Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 修理記録

Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 2006547

Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2というモデルは、当協会で毎月複数本修理ご依頼を受けていることからも、写真家の方にとって人気がある機種なのではないかと想像しております。私は写真家ではないので、このレンズの良さ等言及できませんが、500gくらいの重量があり、ずっしりと重みを感じる、大口径の明るいオールドレンズの仲間に入ります。 修理の世界からこのモデルを解説しますと、カビの様な光学系付着物と、絞り羽ユニット機構に問題を抱えている個体が多いのは事実になります。この二つの課題を解決できれば、この機種は今後も撮影の良き友として活躍してくれるでしょうから、整備後は未使用期間が長期化しない様に留意して頂き大切に所有して欲しいと思います。

絞り羽ユニット機構の支障

一般的には、絞り羽が開放のまま動かなくなってしまう症状が散見されます。絞り羽調整ダイヤルを回しても、開放状態のまま絞り羽フイルムにその駆動の指示が伝わらない状態になります。殆どのレンズは、この絞り羽ユニット機構にスプリングが組み込まれているのですが、このバネは絞る方向に常時働いています。このスプリングの力よりも固着の状態が強くなると、絞り羽フイルムがユニットBOXに収納された状態で固着してしまいます。その主な原因は、油分を含む汚れの付着です。なので、この汚れを除去すれば、絞り羽の駆動は復元するケースが多いです。

レンズ鏡胴内部に組み込まれた二つの駆動系機構

単焦点レンズには、絞り羽ユニット機構と、フォーカス調整機構という二つの駆動系機構が組み込まれています。絞り羽ユニット機構は乾いた状態を好み、反対にフォーカス調整機構は濡れた状態を好みます。フォーカス調整機構螺旋状部にはグリスが塗られているのですが、このグリスが絞り羽ユニット機構に流れ落ちてしまう傾向の個体があります。この様な傾向を持つレンズは、油分を含んだ汚れが絞り羽ユニット機構に付着して、その汚れがある一定量に達すると絞り羽が開放状態で固着してしまいます。中盤レンズの様に、フォーカス調整機構がカメラ本体側に組み込まれている機種は、この様な症状は起き得ません。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂いたメール

初めまして。念願の鷹の目レンズ、MINOLTA MCロッコール PG58mm前記型のレンズを、某オークションにて手に入れたのですが、到着して確認すると、絞り羽が動かず、ガッカリ…また、よく見るとレンズ内にも小さなカビらしきものがあり、愕然としました。今後末永く使用したいと、思い切って購入したレンズなので、レンズ協会様にて何とかレンズ清掃と絞り羽の修理、オーバーホールは可能でしょうか。今のところ修理予算として考えている金額は15000円位であります。ご返答、お待ち申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

こちらからのお返事

絞り羽ユニット機構の支障に関しましてはこちらで処置を施し、駆動が復元してもその後似た様な症状になってしまう危惧を孕んでおります。カビの様な光学系付着物に関しましては除去は可能と推測致します。整備費用に関しましてはご依頼者様のご要望内にてお預かり可能でございます。いずれに致しましても、ご依頼者様の大切な光学機器です。業者さんの選定等々、充分にご検討下さい。

今回お預かり致しました機種

Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 付属品
Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 付属品
機種名Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2
シリアルNO2006547
付属品前後キャップ、フイルター
課題(所有者さん見解)絞り羽根の固着とカビ
ご希望予算15,000円くらい

整備報告

光学系付着物除去に関しましては、レンズ鏡胴内部に組み込まれている、全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去処置施しましたので、光学的なクリアー度は復元しております。付着していたカビの種類は主に点カビでした。カビ除去後の腐食痕も少なく、復元状態は良好と判断致します。スカッと抜ける様なレンズに蘇っております。

付着物除去前写真

Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 点カビと埃
Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 点カビと埃
Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 点カビ
Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 点カビ

駆動系整備報告

絞り羽ユニット機構に付着していた油分を含む汚れ除去処置施しましたので、その動きは復元しております。開放から絞り最小値まで全領域にてスムースに駆動しております。お問い合せ段階のメールにてもお伝え致しましたが、この様な症状になってしまう個体は、整備後も時間の経過に伴い、再度似た様な症状になってしまう傾向があります。なので、今回の処置がいつまで保たれるかにつきましての安定度に関しましては補償できません。この点ご了承お願い申し上げます。

Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 開放時
Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 開放時
Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 絞り時
Minolta MC Rokkor-PG 58mm F1.2 絞り時

上記向かって右側の写真を見て頂くと分かりやすいのですが、このモデルの絞り羽フイルムは、菊花型絞り羽という形状でできていて、この形状の絞り羽は固着しやすい傾向を持ちます。整備後、二日間様子を見ましたが、その駆動に問題は感じられませんでしたので、納品させて頂きたいと思います。今回の処置で、光学系も駆動系も改善されましたので、外観ともにとても状態の良いレンズに復元しました。未使用期間が長期化しない様ご留意頂きまして、今後も大切にご所有下さい。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ着払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費15,000円(税込)
送料着払い扱いにて送付致します。
決済方法銀行振り込み
合計15,000円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。