Nippon Kogaku Nikkor-S Auto 50mm F1.4という機種が世にデビューする前に、1960年に発売されたNipponKogaku Nikkor-S Auto 5.8cm F1.4という機種が存在しました。5.8cm=58mmという標準からやや逸脱した焦点距離で、カメラメーカーとして後発組のNikonにとって、他社への優位性を示すためには、50mmの標準レンズを実現する事が至上命題でした。この50mmへの強いこだわりから誕生したレンズが、今回お預かり致しました機種になります。その完成には3年もの歳月を要したといいます。
懇意にしている写真家の方に聞くと、標準レンズの歴史を語る上でも、一本は手元に置いておきたい銘柄のモデルだそうです。50年以上前のモデルですが、現在は比較的安価に入手できるので、程度のいい個体を常に探している写真家も多く、また既に私有している人は、勿論大事にしてるといいます。
修理の立場からこのレンズを見る時、カビの様な光学系付着物は勿論、駆動系では、フォーカス調整機構のトルク感がスカスカか、反対に固く固着してしまっている個体が散見されます。絞り羽ユニット機構が解放のまま動かない個体もあり、今回のご依頼内容の様に、その課題解決の為の整備をお願いされることもしばしばです。こういう時代背景と、構造特性を持つレンズを今回はお預かり致しました。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたお問い合わせメール
初めてメールします。オールドレンズ初心者ですが、友人から薦められて、Nikkor-S Auto 50mm F1.4というレンズを購入しました。家に帰って触っていると、どうやら絞り羽が動きません。開きっぱなしのままの状態です。また、レンズを覗くと、カビの様なものが見えます。この様な状態のレンズですが、修理をお願いできますでしょうか?又、10,000円以下で購入したので、それくらいの予算で大丈夫でしょうか?直る様でしたら、今後も大切に使っていこうと思っております。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Nippon Kogaku Nikkor-S Auto 50mm F1.4 |
シリアルNO | 332622 |
付属品 | 前後キャップ、フイルター |
課題(所有者さん見解) | 絞り羽根が開放のまま絞りリングを回しても動きません。 |
ご希望予算 | 10,000円以下 |
整備報告
フォーカス調整機構トルク感に関しましては、若干重さを感じますがこの年代の個体と致しましては状態はそんなに懸念する必要はないと判断致します。この感覚は人により嗜好が異なりますので判断は難しいものがございます。この点ご了承下さい。絞り羽ユニット機構固着に関しましては、関連駆動系部位付着していた、油分を含む汚れ除去処置施しました。その動作は復元していますが若干安定感に欠けます。
一晩置いて様子を見ましたが、再度動作が緩慢になる可能性があります。そういう傾向が強い個体の様です。しばらく=数年間は実写に際して支障はないと思いますが、再び解放のまま固着してしまった時は、お気軽にお問い合わせ下さい。無償にて再整備致します。この二つの駆動系の位置関係を考えると、フォーカス調整機構は今回はこちらで処置を施さない方が良いと判断致しました。
次に、光学系付着物に関してですが、レンズ鏡胴内部全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去致しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しております。なるべく頻繁に使って頂きながら、今後も大切にご所有下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 8,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 群馬県(一律)=930円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 8,930円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔