Canon 100mm F3.5 L39マウント×3本 検査報告書

白濁しやすい傾向を持つ機種

この機種は、レンズ鏡胴内部に組み込まれている一部部位(レンズ)表面がカビの影響で、すりガラスの様に変質(傷んで)しまう傾向がある機種の一種です。全てのレンズが同じ様な症状になってしまう訳ではないのですが、この様な傾向を持った機種になります。Canon 100mm F3.5 L39マウントレンズの他にも、この様な傾向を持つレンズはありますが、何故この様な症状になってしまうのかは今のところ科学的には原因の断定はできていません。例えば、Canon 50mm F1.8(黒鏡胴)レンズも似た様な白濁症状になってしまう傾向があります。

メールお問い合わせ履歴
頂いたメール

ライカマウントのキャノン100ミリF3.5のクモリをクリーニングして頂きたいのですが、料金はどの位掛るでしょうか? 後群レンズが全体的に白く曇っています。絞りより前群はクリアーです。同じ症状のレンズを2本持っていますので、2本同時に依頼するのと、1本だけ依頼する場合の料金をお知らせ下さい。2本合わせて1万円以内でお願い出来れば助かります。

お返事メール

○○様
おはようございます。
お問い合わせありがとうございます。
レンズの白濁の原因が、光学系付着物でしたら除去処置にて課題が解決するケースはあります。整備費用に関しましては、過去の修理記録台帳を紐解きますと、5,000円くらいかかっております。2本ご所有との事ですが、10,000円以内におさえる事は可能と推測します。
実際に個体を初見後、お見積額提案させて頂いております。

一般社団法人 日本レンズ協会    代表理事 田斉健輔

頂いたメール

一般社団法人 日本レンズ協会    代表理事 田斉健輔 様
それでは、現物を2本お送りしますので、よろしくお願いいたします。この2本以外にも、オールドレンズを多数所有していますので、良いご縁に成ればと思います。

お返事メール

◯◯様
おはようございます。白濁の原因が、光学系付着物ではなくて、合成レンズ貼り合わせ面にて起きている現象の場合は、付着物ではないので、除去できません。その場合、検査報告費(一律)レンズ1本=2,000円(税込)掛かってしまいます。その事も、勘案して頂きまして、ご判断お願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会    代表理事 田斉健輔

頂いたメール

なるほど、バルサムの変性の可能性も想定しておく必要があると言う事ですね!この時代のキャノン100ミリはほとんど曇っていますが、田斉さんの経験上 バルサムに問題が有ったような事例は有りましたでしょうか?その危険性が高いのなら、お送りしても無駄になるだけですからね!多分、2本とも同じレンズ面が曇っていると思われますので、試しに1本だけみて頂く手は有りますね!

頂いたメール

本日、レンズを1本だけ宅急便で送らせて頂きました。明日の午後4時から6時の時間帯指定にしましたのでよろしくお願いいたします。

お返事メール

◯◯様
おはようございます。
レンズ発送の件承知致しました。 到着致しましたらその旨メールにてご連絡致します。 ご依頼品がこちらに到着順に順次開封・初見させて頂いております。順番になりまして、開封・初見後その検査結果をこちらからご連絡致します。 その内容は個別にメール若しくはお電話にてご報告させて頂いております。ご都合の良いお電話番号、時間帯等ございましたら予め教えておいて頂けますと幸いでございます。 ☎047-386-5353(協会固定)☎090-9829-0696(田斉携帯) お電話の場合はどちらかの番号にて着信が入ると思います。その節は宜しくお願い致します。 納期に関しましては概ね10日間くらいお時間を頂いております。 一般社団法人 日本レンズ協会   田斉

頂いたメール

昨日は直接電話を頂き、ありがとうございました。お話を伺っていると、田斉さんのいかにも誠実そうなお声と話し振りに大変信頼感のある方だと確信いたしました。電話でお話しした通り、そちらに送ったレンズのクリーニングは諦めて、別に旧式の100ミリF3.5をまとめて2本送りました。後部レンズにカビが発生していますが、磨りガラスのような症状より、クリーニングの成果が期待出来るような気がします。もちろん、カビの跡は残るでしょうが、撮影に支障のない程度になると思います。この2本をまとめて1万円以内でクリーニング出来れば有り難いと思いますので、ご検討をお願いいたします。明日の午前中にはお届け出来ると思います。修理終了後は3本まとめてお送り下さい。今後ともよろしくお願いいたします

①シリアルNO 89964

Canon 100mm F3.5 L39マウント 付属品
Canon 100mm F3.5 L39マウント 付属品
付属品前後キャップ、フイルター、専用ラバーケース
シリアルNO89964
納期10日間
検査報告費2,000円(税込)

解説

以前のメール及びお電話にてお伝え致しましたが、この機種特有の白濁の原因は、光学系付着物ではなくて、レンズ表面自体の傷みによるものです。これは鵜着物ではないので除去できません。カビの付着期間が長期化すると、腐蝕痕としてレンズ表面を傷付けてしまいます。この課題を解決する為には、遜色のない同規格部位交換を要しますが、該当部位の入手が困難なのが実情です。今回は、現状のまま検査報告段階にて納品させて頂きます。この様な見解に至りました事、ご了承お願い申し上げます。

作業工程参考写真

Canon 100mm F3.5 L39マウント 順番に検査
Canon 100mm F3.5 L39マウント 順番に検査
Canon 100mm F3.5 L39マウント 白濁
Canon 100mm F3.5 L39マウント 白濁
Canon 100mm F3.5 L39マウント 問題の中玉
Canon 100mm F3.5 L39マウント 問題の中玉

検査後の所感

レンズ鏡胴内部に組み込まれている一部部位が白濁していると、その白濁度合いにもよりますが、やはり実写に影響をもたらすケースが多いです。その原因が光学系付着物であれば、除去処置にて課題は解決します。でも。今回の様なケースの場合は、修理の範疇では処置が施せません。根本的な原因はカビの付着ですので、未試用期間が長期化した事が悔やまれます。カビの付着は、短期間であれば、腐蝕痕も残らないで、綺麗に復元しますので、所有しているレンズの放置だけは避けて頂く様お願い致します。

②シリアルNO 64981

Canon 100mm F3.5 L39マウントNO64981
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO64981
付属品フロントキャップ
シリアルNO64981
納期7日間
整備費用4,000円(税込)

作業工程参考写真

Canon 100mm F3.5 L39マウント 順番に検査
Canon 100mm F3.5 L39マウント 順番に検査
Canon 100mm F3.5 L39マウント カビと傷
Canon 100mm F3.5 L39マウント カビと傷
Canon 100mm F3.5 L39マウント カビと傷①
Canon 100mm F3.5 L39マウント カビと傷①
Canon 100mm F3.5 L39マウント カビと傷②
Canon 100mm F3.5 L39マウント カビと傷②
Canon 100mm F3.5 L39マウント 点カビ
Canon 100mm F3.5 L39マウント 点カビ
Canon 100mm F3.5 L39マウント 問題の中玉
Canon 100mm F3.5 L39マウント 問題の中玉

解説

結論から述べますと、相当にクリアーなレンズに復元しました。レンズ対物側から入ってきてカメラ本体に届く光の総量=光束(こうそく)は95%まで復元しています。只、謎なのですが、レンズ鏡胴内部に組み込まれている中玉表面に無数の擦れ傷があります。通常の撮影では、レンズ内部にアクセスする機会はないと思いますので、何故内部部位にこの様な傷が付いてしまったのかは不明です。この傷は実写には影響がないので、復元したF値=3.5本来の持ち味は体験できると思います。古い機種ですが、今後も未試用期間が長期化しない様にして大切にご所有下さい。

③シリアルNO 57114

Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114
付属品前後キャップ
シリアルNO57114
納期7日間
整備費用4,000円(税込)

作業工程参考写真

Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 順番に検査
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 順番に検査
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 雲状カビ
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 雲状カビ
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 全体の状態
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 全体の状態
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 点カビ
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 点カビ
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 点カビ①
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 点カビ①
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 点カビと雲状カビ
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 点カビと雲状カビ
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 問題の中玉
Canon 100mm F3.5 L39マウントNO57114 問題の中玉

解説

こちらのレンズも、結論から述べますと、相当に眩しいレンズに復元しました。レンズ対物側から入ってきてカメラ本体に届く光の総量=光束(こうそく)は90%まで復元しています。付着していた雲状カビが、付着期間が長かった為、腐蝕カビに成長していました。カビそのものは除去できていますが、除去後の腐蝕痕が残ります。該当レンズ部位中央と外周に2か所目視できると思います。レンズ全体が綺麗になった分この様な症状が目立ちます。このレンズも、今後未試用期間が長期化しない様に、カメラ本体に装着しなくても、暇な時に時々手に取っていじってあげて下さい。レンズ鏡胴内部に空気の流れが発生して、今後のカビの付着防止になります。今回お預かり致しました様な昔のオールドレンズを今でも愛用なさっている写真愛好家の方の為に、微力ですがメンテナンス面でお力になれれば幸いでございます。今まで同様大切にご所有下さい。

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。