今回お預かり致しました機種は、2006年発売の中望遠AF単焦点レンズですから、まだまだ新しいレンズになります。それでも、修理依頼のお問い合わせを時々頂きます。外観はかなり違いますが、同じ焦点距離、開放F値のCanon RF 85mm F1.2という機種もあります。流石にこちらは更に最新機種になりますので、私は手に取ったことがありませんし、修理はできない構造になっていると思います。いい機会なので両機種を比較してみました。レンズ銘柄基板には、 ULTRASONIC という表記が赤字で表記されていますが、USMとはUltra Sonic Motorの事を意味します。
Canon RF 85mm F1.2 L USM
発売日 | 2019年6月 |
レンズ構成 | 9群13枚 |
絞り羽フイルム | 9枚円形絞り |
絞り値 | F1.2-16 |
最短撮影距離 | 0.85m |
フイルター径 | 82mm |
Canon EF85mm F1.2L II USM
今回お預かりした機種はこちらのモデルになります。
発売日 | 2006年3月 |
レンズ構成 | 7群8枚 |
絞り羽フイルム | 8枚円形絞り |
絞り値 | F1.2-16 |
最短撮影距離 | 0.95m |
フイルター径 | 72mm |
フルタイムマニュアルフォーカス
オートフォーカス設定の後でも、撮影者が最終的なピント調整ができるように、ワンショットAFの後、フォーカスリングを回転させるだけで即時にマニュアルフォーカスが可能な機能が搭載されています。
USM=超音波モーター
従来のDCモーターが更に進化して、キヤノンが世界で初めて実用化に成功したモーター=USM=Ultra Sonic Motor=超音波モーターも搭載された造りになっています。構造的に、当協会の技術ではカビ等の光学系付着物除去処置くらいしか整備はできません。まだまだ新しい部類の機種ですので、メーカーさんが修理対応していると思います。
RFとEF
ちなみに、 RFとEFという表記はマウントの規格になります。この二種類のマウント規格のレンズは現在も製造されている規格形状になります。それ以外の規格がCanon製のものは沢山存在します。オールドレンズを最近のデジカメで撮影する時は、このマウントに注意してアダプターを揃えて下さい。こちらの知識も、いい機会なので表にしておきます。
マウント形状 | 属性 |
L39・スクリューマウント | オールドレンズ |
Rマウント | オールドレンズ |
ELマウント | オールドレンズ |
FDマウント | オールドレンズ |
New FDマウント | オールドレンズ |
EFマウント | 現行製造 |
EF-Mマウント | 現行製造 |
RFマウント | 現行製造 |
なので、New FDマウントまでの古い機種でしたら修理は可能です。ちなみにCanon製レンズは造りが少し独特で、L39規格以外の機種は、個人的にはあまり得意ではありません。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたメール
オークションで購入したレンズなのですが、AFでもMFでもピントが合いません。ピントを合わせるダイヤルが動いていない感じです。出品者に問い合わせても、返品不可を処置の上で買ったのだから・・・と取り合ってくれません。ジャンクと知りつつ安さで買った責任はあるとは思うのですが、直りますでしょうか?それと、レンズを覗くとカビだらけで気持ち悪いです。もともと安かったので、5万円くらいまでならお願いしたいです。お電話にてもお聞きしましたが、この機種は全ての修理が難しいとおっしゃっていましたが、直せる範囲で結構ですので、何とかお願い致します。何度も無理いって本当に申し訳けございません。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Canon EF 85mm F1.2 L |
シリアルNO | 16290 |
付属品 | 前後キャップ、フイルター |
課題(所有者さん見解) | カビ、AF機能不作動 |
ご希望予算 | 50,000円くらい |
整備報告
お電話にてもお伝え致しましたが、フォーカスの設定駆動伝達電子基板環境が随所で甘くなっています。その原因が何なのか?今までの保管状態等不明ですので特定できません。AF機構もMF機構も、検査時現状全く機能していませんでしたが、処置後は何とか機能はする様に復元はしました。只、その動作は安定感に欠けます。特にレンズに装着直後反応しない瞬間があります。一度稼動し始めるとその後は継続して駆動します。その原因は超音波モーター系と関連摩擦部位と電子基板系にあると推測致します。完全な駆動復元は、遜色のない部位交換が必要になりますが、該当部位の入手が困難なのが実情になります。
光学系付着物=除去前写真
光学系付着物に関しましては、レンズ鏡胴内部全てのレンズ表面に各種カビ・埃が付着していました。除去しましたので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。只、後玉表面は菌糸状カビの腐食痕が顕著に残ります。又、中玉表面に除去後の雲状カビ腐食痕跡が残ります。この様な諸々の症状ご了承お願い致します。おそらく相当長い期間放置されてきた個体なのではないかと思います。今後は、未使用期間が長期化しない様ご留意宜しくお願い致します。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 48,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 北海道(一律)=1,370円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 49,370円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔