(一律)=930円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 25,930円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔