天体望遠鏡=単眼鏡は構造的にはとてもシンプルです。
天体望遠鏡は、接眼レンズと対物レンズという二つの光学系部位で構成されているとてもシンプルな構造になっています。そして、光学系付着物は主に対物レンズユニットのどこかのガラス玉表面部位に付着している傾向があります。このレンズユニットを取り外し、処置を施して、再度組立直す作業も、構造が解っていれば比較的簡単です。その際、光軸等光学系数値に影響がでる事もありません。天体望遠鏡を所有している方も、一般的なレンズを所有している方も、ある時期未試用期間が長期化して、放置状態になってしまう事があります。そういう期間をなるべく短くして、撮影とか、星空の観察とかをしなくても、天体望遠鏡本体をいじったり、自然光を鏡胴内部に入れてあげて下さい。それだけでも、かなりカビの増殖防止になります。
頂いたメール
初めまして。天体望遠鏡にカビがびっしりついてしまいました。何とかなりますでしょうか?10,000円位でやってもらえると助かります。宜しくお願い致します。
お返事メール
お問い合わせありがとうございます。天体望遠鏡は、対物レンズユニットにカビが付着しやすい傾向にあります。当協会で宜しければ、その部位のみを送付して下さい。その方が送料や梱包の手間が省けます。ご検討お願い申し上げます。
頂いたメール
ありがとうございます。本日送付致します。只、対物レンズだけを送る事ができません。大きな荷物になってしまいますが、宜しくお願い致します。秋までに戻ってくると助かります。
お返事メール
○○様、諸々承知致しました。到着致しましたら、その旨メールにて報告させて頂きます。納期もなるべく早めに善処させて頂きます。
付属品 | リヤキャップ フロントキャップ |
シリアルNO | 1547 |
納期 | 5日間 |
整備費用 | 9,000円(税込) |
解説
2枚のレンズに付着していたカビはすべて除去しました。対物群レンズユニットとしての光学的なクリアー度はかなり復元できたと思います。只、雲状カビと一部点カビ及びレンズ外周の菌糸状カビが腐食カビの為、カビの除去後の腐食カビ痕跡がレンズ表面に凹凸として残ります。又、前玉の【コバ】が半分以上剥がれていて、その影響で該当レンズ周辺に光源が通過時の光の乱れがあります。目視できる現象としては、上記菌糸状カビの除去後の痕跡と重なって、少し判別が付き難いのですが白く白濁したような感じでレンズ外周が目に映ります。
カビは完全に除去できたものの、腐食カビの除去後の腐食痕跡が残る状況でメンテナンスを終了致します事をご理解下さい。部品交換をすれば完全に問題解決なのですが、その方法以外では最善の処置を施したつもりでございます。
ドロチューブ(焦点を合わすための望遠鏡後部の構造部)の圧着版(金属板、3×10 cm程度)がチューブから接着剤の劣化により脱落している課題ですが、構造上、このパーツの役割が当協会では正確に把握できない為、今回は未処置のままレンズを送付させて頂きます。
修理工程参考写真
整備後の所感
天体望遠鏡に関する勉強不足をお許し下さい。この部品がモルト状のパッキン(緩衝剤)の上に一部乗っかる形でSETされているのが、正常な状態なのかどうかを把握できないまま、接着剤による再固定を施すのは業者としては不適切な行為と判断した為、この様な判断を取りました。ご了承ください。併せまして、レンズのみならず望遠鏡本体鏡胴内壁等にも防カビ処置を施しましたのでご承知おきお願い致します。
天体望遠鏡の様に鏡胴本体が長く前玉からリヤ側までの距離があるレンズの場合、前玉群レンズユニットから奥が非常に暗い為、目視の際レンズが一見曇って見えるという特徴があります。今回メンテナンスを施したレンズ×2枚は上記凹凸及びコバ剥がれによる光源の乱れがあるとはいえ、レンズそのものは光学的には非常にクリアーな状態になっておりますのでその点はどうかご安心下さい。