カビ除去後の腐蝕痕は、気にはなりますが実写には影響しません
カビが付着したままの状態で、何年、何十年も放置されているレンズが沢山あります。未試用期間が長期化すればする程、レンズの様な光学機器は随所に支障をきたします。特に、光学系付着物は、付着物そのものは除去できても、レンズ自体が傷んでしまって、完全な復元状態に至るのは難しいのが実情です。レンズ鏡胴内部を目視した時に、この腐蝕痕は気になるものです。でも、実写には大きな影響はないので、やはり気が付いた時にカビの除去はしておいた方がいいです。
頂いたメール
初めてメールします。倉庫から沢山昔のレンズが出てきました。どれもカビだらけでこういうレンズは使えるものなのでしょうか?もし、綺麗になるとしたら、いくらぐらい用意しておけばいいのでしょうか?
お返事メール
カビ等の付着物は、綺麗に除去できるケースもありますが、付着期間やレンズ自体の素材によりカビを除去した後の、腐蝕痕が残る場合もあります。カビ自体は、レンズ全面を覆っていなければ、実写には大きな影響はありませんので、先ずは実際に撮影してみて修理依頼はご検討なさっては如何でしょうか?
頂いたメール
一度見てもらいたいので、レンズ送付致します。宜しくお願い致します。
お返事メール
○○様のご都合の宜しい時にご送付下さい。又、レンズの機種を教えておいて頂けますと幸いでございます。
付属品 | 前後キャップ |
シリアルNO | 825511 |
納期 | 4日間 |
整備費用 | 7,500円(税込) |
解説
光学系付着物に関しましては、鏡胴内部全てのレンズ表面に沢山のカビが付着していました。カビの種類は主に点カビと菌糸状カビでした。全て除去できていますので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。
お電話にてもお話致しましたが、カビの付着期間が相当に長かったと推測致しますが、除去後の無数の腐蝕痕が随所に残ってしまいます。点カビは点の形で、菌糸状カビは菌糸状の姿で目視できます。鏡胴を覗いた際、この様な一種の傷が目視できますが、この点ご了承下さい。
鏡胴内部を通過してカメラ本体に届く【光束】総量は処置前≒20としますと、処置後≒80位の数値には復元しています。【見た目】的にはカビ本体そのものと、除去後の腐蝕痕の見分けはつき難いと思いますが、実写に際してのレンズ本来の機能は復元しております。
駆動系、絞り羽ユニット機構問題ありません。フォーカス調整機構に関しましては関連螺旋状部が使用限界を超えていますので、今後の使用に際しましては、この点ご配慮頂きまして、大切にご所有お願い致します。
修理工程参考写真
整備後の所感
今回お預かりしたNippon Kogaku Nikkor-S Auto 50mm F1.4レンズの様なカビの付着状態ですと、除去作業をしていると作業者の目がかゆくなる時があります。見えないところでカビの胞子が空気中に漂ってきているのだと感じます。綺麗に復元して達成感は勿論ありますが、納品後再び放置されてしまうと、カビが再発してしまいます。レンズ整備後はこちらの手を離れてしまい、本来の所有者さんの管理下に置かれますので、レンズ所有者さんのレンズに対する知識と意識がレンズの状態を維持する為の大切なポイントになります。