Carl Zeiss Jena Dekarem 10×50 修理記録

Carl Zeiss Dekarem 10×50

Dekarem=デカレムは、Carl Zeiss Jena社が設計・製造した10倍機の双眼鏡です。この様な双眼鏡に関しましては、時々光軸の狂いの調整依頼があるのですが、そういうケースの場合は、対物側偏心リングで微調整を行います。カビ等光学系付着物除去の場合は、鏡胴内部の奥に組み込まれているプリズムも処置する事になるので、一度内部にアクセスした個体は、このプリズムの位置決めから光軸調整を行う必要がでてきます。

Carl Zeiss Dekarem 10×50 プリズム
Carl Zeiss Dekarem 10×50 プリズム

その後、偏心リングで光軸の微調整をする手順になります。当協会が積極的には双眼鏡の修理をお受けしていない理由のひとつが、このプリズムの位置決め作業にあります。個人的な見解なのですが、このプリズムの再位置決めは非常に難しく、数ミリ以下の単位でも像が大きく傾いたり、大きく変化してしまいます。そして、全ての作業を終えて再組み立て後フォーカスリングの0位置を無限遠に調整し、再度光軸の微調整を行うという極めてデリケートでシビアな作業なので、視力も手先の作業的厳密さを考えると、今後はお受けしない方向で考えております。単眼鏡や天体望遠鏡は引き続きご依頼はお受けする予定ですが、双眼鏡に関しましては今回が最後のお預かりとさせて頂きたいと思っております。

Carl Zeiss Dekarem 10×50 処置後
Carl Zeiss Dekarem 10×50 処置後=綺麗に復元しました

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂いたメール

いつもお世話になります。今回は双眼鏡のご相談です。それまでは低倍率のコンパクト機を好んで使っていたのですが、最大口径50mm+広角10倍スペックに惹かれて昔入手したのがデカレムでした。全て私が悪いのですが、久々に取り出してみたところ、悲惨な状態になっていました。最新のコーティングは白さが際立つように設計されている様ですが、デカレムの昔風の黄色みを帯びた像が何とも味があっていいんです。今まで色んな双眼鏡を購入してきましたが、今後の旅の友はこの双眼鏡と決めています。協会さんが双眼鏡はもうやらないとおっしゃっていた事は承知していますが、何とかお願いできないでしょうか?お受けしてもらえるのでしたら、いつもの様に作業場までお持ち致します。

今回最後にお預かり致しました機種

Carl Zeiss Dekarem 10 × 50 Repair Record
Carl Zeiss Jena Dekarem 10×50
機種名Carl Zeiss Jena Dekarem 10×50
シリアルNO5064329
付属品ソフトケース
課題(所有者さん見解)カビの除去
ご希望予算特にナシ

整備報告

結論から申し上げますと、とても綺麗な個体に復元しました。再組立後の光学系数値に関しましても、事前に了解して頂いた範囲ですが問題ないと思います。お電話にてもご報告致しましたが、以下少し長くなりますがご一読下さい。先ず、接眼レンズL・R対象物の見え方調整機構グリップカバーが経年劣化しています。

通常はゴムラバー調整ダイヤルにてその見え方を微調整するのですが、螺旋状部保護カバーのグリップ力が弱く、動きがその螺旋状部可動域にほんの少ししか連動しません。ご所有者様の一番良い見え方に、一度カバーを外して直接螺旋状金属部を指で挟んで調整して頂きますと、その後は同じ視界で問題なく使えますので、納品後一度だけこの処置を行って下さい。私の見え方と若干違いがあると思いますので、ご協力お願い致します。その際、塗られているグリースで指がべとつきますのでご注意下さい。

光学系カビ等の付着物ですが、ご来所時に一緒に確認して頂いた、R側コーティング加工されているプリズム近くの中玉表面の大きめの菌糸状カビも無事除去できました。除去処置に伴うコーティング剥がれもありません。又、プリズム腐食が進行していて、白濁現象が起きていましたが、この硝子部位も綺麗に復元しました。

Carl Zeiss Dekarem 10×50 接眼硝子部位
Carl Zeiss Dekarem 10×50 対物硝子部位

その他の硝子部位表面に付着していた、埃・カビ全て除去しました。光学機器としてのクリアー度はかなり復元したものと感じております。尚、カビそのものは除去できておりますが、除去後の腐食痕が若干ですが残ります。特に、雲状カビの腐食痕は薄っすらとですが白濁して見えると思います。この様な諸々の症状、併せてご了承お願い致します。

処置前ガラス部位の状態

Carl Zeiss Dekarem 10×50 接眼レンズカビ付着状態・L側
Carl Zeiss Dekarem 10×50 接眼レンズカビ付着状態・L側
Carl Zeiss Dekarem 10×50 接眼レンズカビ付着状態・R側
Carl Zeiss Dekarem 10×50 接眼レンズカビ付着状態・R側
Carl Zeiss Dekarem 10×50  対物レンズカビ付着状態・L側
Carl Zeiss Dekarem 10×50  対物レンズカビ付着状態・L側
Carl Zeiss Dekarem 10×50 対物レンズカビ付着状態・R側
Carl Zeiss Dekarem 10×50 対物レンズカビ付着状態・R側

防カビ処置

今回の処置にて、 UV-C波殺菌灯による防カビ処置も施してはおりますが、未試用期間が長期化しますと再発してしまいます。今後の保管等十分ご留意お願い致します。 保湿庫なるものは、一定の湿度は保ってくれますが万能ではありません。やはり、頻繁に使ってもらうのが再発防止には最善です。

UV-C波 殺菌灯
UV-C波 殺菌灯

UV-C波

UV-Cは100〜280nmの短波長紫外線で、通常はオゾン層により地表には到達しません。このUV-Cがウィルスや菌の不活化及び滅菌に効果があることは既に知られてきています。

装置内に室内空気を取り込み、内部で不活化滅菌処理された清浄な空気を排出する安全構造の装置は、かなり高価になりますが、 UV-Cランプだけを使った、比較的入手しやすいモデルもあります。でも、そこまで気にする必要はありません。今までお電話でもお話し致しましたが、とにかく頻繁に使ってもらうのが再発防止には最善です。

納品に関しまして

双眼鏡の整備は今回を持ちまして最後とさせて頂きます事どうかご了承お願い申し上げます。

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ発払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費28,000円(税込)
クロネコさん送料千葉県(一律)=930円(税込)
決済方法銀行振り込み
合計28,930円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。