今回お預かり致しました機種も、時々同モデルの修理ご依頼がありますので、写真家の間では人気のあるタイプなのではないかと想像しています。類似モデルとして、Olympus E.Zuiko Auto-T 100mm F2というレンズもありますが、見た目もそっくりで、違いは開放F値のみになります。今まであまり気にする事はなかったのですが、焦点距離とF値が似ているモデル群を今回いい機会なので整理してみる事にしました。
念の為に普段から懇意にしている写真家の方にも聞いてみると、Olympusのレンズの中望遠レンズ群には、他にもいくつかのモデルが存在し、今回お預かりしたレンズ以外にも、それぞれの役割と歴史があるとの事なので私なりに学習してみました。
OMズイコーらしいレンズといえば大抵、廉価版の方で、実にコンパクトかつ優秀なレンズが多いのですが、躯体をコンパクトにする代わりに描画性能を代償にしてしまうことが多い中、オリンパスというメーカーは、コンパクトであっても描画性能に手を抜く事なく、こだわりの技術力をみせてくれる。これが、OM-System Zuikoの大きな魅力になっているのだと思います。
こういう姿勢が、今なお熱烈的なOlympusフアンを持つ所以なのだと思っています。特にこのモデルは、非常にコンパクトな逸品で、全長がたったの48mmで、他の標準レンズと同サイズに設計されています。その描写に関しては、私は言及できませんが、開放 F値=2.8でも十分にお気に入りの絵が撮れる1本なのだと感じます。実際にこのレンズを整備していて気づいたのですが、以下に紹介するモデルと、その構造はあまり変わる事はありません。とても上質な素材でできています。
Olympus E.Zuiko Auto-T 100mm F2
描画性能において、銘玉中の銘玉と称されるこのモデルは、一度手にしたら二度と手放さないと言われている1本に属すレンズの様です。Olympus E.Zuiko Auto-T 100mm F2.8と併用して撮影するシーンが多く、ここぞという機会に大事に所有しているケースが多いと聞きます。そして、下記に紹介するOlympus OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2と人気は二分されている機種になります。
中望遠域の一般撮影向けプロ仕様として、Olympusが技術を余すところなく注いだのがこのモデルになります。今でも当然高い評価を得ている有名なモデルの一種に属します。整備の際にいつも感じる点は、標準で組み込まれている外付けフードは、繰り出し部分が浅く、大きなガラス部位と比較すると、どうしてもアンバランスさを感じてしまうのですが、きちっと数値計算された上での設計だとは思うのですが、気になってしまうのは私だけでしょうか?
Olympus OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2
この機種は、マクロ用に特化した構造で、マクロ域のみならず万能用としてかなり高い評価を得てきた機種になります。写真家の間では、Olympus OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 100mm F2=かつての銘玉とよばれているのが少し不思議だったのですが、その意味が、どうやらこのOlympus OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2というレンズの存在との比較にあった様です。
当然、OM-SYSTEM ZUIKOを代表する高性能で万能のマクロレンズなのですが、写真家の間では、まさにOM-SYSTEM ZUIKOの傑作レンズと言われていて、銘玉中の銘玉、神レンズ中の神レンズ、もはや神様としか呼べないレンズという評価が付けられている1本です。整備していていつも疑問に感じるのは、この90mm F2モデルだけが、絞り羽調整ダイヤルがレンズ鏡胴リヤ側に組み込んである構造です。設計段階で、何だかの意図が合あったのかもしれません。
Olympus E.Zuiko Auto-T 85mm F2
このレンズは、Olympus E.Zuiko Auto-T 100mm F2.8と見た目が極似していて、手の中にすっぽり隠れそうな大きさが特徴です。この二つの機種がコンパクトなお陰で、ずっしり重たく大きい、90mm F2と100mm F2の印象を、より高性能に高めてしまった様な気がしています。勿論、この二つの機種は、元々超高性能なのは事実なのですが、85mm F2も決して引けを取らないレンズ設計になっています。大きくて重いレンズの神話は、こうして今後も高まっていくのでしょう。
Olympus E.Zuiko Auto-T 85mm F2というレンズは、ポートレート用として特に有名で、そのポートレートレンズにつけられた名前が達人でした。真意の程は分かりませんが、達人的に美人を撮れると、懇意にしている写真家の方は自慢しています。整備していて感じる事は、今まで紹介してきたモデル同様に、とても高品質な素材を使っています。
リングの溝ひとつとっても、若干の固着はありますが、すんなりレンズ鏡胴内部へアクセスするのが可能な機種の一種になります。やはり、いいレンズはいい素材でできていて、今後何十年経っても整備可能なレンズの事を指すのだなーと感じてしまいます。今回は、この様なオリンパス中望遠レンズの内、Olympus E.Zuiko Auto-T 100mm F2.8という機種をお預かり致しました。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたお問い合わせメール
以前、ZUIKO AUTO-MACRO 90mm F2というレンズを整備して頂きました。その節はありがとうございました。今回は、100mm F2.8というレンズをお願い致します。症状と致しましては、カビがひどく、実写にも影響があると感じています。以前お願いしたレンズ程は高価なものではないのですが、こちらも今後大事に使っていきたいと思っていますので、宜しくお願い致します。20,000円くらいで仕上げてもらえると助かります。前回教えて頂きました様に、カビ痕が残ってしまっても問題ありません。整備後は、豆に使っていきます。
今回お預かり致しました機種
機種名 | Olympus E.Zuiko Auto-T 100mm F2.8 付属品 |
シリアルNO | 108631 |
付属品 | 前後キャップ |
課題(所有者さん見解) | カビの除去 |
ご希望予算 | 20,000円 |
レンズ鏡胴内部へアクセス時の留意点
この機種も、絞り羽調整ダイヤルが対物側に組み込んでありますので、対物側からレンズ鏡胴内部へアクセスする場合は、絞り羽調整ダイヤル機構を養生しながら順番にアクセスしていきます。そして、一枚のガラス部位ではなくて、レンズユニットを取り外す手順になります。
整備報告
レンズ鏡胴内部に組み込まれている全てのガラス部位表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体の光学的なクリアー度はかなり復元しています。付着していた点カビの一部が腐食カビで、除去後の腐食痕が若干ですが残ります。又、レンズ表面に傷が目立ちます。レンズが綺麗になった分、この様な症状が目立ちますがご了承下さい。
除去前付着物写真
動作・外観共に状態の良いレンズです。今回の様に未使用期間が長期化しますと、カビの発生等随所に支障をきたします。今後の保管等ご留意頂きまして、今まで同様大切にご所有下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 20,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 埼玉県(一律)=930円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 20,930円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔