Canon 50mm F1.5 L39マウントモデルレンズは、Canonのレンジファインダーバルナック型フイルムカメラ時代に活躍した標準レンズの仲間になります。 Canon 50mm F1.8 L39マウントモデルや、Canon 50mm F1.2 L39マウントモデル等が生産され、今でも愛用されておられる写真家の方は大勢いらっしゃいます。人様の大切なレンズをお預かりしている立場から感じるのですが、今回お預かり致しました機種は、もしかしたら製造本数自体が少なかったのか、他の機種と比べると、修理依頼の件数が少ない様に感じます。
Canonレンジファインダーバルナック型フイルムカメラ
技術サポートを受講している生徒さんに、昔頼まれて、 Canonレンジファインダーバルナック型フイルムカメラに関して、結構詳しく研究したことがあります。色々な機種を購入して、構造の違いや、各種ダイヤル・レバー・ボタンの役割について調べました。機種は、概ね36種類製造・販売されていた様ですが、流石に全ての機種を入手する事はできませんでした。
当時、生徒さんと協力して作ったコンテンツがありますので、興味がある方は下記バナーから学習して下さい。情報収集の一助になれば幸いでございます。
Canon 50mm F1.8 L39マウントレンズ
時々、お問い合わせを頂きますので、この機会にCanon 50mm F1.8 L39マウントレンズに関して、修理の分野での特徴に関して解説しておきます。今同機種を所有されている方や、これから入手しようと思っている方はご参照下さい。
黒鏡胴モデル
このタイプのモデルは、レンズ鏡胴内部に組み込まれている中玉合成レンズが、擦りガラス状態になっている個体が散見されます。合成レンズの貼り合わせ面ではなくて、硝子部位表面が白濁してしまっているケースが多いです。
この写真の様な症状は、原因が光学系付着物ではないので、クリアーな硝子部位に復元する事はできません。こういう観点から、 黒鏡胴モデルの入手は状態を確認してから入手される事を推奨致します。
銀鏡胴モデル
このタイプのモデルは、白濁していてもその原因がカビの付着のケースが多いです。主に点カビと雲状カビなのですが、この付着物を除去すれば、クリアーなレンズに蘇ります。
なので、これから新しくCanon 50mm F1.8 L39マウントレンズ の入手を考えている方は、銀鏡胴モデルをご検討する事をお勧め致します。尚、今回お預かり致しましたCanon 50mm F1.5 L39マウントモデルも、レンズ鏡胴内部に組み込まれている一部の硝子部位表面が白濁している個体が散見されます。今回お預かり致しました Canon 50mm F1.5 L39マウントレンズは、白濁の原因がカビの付着でしたので、除去処置を施して、クリアーな個体に復元しました。
3機種の構造上の比較
上記、解説を踏まえまして、フォーカルプレーンシャッター式バルナック・ライカ型フイルムカメラ用交換レンズの内、3機種を構造上の視点で比較してみます。
モデルタイプ | 硝子構造 | 白濁原因 | 購入リスク |
Canon 50mm F1.5 L39モデル | 3群7枚のゾナー型 | 合成レンズ貼り合わせ面のケースが多い | 高い |
Canon 50mm F1.8 L39黒鏡胴モデル | 4群6枚のガウス型 | 硝子素材そのもののケースが多い | 高い |
Canon 50mm F1.8 L39銀鏡胴モデル | 4群6枚のガウス型 | カビ等付着物のケースが多い | 低い |
この様な背景を持つ機種ですので、今回お預かり致しました、 Canon 50mm F1.5 L39モデルのレンズの白濁現象が、クリアーに復元した事は、稀な部類に入ると感じております。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様からのメール
前々から欲しかった、 Canon 50mm F1.5 L39というレンズをオークションで購入しました。出品者の説明通り、届いてみるとレンズが真っ白に曇っていました。友人に協会さんの事を聞いてメールしたのですが、こういう症状は直るものなのでしょうか?もし可能な様でしたら、修理をお願い致します。
こちらからのお返事は、上記解説と同じ文面でメールにて返信させて頂きました。 Canon 50mm F1.5 L39というレンズは、そもそも修理依頼件数が、他機種モデルと比較すると少なく、解説の為の資料も豊富ではないのですが、白濁の原因が、合成レンズ貼り合わせ面に使用されている、天然樹脂素材流動性粘着物の可能性が高いので、その場合は、具体的な処置が施せず、現状のまま納品せざるを得ない事をお伝え致しました。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Canon 50mm F1.5 付属品 |
シリアルNO | 12847 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | レンズの白濁 |
ご希望予算 | 15,000円(税込)くらい |
整備報告
お電話にてもお伝え致しましたが、今回お預かり致しました個体の白濁の原因は、合成レンズ貼り合わせ面に使用されていた、天然樹脂素材流動性粘着物=カナダバルサムではありませんでした。主な原因は、硝子部位表面に付着していたカビでした。カビの主な種類は、点カビと雲状カビでした。レンズ鏡胴内部全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去処置施しましたので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しております。外観・駆動系共にとても状態の良いレンズです。これからの撮影の友として、大切にご所有下さい。又、懸念されていた絞り羽の駆動に関しましても問題ございませんので、安心して実写なさって下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 12,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 青森県(一律)=1,040円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 13,040円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔