このモデルの特徴
今からちょうど70年前、1952年(昭和27年)12月に発売されたこのカメラは、この形式の機種としては、世界で最初にスピードライト(別称ストロボ)に同調するX接点を装着した機種になります。X目盛りが、低速シャッターダイヤルのみに設置されているので、機種特定の目安になりやすいのではないかと個人的には感じています。機能精度、仕上げ程度も最良で、日本のカメラ史上に残る名機とうたわれました。
私が時々このフイルムカメラを点検後販売する機会があるのですが、今回販売するCanon IV Sb(4Sb) 型がいつも高値で売れる事からも、このモデルの人気が伺えます。このモデルは、IV S型の発展型後継機種として位置付けられた高級機で、フラッシュシンクロはFPとXの2接点方式になりまっています。
1936年から55年代にかけての昔の懐かしいフイルムカメラ
このサイトでは、基本的な操作方法を解説します。Canonさんから発売されたこのカメラ群は全部で26機種もあり、外観からはどの機種なのかを特定するのは少し難しいです。でも、全ての機種に共通する各種レバーの役割や、フイルム装填方法はあります。
この様なカメラは、アンチークとして部屋の棚に飾るのも素敵な趣味ですが、古典的なフイルムカメラと、当時の単焦点レンズの組み合わせで、実際に写真を撮ってみるのも楽しいと思います。でも、こういう機種の基本的な取扱い方法が分からないという写真愛好家の方々の為に、なるべく解りやすく、各種ダイヤルボタン類の役割について解説致します。
写真と解説補足動画をいくつも用意しましたので、このモデルが初めての写真家の方は、ご自身のペースで必要に応じて学習して下さい。すでにお詳しい写真家の方にとっては、釈迦に説法的な解説になってしまいました事ここに深くお詫び申し上げます。
28,800円という価格で販売いたします
本来、このモデルの場合は、点検依頼を頂いた場合、その費用で概ね12,000円(税込)くらいのお見積もり価格で点検させて頂いております。こちらで構造の研究が終わって、出品前に点検した状態ですので、お値段的にもとても価値のあるお買い物なのではないかと思っております。各種レバー類細かく解説しましたが、全体的に駆動系は正常で、ストレスなく実写できると思います。ご関心のある方は、以下の解説をお読み下さい。
レンズ適合規格
カメラ単体の販売になりますので、レンズに関しましては、L39規格スクリューマウントのモデルを装填して実写して下さい。例えば下記写真の様なCanon 50mm F1.8 L39マウントレンズが規格に合います。
余談になりますが、もしこの機会にレンズも購入予定の読者さんがいらっしゃいましたら、黒鏡胴モデルは避けた方が無難です。
当協会でいくつも構造研究しましたが、この黒鏡胴モデルは鏡胴内部に組み込まれている一部の硝子部位が磨りガラスの様に劣化しているケースが散見されるからです。宜しければご参照下さい。
駆動系検査後出品致します
今回この機種の構造の再研究が終わりましたので、各種ボタン・レバー・ダイヤル等々、駆動系の動きを検査後、販売させて頂きます。かなり長い解説になりますが、下記ご一読頂き、購入するかどうかの目安にして下さい。最初に結論から申し上げますと、外観及び各種駆動系共にとても状態の良い個体です。付属品のレザーケースも腐食等のなく、清潔でまだまだ使えます。皮の紐は流石に痛んでいましたので、こちらで処分しました。
出品するレンズ機種
機種名 | Canon IV Sb(4Sb) 型 フォーカルプレーン式フイルムカメラ |
シリアルNO | 99138 |
付属品 | レザーケース |
出品先 | ヤフオク |
Canon IV Sb(4Sb) 型と特定する根拠
Canon製のバルナック型フイルムカメラは26種ものモデルが製造販売されました。なのでそのモデルの特定は少し難しいのですが、情報収集元は、Canon Camera Museum になります。こちらのWebサイトに全ての機種の概要は掲載されています。宜しければご参照下さい。
このフイルムカメラの出品時の状態
①外観
落下等による凹みはありません。経年使用下のすれも殆どなく、気になる傷もありません。この年代の個体としては、かなり綺麗な方なのではないかと思います。ヤフオクの出品写真も併せてご参照下さい。当協会では今まで類似機種を沢山検査してきましたが、今回販売する個体はかなり綺麗な状態を維持しています。
この個体の入手経緯は不確かですが、かなり大切に所有・保管されてきたものと推測致します。ワンオーナーのカメラの可能性も高いです。カメラの場合、底部が綺麗な個体は概ねその他全体も綺麗な傾向にあります。
②低速領域シャッタースピード調整ダイヤル
写真と動画で解説致しますが、全てのダイヤル指標数値で正常に機能しています。詳細、下記の様な仕様になっています。T=タイムはシャッターを押し、その後リリースしても、シャッター幕は開放のままです。シャッターを切るには、1分の1秒等の指標位置にシャッタースピード調整ダイヤルを回すとシャッター幕が閉じます。そういう構造になっています。
1秒から1/8秒までスピードが変化しています。正確なスピード検査機は現在は所有していませんので、あくまでも主観の域を出ませんが、実写に際して全く問題はないと判断いたします。フラッシュシンクロはFPとXの2接点方式なのですが、ストロボを使っての、この機構の検査は施しておりません。ご了承お願い致します。
低速シャッターダイヤル目盛り | 8 4 2 1 T |
低速シャッターダイヤルクリックストップ | あり |
B(バルブ)とT(タイム) | T=タイム |
X目盛り | 低速シャッターダイヤルのみ |
②X接点を装着した機種で、X目盛りが低速シャッターダイヤルのみに設置されています
動画でも解説します
③フイルムカウンターリング
フィルム巻き上げダイヤルの下にはカウンターのメモリがついており、現在フィルムが何枚目なのか分かるようになっています。
実写中、今何枚目のフイルムなのかがわかるメモリダイヤルです。シャッターを切るごとに1メモリづつ移動しており、その駆動に全く問題はありません。新しいフイルムを装填する場合、最初に3回くらいスプロールに巻きついているか確認すると思いますが、その後本当に撮影する際のセット方法は動画で解説致しました。
この写真だと、現在は11枚目の位置に矢印がありますので、最初のセット方法を間違えなければ、今何枚目なのかが、このダイヤルで確認できます。
④フィルム感度表示メモ回転板
この機能が掲載されたのもIV Sb 型の特徴になります。一度フイルムを装填してしまうと、全部撮影が終わるまでフイルム室を開けれません。どんなフイルムで今撮影しているのか思い出せます。
感度数値の設定は、巻き上げノブのトップ中心を指で押さえながら回すと数値が変わります。とは言っても露出は全てマニュアルなので、メモになる程度です。
※注意=ちょっとややこしいのですが、別機能のフイルム装填枚数メモ指標がないのもIV Sb(4Sb) 型の特徴です。
Canon ⅡS 型とCanon IV Sb 改型には、この機構が組み込まれています。この写真だと、36枚フイルムが装填されているのだという事をメモ帳代わりに認識させておけます。
⑤フイルム巻き上げダイヤルとシャッターボタン
フイルムカメラはシャッターボタンを切る(押す)度にフイルム巻き上げダイヤルをまわします。矢印の方向=時計回りに回すと、フイルムが巻き上げられて、それ以上回らなくなります。その時、数字が刻印されている、フイルムカウンターダイヤルも一緒に動きますが、気にしなくて大丈夫です。
その後、シャッターボタンを押して実写します。このシャッターボタンの周りにあるギザギザの部位をシャッターボタン座といいます。このボタン座にはいくつかの形状があります。リレーズを使う時は少し注意が必要になります。
もしも、レリーズを使用するのであれば、このシャッターボタン座の形状に合った規格の物を使って下さい。ちなみに、左の写真の様なレリーズは使えませんので、注意です。シャッターボタンを覆う様な形状のレリーズを使って下さい。
今回販売しますCanon IV Sb(4Sb) 型 のシャッターボタン座の形状は【大型】形状になりますので、大型形状規格のレリーズを入手して実写に活用して下さい。
⑥フイルム巻き戻し時切り替えレバー
フイルムを巻き戻す際に、このレバーをRの位置に倒します。フイルム巻き戻しダイヤルが軍幹部上、反対の位置(離れた位置)にあるので、慣れないうちは、少しわかり難いと思いますが、下記写真と動画で解説します。
通常撮影時はレバーはこの位置A固定です。
この位置でないと、シャッターが切れません
フイルムを巻き戻す時は、レバーをRの位置に倒します
⑦高速領域シャッタースピード調整ダイヤル
写真を見ても解りますがこの様な仕様になっています。
高速シャッターダイヤル目盛り | 1000 500 200 100 60 40 25 B |
高速シャッターダイヤル指標 | 1軸回転式 |
B(バルブ)とT(タイム) | Bのみ |
X目盛り | ナシ |
①B=バルブですので、シャッターボタンを押して、リリースするとシャッター幕が閉じます。
②低速領域シャッタースピード調整ダイヤルに切り替える際は、25-1に合わせて下さい。
③X接点を装着した機種で、X目盛りが低速シャッターダイヤルのみに設置されています。
※B=バルブはこの高速領域シャッタースピードダイヤル内で指定セットして下さい。
⑧レンジファインダーって何?・・・レンジファインダー=距離計
レンジファインダーという言葉の意味は、距離計のことを指します。カメラのファインダーを覗くと分かるのですが、二重像が目視できて、その二重像が重なった時がピントが合照したという目安になります。
全面から見るとこんな感じです
実際に、ファインダーを覗いてみると実感できるのですが、とても小さい窓なので、確かに見えにくいです。でも、3倍率切替レバーという機構があるので、このレバーを活用してピントを合わせます。今回出品する個体は、このファインダーは比較的クリアーです。当協会ではかなりの本数構造研究をしてきましたが、現在流通している類似機種と比較してみましても視界はクリアーな部類に入ると思います。
⑨ファインダー倍率切替レバー
画角は、Fで50mm、1×で100mm、1.5×で135mmを想定しています。例えば50mmを使う場合、1.5×で拡大してピントを合わせ、その後Fで構図を決めるという使い方が主流です。1.0×の使い方は、個人的にはわかりません。
⑩底部
カメラ底部には二つの部位があります。
⑪フイルム巻き戻しダイヤル
このダイヤルは、撮影し終わったフイルムを巻き戻す際に使用します。通常撮影時には下の写真の様にセットしたままで、いじる事はありません。ちょっと伝わり難いので動画で解説しますね。
動画では、単にフイルム巻き戻しダイヤルを回していますが、このダイヤルを回す前にフイルム巻き戻し時切り替えレバーをRの位置に倒して下さい。
通常撮影時
全部のフイルムを使い終わった際に、フイルム巻き戻しダイヤルを下の写真の様に、上に引っ張って矢印の方向(時計回り)に回転させます。すると、フイルム室のフイルムが巻き戻ります。
只、この巻き戻しダイヤルを回す前に、フイルム巻き戻し切替えレバーを所定の位置に切り替える必要がありますので、この点は少し知識がいります。⑥フイルム巻き戻し時切り替えレバー動画で学習して下さい。
⑫フイルム装着
いよいよ、フイルム装着です。慣れるまでは、難しいと感じるかもしれません。
この年代のフイルムは、今のそれとは形状が違っていました。なので、今のフイルムを少しカットする工夫が必要になります。平らな作業台で、はさみと定規を用意して、落ち着いた環境で作業して下さい。
フイルム室カバーを外して、フイルムを装着します。
写真の様に、フイルムを入れれば良いだけの話なのですが、意外と難しいです。スプールという棒の様な治具にフイルムを巻き付けます。
フイルム本体=パトレーネからフイルルを引っ張り出して、先端を約13㎝細い幅に加工します。
スプールの差し込み口にしっかりとフイルム先端を指し込みます。
イメージはこんな感じになります。
又、フイルムの両端に四角い穴=パーフォレーションが開いていますが、このパフォレーションをフイルム室内部の歯車の様な部位=スプロケットにはめ込みます。
そして、フイルム室カバーをセットし直して、装着は完了になります。この作業も動画で解説します。
本当に最後まで読んで頂きまして誠に有難うございました
この様なフイルムカメラの出品になります。私は写真家ではありませんので、点検したカメラを所有していても誰も幸せになりません。状態はとても上々ですので、この機会にご検討頂ければ幸いでございます。末長く使って頂ける写真家の方に所有して頂けますと嬉しいです。