レンズ修理工程コンテンツを公開する主旨
この教材に使用するレンズは、全て当協会に実際にメンテナンス依頼のあった実際の個体を使わせて頂き解説を加えております。従いまして、その内容を写真を見ながらじっくり再現すれば貴方が所有する同じ機種にも当てはまる様に構成されております。
自分のレンズと同機種なのかを先ずはよく確認して頂き、焦らずにじっくり取り組んで下さい。レンズ鏡胴内部の普段は滅多に触れる事のないガラス玉や絞り羽根に直接アクセスできる様になります。手順通り行えば、貴方のレンズは今後も末永くクリアーな状態で、良き撮影ライフのパートナーになってくれると思います。
古き良きレンズをメンテできる職人さんも私同様、だんだん高齢化なさっています。各メーカーさんも昔のレンズ程受け入れていないのが実情です。又、この種の修理を教える機関そのものが、日本には殆ど存在しないのも事実です。
このままですと世界中にある特に昔のレンズを修理できる人がいずれいなくなってしまいます。一般社団法人 日本レンズ協会は、この様な現状と今後の予測をもとに、レンズ修理事業と並行して教育分野の一環として、このレンズ修理の教科書をシリーズ化し、電子書籍の体系としての出版も並行して、コンテンツの配信を実行する事を第二の事業の柱にする事に致しました。
Canon 100mm F3.5 L39マウントというレンズ
この細長い機種は、大まかに二つの部位から構成されていて、この構造を理解していれば比較的簡単に光学系付着物除去は可能です。相当に昔のレンズですので、ほぼ全ての個体にレンズ表面の擦れ傷という課題を抱えています。傷が浅ければ、ポリッシング処置で済むのですが、研削を要する症状が殆どなのが実情です。でも、カビ等付着物除去は自宅でも可能ですので、是非定期的に整備して修理の範疇で状態を復元し、維持していって下さい。駆動系はとても丈夫な機種です。
第Ⅰ部
第一部ではこの個体の基本的な構造について解説します。構造を理解した上で具体的な処置を施して下さい。そして、各ガラス玉を取り外す工程に進みます。
基本的な構造を理解しよう
・この機種に限らず、似たような構造を持つレンズは沢山あります。
・鏡胴が大きく2つに分解できます。
・一つはフォーカス調整機構(A)と、もう一つは絞り羽根ユニット機構(B)です。
・そして、二つ目の機構内にすべてのレンズ群が組み込まれています。
この様に二つの鏡胴で構成されています
・この処置をするのに特に治具は必要ありません。
・両手で反時計周りに回転させます。
・動画も併せてご参照下さい。
・向かって左側が(A)にあたります。
・向かって右側が(B)に該当します。
(A)パーツから解説します
・この鏡胴内部にはガラス玉類は一切ありません。
・フォーカス調整機構だけが組み込まれています。
・フォーカス調整時のトルク感の課題等を解決します。
・動作系の処置方法は当教科書では触れていません。
・別途、お問い合わせ下さい。
(A)パーツ内部は空洞です
・今回の処置工程には関係ないので保管して下さい。
・分解した際の構造を覚えておいて下さい。
・作業台の整理整頓も留意して下さい。
(B)パーツに進みます
・この鏡胴内部の各ガラス玉にアクセスします。
・前玉×1枚、中玉×2枚、後ろ玉×1枚構成です。
・レンズ押さえリングが小さいので少し難しいです。
先ず、後ろ玉を外します
・治具は特に使用しません。
・写真の様に両手で反時計方向に回転させます。
・動画をもう一度見て下さい。
・比較的容易に外せます。
この様に二つに分解されます
・ポイントは【向き】です。
・段々外したパーツが増えてきます。
・順番も意識して下さい。
現在の作業台上の風景
・今現在はこの様な風景になっています。
・ご自身で工夫して向き、順番にルールを作って下さい。
次に、中玉を外します
・180°相対して切込みがあります。
・この部分を外します。
・ゴム治具を推奨します。
・固着時は、最初の回転だけ金属治具を使います。
この様なゴム治具を使用します
・中玉径と同じものだと外し易いです。
・カメラ量販店のメンテナンスコーナーにあります。
・セット商品で1,500円位です。
・ヨドバシカメラ
セット商品の中の一番小さい治具を使って下さい
・固着している場合は個別にお問い合わせ下さい。
・金属治具をヤスリで削って加工する必要があります。
・もし金属製治具を使用する際は最初の回転の切っ掛けのみです。
中玉押さえリングに当てがいます
・少し押さえ気味に反時計回りに回転させます。
・無理は禁物です。
・殆ど場合比較的容易に外れます。
中玉が外れました
・何度も繰り返しますが、向きと順番が大事です。
・ご自身で工夫して解り易く整頓します。
・この2点を疎かにすると、組立て時に混乱します。
現在の作業台上の風景
・今現在はこの様な風景になっています。
・ご自身で工夫して向き、順番にルールを作って下さい。
・この様に段々パーツが増えてきます。
・今回は難易度は★★☆☆☆ やや簡単ですの部類です。
鏡胴(B)内部はこの様になっています
・開放状態です。
・絞り羽根向こう側にもう一つの中玉が見えます。
・この後、このガラス玉表面をクリーニングします。
絞り時の状態です
・絞り羽根ユニット機構に課題がある際はこの時点で検査します。
・この教科書では、この動作系には言及していません。
・別途、お問い合わせ下さい。
第Ⅱ部
第二部では取り外したガラス玉の処置と必要な治具について解説します。
クリーニング専用ペーパー
・レンズの洗浄には専用ペーパーを使って下さい。
・推奨は【dusperΣ】です。
・チョット高価ですが是非【ダスパー】を購入して下さい。
・一枚一枚が大きいので四分の一にカットして使って下さい。
・同じくカメラ量販店のメンテナンスコーナーで扱っています。
・入手先:カメラ量販店
・価格目安:1,500円前後
・ヨドバシカメラ
かなり大きいので一枚全部を使うのは勿体ないです
・ポイントはレンズの中央から外側に向かって拭きます。
・円を描くようになるべく均等な力で拭きます。
・あまりもたもたしないでササット拭き取るのがポイントです。
四分の一サイズがベストです
・もしかしたら小さいサイズの規格商品が市販されているかもしれません。
・ハサミでカットして下さい。
・1クリーニング=1枚を使用します。
・同じペーパーを何度も使い回ししない事。
・使用後のペーパーは鏡胴外観等の拭き取りに使います。
カットしたダスパーを木製のトングに巻き付けます
・上手く巻きつけができない時はセロテープを使ってださい。
・その際はなるべく根本にテープを巻きます。
・金属製のピンセットは使用禁止です。
・レンズを傷付ける恐れがあります。
ハンドラップの先端をプッシュします
・必要分が出てきます。
・高価なのでほんの少しで充分です。
・沢山使えば綺麗になるという訳ではありません。
ハンドラップとレンズ専用クリーニング溶剤
・当協会ではカビが除去しやすく、拭きムラが残り難い専用溶剤を使っています。
・一般の方はカメラ量販店等で扱っているレンズクリーニング溶剤で十分です。
・それでもかなり高価ですから、無駄なく使って下さい。
・沢山使用すればよいと言うものでもありません。
・カメラ量販店のメンテナンスコーナーで扱っています。
・入手先:カメラ量販店
・価格目安:3,000円前後(300ml)
・ヨドバシカメラ
・保管容器のお勧めは【ハンドラップ】です。
・蒸発も防止できて必要分をプッシュして使えます。
・片手で必要量が出てくるのでとても重宝します。
・入手先:東急ハンズ等
・価格目安:2,000円前後(材質・サイズによります)
・東急ハンズ
それでは、レンズのクリーニング処置を施します
・最初に、B)鏡胴内部の中玉表面を洗浄します。
・絞り羽根向こう側のガラス玉です。
・必ず絞りを開放にして下さい。
・絞り羽根はとても繊細です。
・触れない様に細心の注意を払って下さい。
次に、取り出した中玉の裏面を洗浄します
・中心から円を描くように外周に向かいます。
・溶剤はほんの少しで大丈夫です。
・沢山使う程綺麗になる訳ではありません。
取り出した中玉の表面を洗浄します
・要領は一緒です。
・最初は上手くいかないかもしれません。
・慣れてくると段々上手になります。
レンズの実態
・この様に殆どのレンズが付着物があります。
・一枚一枚その実情を検査します。
・必要な処置を施して下さい。
・レンズがクリアーになった時の達成感も味わって下さい。
次に、後ろ玉の裏面をクリーニングします
・使用する洗浄専用紙の使い回しは禁止です。
・勿体ないという気持ちは捨てて下さい。
・再使用紙では綺麗になりません。
最後に、後ろ玉の表面を洗浄します
・これで具体的な処置は全て終了です。
・使い終わった紙は捨てずに保管します。
・レンズ以外の部分の拭き取りに使えます。
お疲れ様でした
・気を抜かずに集中して組み立てます。
・順番と向きは大丈夫ですか?
・焦らずに確実に処置して下さい。
付属品と確認
・フィルター等、付属品を確認します。
・折角、クリアーに復元したレンズです。
・適切な場所で大切に保管しましょう。
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初心者でも出来る!カメラレンズ修理の教科書Vol.019 Canon 100mm F3.5 L39マウント篇 Kindle版
自分のレンズは自分でメンテ! 本書はCanon 100mm F3.5 L39マウント篇 Kindle版のレンズメンテナンスをご自宅で行うための教科書です。レンズの修理、カメラレンズのカビ、オーバーホール、分解、清掃等にお悩みの方はぜひお読みください!本書に使用するレンズは、全て当協会に実際にメンテナンス依頼があった実際の個体を使わせて頂き解説を加えております。従いまして、その内容は写真を見ながらじっくり再現すれば、あなたが所有する同じ機種にも当てはまる様に構成されております。自分のレンズと同機種なのかをまずはよく確認して頂き、焦らずにじっくり取り組んで下さい。古き良きレンズをメンテできる職人さんも私同様、だんだん高齢化になっています。各メーカーさんも昔のレンズ程受け入れていないのが実情です。また、この種の修理を教える機関そのものが、日本には殆ど存在しないのも事実です。このままですと、いずれ世界中にある昔のレンズを修理できる人がいなくなってしまいます。一般社団法人 日本レンズ協会は、この様な現状と今後の予測をもとに、レンズ修理事業と並行し、教育分野に取り組んでいます。その一環として、本書『カメラレンズ修理の教科書』をシリーズ化してまいります。本書では、プロが実際に作業している風景を、写真と動画にて解説を加えている構成をとっています。従いまして、じっくりこの教科書に向き合って頂ければ、プロが行うのと同じ様な結果が得られる構成になっております。ぜひ本書をお読みになり、ご自宅でできるレンズメンテナンスをマスターしてください。
著者プロフィール
田斉健輔(タサイ・ケンスケ)
一般社団法人日本レンズ協会代表理事。光学研究所所長。
1960年、生まれ。祖父がライカカメラのレンズ職人だった為、幼少の頃からカメラレンズに慣れ親しむ。東京学芸大学を中退後、自衛隊に入隊。その後、大手外食企業の東日本統括部長に就任。2004年、カメラレンズのメンテナンス・修理の事業を興す。2011年、一般社団法人日本レンズ協会設立。今後、カメラレンズ修理の専門学校設立を構想している。ミッションは、日本の古き良きカメラレンズを、良い状態で後世に残していくこと。