Copitar 3× Coated 修理記録

Carl Zeiss Jena Dekarem 10×50という10倍機の双眼鏡の修理記録を公開させて頂きましたが、その記事の中で、今後はもう双眼鏡の整備はしない旨のご挨拶を致しました。たまたま、その記事をお読み下さいました読者様から、今回はCopitar 3× Coatedというアンテイークな双眼鏡の修理のご依頼を頂きました。

ご依頼内容は、カビ等光学系付着物除去でしたので、本来ですと、鏡胴内部の奥に組み込まれているプリズムも処置する事になるので、一度内部にアクセスした個体は、このプリズムの位置決めから光軸調整を行う必要がでてきます。

当協会が今までも、積極的には双眼鏡の修理をお受けしてこなかった理由のひとつが、このプリズムの位置決め作業にあります。個人的な見解なのですが、このプリズムの再位置決めは非常に難しく、数ミリ以下の単位でも被写体像が大きく傾いたり、大きく変化してしまいます。そして、全ての作業を終えて再組み立て後フォーカスリングの０位置を無限遠に調整し、再度光軸の微調整を行うという極めてデリケートでシビアな作業なので、視力も手先の作業的厳密さを考えると、今回のご依頼を最後に、今後はお受けしない方向で考えております。

単眼鏡や天体望遠鏡は引き続きご依頼はお受けする予定ですが、双眼鏡に関しましては今回が本当に最後のお預かりとさせて頂きたいと思っております。この様な事情をお電話にてもお話し致しましたが、眼に悪い影響がありそうな、接眼面のカビの除去を特にご希望で、プリズムは触らなくても構わないという、整備範囲限定の処置を強くご希望でしたので、今回は承諾させて頂く事にしました。

レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

今回お預かり致しました機種

機種名	Copitar 3× Coated
シリアルNO	不明
付属品	専用ソフトケース
課題（所有者さん見解）	カビ等光学系付着物除去
ご希望予算	20,000円くらい

整備報告

整備していて私も初めてわかった事なのですが、この機種は対物側硝子部位に合成レンズが組み込まれております。一般的に、光学機器に使われている合成レンズは、その貼り合わせに、カナダバルサムの様な天然樹脂素材流動性粘着物を使っているのですが、個体差はありますが、その粘着物自体が劣化して、黄変や白濁症状になってしまう個体があります。今回お預かり致しました機種は、その様な症状はありませんでしたので、ご安心下さい。

全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去しました。光学機器としてのクリアー度はかなり復元しています。付着していたカビの種類は主に点カビでした。お電話にてもお伝え致しましたが、点カビ除去後の腐食痕が随所に残りますが、目視的にはそんなに気にならないレベルです。

除去前付着物写真

一番懸念されていた接眼硝子部位に関してですが、お電話にてお伝え致しました手順にて、年に一度くらいご自身でもクリーニングしてあげて下さい。分解する必要はありませんので、ご協力お願い致します。双眼鏡も未試用期間が長期化しますと、カビの発生等不具合が生じます。なるべくしまいっぱなしにしない様に、時々使ってあげて下さい。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

ご決済に関しまして

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
（一社）日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔