Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 修理記録

Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8

JenaとDDRの意味合い

レンズ銘柄表示板に刻印されているDDRとはDeutsche Demokratische Republikの略で、旧東ドイツの正式名称になります。Carl Zeiss Jenaという銘柄表示は、Carl Zeissが創業者の人名で、Jenaは創業地名という意味合いになります。Carl Friedrich Zeiss=カール・フリードリッヒ・ツァイス氏が、ドイツのテューリンゲン州の都市イエーナ=Jenaで、顕微鏡の工房を創設した事が始まりとされ、それを企業体の名称としたのがCarl Zeiss Jenaになります。

Carl Zeiss社の歴史的背景

第二次世界大戦がドイツをはじめとする枢軸国側の敗戦という形で終結し、やがてベルリン同様、ドイツ国においても東西分断が始まります。当時に於いても世界最高水準の技術を誇っていたCarl Zeiss社は、ドイツという国家同様に西側のZeissと東側のZeissに分断される事となりました。西側諸国では西側のZeissがCarl Zeissを、東側のZeissがCarl Zeiss Jenaを名乗るという形で決着が図られる結果となりました。

ドイツ国旗

1989年のベルリンの壁崩壊以降、ドイツは再統一の方向へ向かいます。Zeiss自体も統一への歩みを進めましたが、この時点でのCarl Zeiss Jenaは経営企業体としては実質的に崩壊していて、統一というより吸収といった形でCarl Zeissに合流し、企業体としてのCarl Zeiss Jenaの名称にはピリオドが打たれましたが、 Carl Zeiss社のレンズは、現代でも写真家の間で大切に愛用・所有され続けています。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂いたメール

初めてメールします。地元の写真倶楽部の友人から聞きました。その友人から安く譲ってもらったレンズがあるのですが、カビがひどく、絞り羽が開放のまま出てきません。この様な症状は修理可能なものなのでしょうか?もしも、何とかなる様でしたら、是非修理して欲しくお問い合わせ致しました。レンズはCarl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8という機種で、Carl Zeissという機種を入手したのは初めてになります。ご検討下さい。

こちらからのお返事

カビの様な光学系付着物は、基本的には除去可能です。只、レンズ鏡胴内部への必要なアクセスの途中で、関連金属部位が固着していたり、その個体特有の何だかの原因で、順調にアクセスが進まないケースも稀にございます。又、カビそのものは除去できたとしても、その付着期間が長期化していた場合、除去後の腐食痕が残ってしまうケースはございます。又、絞り羽ユニット機構等、駆動系部位の支障に関しましては、その原因がフォーカス調整機構螺旋状部グリス落ちの場合は、油分を含む汚れの除去処置にて課題が解決するケースはあります。

今回お預かり致しました機種

Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 付属品
Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 付属品
機種名Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8
シリアルNO10423472
付属品フロントキャップ
課題(所有者さん見解)絞り羽根が開放のまま、カビの付着。
ご希望予算特になし

この機種の構造的な特徴

Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8というレンズは、対物側に大きくて重いレンズユニットが組み込まれています。このユニットにカビが付着しやすい傾向にあり、ユニット内の複数枚のガラス部位をクリーニングする処置で、付着物は辞去できます。

Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 レンズユニット
Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 レンズユニット

光学系付着物

レンズ鏡胴内部に組み込まれている全てのガラス部位に付着していたカビ・埃除去処置施しましたので、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。カビの主な種類は、点カビと雲状カビでした。カビ除去後の腐食痕も少なく、復元状態は良好と判断致します。スカッと抜ける様な眩しい個体に復元しております。

処置前付着物写真一例

Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 雲状カビと点カビ
Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 雲状カビと点カビ
Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 雲状カビと無数の点カビ
Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 雲状カビと無数の点カビ

レンズ鏡胴内部の全てのカビの胞子を除去するのは難しいので、納品後未使用期間が長期化しますと、再びカビが再発生してしまいます。レンズ単体を時々手に取って頂き、レンズ鏡胴内部に空気の流れを作ってあげる等してあげて、再発防止にご協力お願い致します。

絞り羽ユニット機構

絞り羽フィルムが開放のまま、絞り羽ユニットBOXに収納されたままの状態で固着していた主な原因は、フォーカス調整機構螺旋状部グリスが汚れを巻き込みながら付着していたのが原因でした。この油分を含む汚れを除去しましたので、その駆動は復元しております。最小絞り値から開放まで全領域にてスムースに駆動しております。

Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 開放時
Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 開放時
Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 絞り時
Carl Zeiss Jena DDR 120mm F2.8 絞り時

この様な症状に至るレンズは、今後も似たような症状になってしまう可能性があります。もしもそのような場合は、無償で再整備いたしますので、この点はご安心下さい。レンズ保管時の向きに関しましては、お電話にてお伝え致しました方法でお願い致します。今回の処置にて、駆動系・光学系共に状態の良いレンズに蘇りました。今まで同様今後も大切にご所有下さい。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ発払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費15,000円(税込)
クロネコさん送料神奈川県(一律)=930円(税込)
決済方法銀行振り込み
合計15,930円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。