今回お預かり致しました、Olympus G-Zuiko Auto-T 60mm F1.5というレンズは、元々は1966年発売のPEN FTというフイルムカメラの交換レンズの一種として製造されました。このPEN FTというカメラは、TTL露出計という機構を持ち、露出計はフィルム感度・シャッター速度・測光値に基づきファインダー内に表示されたTTLナンバーという数字を、レンズに刻まれた数字(個々のレンズごとに絞り値と一定の法則で対応している)と手動で合わせるという形式で、開放測光を実現するとともに、レンズごとに違う、開放時と絞り込み時の特性の補正なども行なう仕様になっていました。
オリンパス ペンF
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![Olympus G-Zuiko Aout-T 60mm F1.5 TTLナンバー](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/09dd185e64fdfa0c383640a8c6481053.jpg?resize=214%2C143&ssl=1)
TTLナンバー
絞り羽調整ダイヤルをこの様なモードで使用します。この数値とファインダー内の数値を一致させれば適正露出が醸し出せる仕様に設計されていました。
![Olympus G-Zuiko Aout-T 60mm F1.5 通常ナンバー](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/60a6b5e5e16aef9d54df9c4c2b37d945.jpg?resize=214%2C143&ssl=1)
通常ナンバー
絞り羽調整ダイヤルをこの様なモードで使用します。一般的な数値管理になりますので、露出計と併用して適正露出が醸し出せる仕様に設計されていました。
勿論通常の絞り羽指標数値も活かす事ができる設計になっていて、その操作方法は絞り羽調整ダイヤルを持ち上げて切り替える事ができます。
TTL露出計
TTL露出計(TTLろしゅつけい)とは、カメラに使われる内蔵露出計の一種で、撮影用のレンズを通った光を測定する形式になります。TTL露出計を使用した測光方式をTTL測光といいます。
![Olympus PenF](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/Olympus_PenF.jpg?resize=720%2C540&ssl=1)
![Olympus Pen FT](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/Olympus-Pen-FT.jpg?resize=720%2C526&ssl=1)
Olympus Pen F
1963年5月発売の世界初のハーフ判一眼レフカメラ。後のFTではセルフタイマーレバーがつけられる場所に花文字のFが刻まれているので見分けは簡単だと思います。
Olympus Pen FT
Olympus Pen Fの仕様を継承しながら1966年発売されました。上記解説の様に、TTL露出計という機構が搭載されたモデルとして写真家の間で評判となりました。
PEN Fシステム交換レンズ一覧
![PEN Fシステム交換レンズ一覧](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/ffce62d88aa63571485f217f0dfb59d0.jpg?resize=720%2C402&ssl=1)
Olympus G-Zuiko Auto-T 60mm F1.5というモデル
今回お預かり致しました機種は、製造個体数が少なかった事もあり、あまり市場では出回っていない様です。当協会での修理ご依頼件数もそれ程多くはありませんので、希少性が高い部類のモデルに属すものと推測致します。
レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)
今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。
ご依頼者様から頂いたお問い合わせメール
いつもお世話になります。以前お話ししておりましたレンズをやっと手に入れることができました。しかし、絞り羽が開放のまま動きません。又、レンズを覗くとカビだらけな様な状態です。このままでは撮影できないと思いますので、何とか実写できる様に復元して下さい。いつもの様に完璧な状態は求めません。修理の範疇で復元できる範囲で結構でございます。費用は25,000円くらいで収まると嬉しい限りでございます。急ぎませんので宜しくお願い致します。
今回お預かり致しました機種
![Olympus G-Zuiko Aout-T 60mm F1.5 付属品](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/0f53a53bd4abc471c76b1e889804ade2.jpg?resize=720%2C482&ssl=1)
機種名 | Olympus G-Zuiko Auto-T 60mm F1.5 |
シリアルNO | 103837 |
付属品 | 前後キャップ、フィルター |
課題(所有者さん見解) | 絞り羽根が開放のまま、カビの除去 |
ご希望予算 | 25,000円 |
順番に検査
![Olympus G-Zuiko Aout-T 60mm F1.5 順番に検査](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/8968ef641e6d187c7044ad6d0350ab16.jpg?resize=720%2C482&ssl=1)
絞り羽ユニット機構
フォーカス調整機構関連螺旋状部グリスが、レンズ鏡胴内壁を伝わって汚れを巻き込んで、絞り羽ユニット機構に流れ落ちていましたので、その汚れを除去して、絞り羽の駆動は復元しております。
![Olympus G-Zuiko Auto-T 60mm F1.5 開放時](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/8b5c59eb7e93ac0bf04f5053fa9d5f38.jpg?resize=720%2C482&ssl=1)
![Olympus G-Zuiko Auto-T 60mm F1.5 絞り時](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/3993114bd920ee8b06b62f90864ea64e.jpg?resize=720%2C482&ssl=1)
お電話にてもお話し致しましたが、この様な症状になってしまう個体は、整備後も時間の経過に伴い、再度似た様な症状なってしまう可能性があります。もしも、状態が再発してしまった場合は、無償で整備しますので、お気軽にお問合せ下さい。
光学系付着物
レンズ鏡胴内部に組み込まれているすべてのガラス部位表面に付着していた埃・カビ除去致しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しております。付着していたカビの種類は主に点カビでした。レンズが綺麗になった分、元々あったレンズ表面の擦れ傷が目立ちますが、実写に影響はないと診断致します。
処置前光学系付着物写真
![Olympus G-Zuiko Auto-T 60mm F1.5 点カビと傷](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/319ef7e3c253568602718701473221fd.jpg?resize=720%2C482&ssl=1)
![Olympus G-Zuiko Auto-T 60mm F1.5 埃と点カビ](https://i0.wp.com/japanlensassociation.com/wp-content/uploads/2022/01/10c27e2cb43b2452e142c98bf2925630.jpg?resize=720%2C482&ssl=1)
絞り羽ユニット機構の問題も、光学系付着物の課題もその原因は、放置期間の長期化ですので、今後のご所有に際しましては、なるべく頻繁にお使い下さい。外観・駆動系・光学系共にとても状態の良いレンズに蘇りました。大切にご所有下さい。
納品に関しまして
※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。
発送方法 | クロネコ発払い便 |
送り状NO | 別途メールにて報告 |
配送状況 | お荷物追跡システム |
ご決済に関しまして
整備費 | 25,000円(税込) |
クロネコさん送料 | 埼玉県(一律)=930円(税込) |
決済方法 | 銀行振り込み |
合計 | 25,930円 |
お願い | ご決済後メールにてお知らせ下さい |
お振込み先銀行
・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔