Carl Zeiss Planar 80mm F2 検査報告書

生活環境の変化でレンズを使用しない時は知り合いに使ってもらう

今回も、レンズを放置(長期間使わなかった)為にレンズ鏡胴内部のほぼ全てのレンズ表面に沢山のカビが付着してしまったという修理依頼です。この機種の様なとても高価な機種でも、未試用期間が長期化し、放置しておくと、特に光学系付着物増殖という支障が進行してしまいます。

写真撮影は、どちらかというと趣味の世界ですから、例えば体調を崩したり、本業が忙しくなったり、様々な生活環境の変化で、ある時期そのレンズを全く使わない・・・といった期間はどなたにも訪れます。そんな時は、気心のしれた友人に使ってもらう等の工夫をして頂き、なるべく放置状態を回避する配慮をして頂くと、再び撮影したくなった環境に戻った時に、そのレンズは良い状態で、撮影ライフを再開できる様になります。

古民家
古民家

田舎では、高齢化が進み、古民家の空家問題が深刻ですが、レンズも家と一緒で、誰かに使ってもらわないと、どんどん傷んでいきます。有料にしろ、無料にしろ、空家の様に自分以外の住人を探すのは難しいですが、レンズの場合は、写真愛好家の方は全国に大勢いらっしゃいますので、是非参考にして下さい。

メールお問い合わせ履歴
頂いたメール

初めてメールします。海外赴任期間中、レンズを仕舞いっぱなしにしていて、久しぶりに取り出してみたら、カビだらけになっていて困っています。8年位使っていませんでした。撮影に影響がでるくらい酷いです。何とかなるものでしたら、修理お願い致します。

お返事メール

お問い合わせありがとうございます。一般社団法人 日本レンズ協会 代表理事 田斉と申します。

撮影に影響がでる状態という事は、レンズ鏡胴内部に組み込まれているレンズ表面全体を付着物が覆っている症状と推測致します。

長期間未試用状態で放置されたレンズは、光学的な付着物の問題と共に、レンズ鏡胴内部へのアクセスに必要な関連部位の固着・・・という課題も同時に抱えてしまいます。

付着物除去の為の必要なアクセスが可能でしたら、付着物の除去はできると診断致します。

頂いたメール

お返事ありがとうございます。一度見て頂きたいのですが、送付して宜しいでしょうか?又、お値段はいくら位かかりますか?期間についても教えて下さい。

お返事メール

○○様のご都合に合わせてこちらまでご送付下さい。整備費用は、過去の修理記録台帳を紐解きますと、同機種にて30,000円(税込)くらいかかっております。

納期に関しましては、概ね10日間程お時間を頂いております。

〒270-2267

千葉県松戸市牧の原1-24LM101

(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉

Carl Zeiss Planar 80mm F2 付属品
Carl Zeiss Planar 80mm F2 付属品
付属品前後キャップ
シリアルNO8768378
納期6日間
整備費用28,000円(税込)

解説

検査致しました。鏡胴内部全てのレンズ表面に付着していたカビ、埃除去処置施しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度はかなり復元しています。曇りの主な原因は雲状カビでした。カビそのものは除去できていますが、除去後の無数の点カビ腐蝕痕が随所に残ります。この点ご了承お願い致します。外観、駆動系共に状態の良い個体です。今まで同様大切にご所有下さい。

お電話にてもお伝え致しましたが、今後も海外赴任という生活環境の変化が何度かあると思います。撮影の機会がある様でしたら、是非レンズも一緒に持っていって下さい。赴任先で撮影の時間が取れそうにない場合は、是非ご友人に話してレンズを使ってもらうような工夫をして下さい。

ご家族で、興味がありそうな方に、撮影の基本を教えて、代わりに使ってもらってもいいかもしれません。様々なアイデアを出して、未試用期間が今後は短くするようご協力お願い致します。

作業工程参考写真

Carl Zeiss Planar 80mm F2 レンズユニット
Carl Zeiss Planar 80mm F2 レンズユニット
Carl Zeiss Planar 80mm F2 レンズ鏡胴内部
Carl Zeiss Planar 80mm F2 レンズ鏡胴内部
Carl Zeiss Planar 80mm F2 レンズ表面を覆ったカビ
Carl Zeiss Planar 80mm F2 レンズ表面を覆ったカビ
Carl Zeiss Planar 80mm F2 レンズ表面を覆ったカビ②
Carl Zeiss Planar 80mm F2 レンズ表面を覆ったカビ②

処置後の所感

当協会に寄せられる修理依頼レンズの凡そ8割が、光学系付着物の悩みです。そして、そうなってしまった殆どの原因が、レンズを使わないで仕舞っていたというのが直接の原因になります。趣味の世界で使う道具なので、使わない期間が発生してしまうのは仕方ない事ですが、そういう期間の工夫が大事になります。

良く見かける風景として、自転車も一緒です。必要性があり買った時は大事にして、頻繁に乗ります。でも月日が流れ、あまり使わなくなると、雨ざらしのまま、チェーンは錆びていき、タイヤの空気はぺちゃんこになったまま、マンションの自転車置き場に放置されていきます。

レンズも撮影の為の道具の一種です。家の中だから大丈夫!保湿庫だから平気・・・ではなくて、なるべく未試用期間を短くする工夫をできる範囲でお願い致します。

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。