Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 修理記録

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8というレンズは、1981年に発売されたレンジファンダーカメラ・ミノルタCLEの登場に合わせて販売された、ライカMマウントの広角レンズで、ミノルタ独自の開発で、ロッコールレンズの仲間になります。

レンジファインダー用の交換レンズは、広角になるほど相場価格が高くなる傾向にありますが、この機種は、何故か現在でも市場価格は、ライカMマウントの広角レンズとしては、そんなに高額ではない様に見受けられますので、比較的入手しやすい機種の一種の様です。

只、入手に際して注意してほしいのは、かなりの割合で、水滴の様なブツブツ現象が散見されるという事です。

合成レンズの一般的な症状

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 問題の合成レンズユニットのブツブツ
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 問題の合成レンズユニットのブツブツ

普通、合成レンズといえば、2枚のガラス部位をカナダバルサムで接着加工した最小ユニット部位を指すのですが、この機種の場合は、3枚のガラス部位がそれぞれ空間を開けて接着加工されている構造になります。

問題のレンズユニット

この様な形状をしているレンズユニットになります。何故、販売後にこのユニットを整備できない構造にしたのかに関しましては、当時の開発担当者に聞いてみないと判明しませんが、このレンズユニットはこれ以上ユニット内部にアクセスできません。

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 合成レンズ
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 合成レンズ

アクセスできないので、推測の域をでませんが、水滴の様な付着物は点カビの集合体と診断しています。今回お預かり致しましたレンズは、この点カビの付着密度が高く、レンズ鏡胴内部を光源に翳して目視すると、ガラス部位全体が白濁した症状に目視できます。

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 白濁
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 白濁

この症状は、2枚のガラス部位を接着剤で張り合わせた際に使用したカナダバルサム自体の劣化とよく似ていますが、密度の高い点カビの集合体か、若しくは雲状カビの付着が原因と診断致します。

その他レンズ鏡胴内部に組み込まれているガラス部位の付着物

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 点カビ
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 点カビと擦れ傷

上記写真の様に、レンズユニット以外のガラス部位には、点カビの付着が確認できました。勿論、この付着物の除去処置は順調に進みましたので、付着物を除去できた分、レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。只、合成レンズの白濁の影響が大きいので、このガラス部位の付着物除去処置が、課題解決の為の有効な処置となったとは判断できません。

コバ剥がれも進行しています

一定の厚みを持つガラス部位のコバ部位は、そこからの光の流失を避ける為に和墨(わぼく)が塗られているのですが、この和墨が乾燥して、コバ剥がれという症状になってしまっています。

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 コバ剥がれ
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 コバ剥がれ

上記写真の様に、外周に白いブツブツが目視できると思うのですが、この症状をコバ剥がれと呼んでいます。この白い部分から光が逃げてしまうので、この機種本来の機能を発揮する為には、通常は墨を塗り直す処置を施します。でも、このガラス部位単体にもアクセスできませんので、必要な処置が施せません。

順番に検査

今回検査及び可能な処置を施しました全体像の写真を念の為に添付しておきます。

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 順番に検査
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 順番に検査

この写真は、レンズ対物側からアクセスした際の写真になります。この機種は、レンズマウント側からのアクセスも可能なのですが、課題解決には、リヤ側からのアクセスは必要なかったので、今回は対物側からのアクセスになります。

レンズ鏡胴内部写真

外観及び駆動系機構はややがたつきはありますが、特に気になる大きな問題はなく、状態は良い個体と診断致しました。がたつきの原因は、関連金属部位の摩耗ですので、この課題を解決する為には、遜色のない同規格部位の入手が必要になります。

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 開放時
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 開放時
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 絞り時
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 絞り時

総合的な見解

以上、様々な角度から解説してきましたが、でき得る処置を施しました結果と致しましては、クリアーな個体に復元する事はできませんでした。これ以上白濁の状態を悪化させない為には、なるべく頻繁に使って頂き、未使用期間の長期化を避けて頂くのが最善と判断致します。メールのやり取りにて、解説させて頂きましたが、この様な結果に至ってしまった事、ご了承お願い申し上げます。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂きましたメール

【M-ROKKOR 28MM クモリ除去】
ヤフオクでクモリがあることを承知の上入手した個体ですが、もう少しすっきりした写真が撮れないものかと思っております。現物を確認いただいての判断となると思いますが、ヘリコイドの微調整(ややガタがある感じ、グリスアップ要?)を含め2万円程度の予算でお願いできればと考えております。なお、通常はSONY・R7Ⅱでの使用を想定しております。以上、宜しくお願い致します。

こちらからのお返事

1、曇りに関しまして

曇りの主な原因が、カビ等光学系付着物でしたら除去処置にて支障が緩和するケースはございます。

2、フォーカス調整機構ガタツキに関しまして

駆動系のガタツキに関しましては関連螺旋状部金属部位に原因があるケースが殆どですので、再グリスUP処置では補えないと推測致します。今回お問い合わせ頂きました個体と同機種と思われる過去の修理記録台帳の一部紐解きましたので宜しければご参照下さい。

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 修理記録①

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 修理記録②

いずれに致しましても依頼者様の大切な光学機器です。業者さんの選定等々、充分にご検討下さい。

ご依頼者様から頂きましたメール

田斉様、早速にご連絡いただきありがとうございます。お送りいただいた修理記録をHP上で拝見し、似たような状況ではないかと判断し、ご相談させていただきました。がたつきの件は多少気になる程度ですので、必須ではございません。クモリの解消をお願いできればと思いますが、ヤマト便でお送りすれば宜しいでしょうか?宜しくご教示ください。

こちらからのお返事

実際に初見させて頂いた上で具体的な処置が有効かどうか判断させて頂きたいと思います。

今回お預かり致しました機種

Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 付属品
Minolta M-Rokkor 28mm F2.8 付属品
機種名Minolta M-Rokkor 28mm F2.8
シリアルNO1025386
付属品前後キャップ、フイルター、フード
課題(所有者さん見解)白濁とがたつき
ご希望予算20,000円くらい

納品に関しまして

※今回は課題解決の為の根本的な処置には至っておりませんので、整備費等は一切発生しません。送料のみご負担下さい。

発送方法クロネコ着払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費0円(税込)
クロネコさん送料着払い扱いで発送致します
決済方法特になし
合計0円
お願い未使用期間が長期化しない様ご留意下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

ご依頼者様から頂いたメール

お礼のメール

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。