Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 修理記録

Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5

OlympusのZuikoシリーズのレンズ群の中でも、このOlympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5というレンズは、解放F値がやや暗いスペックになっているものの、写真家のあいだでは、伝説の名玉と呼ばれている機種だ・・・という話を、懇意にしている写真家から、以前聞いた事があります。私は、写真家ではないので、その映りに関しては何ひとつ語れませんが、修理依頼件数という点では、似た様なスペックの、Pentax SMC Takumar 28mm F3.5という機種の方が多い様な印象があります。どちらのレンズも、比較的入手しやすい価格帯で市場にて流通している様ですが、今後間違いなくその価値は上がっていきますので、状態を保ちながら、大切に所有して欲しい欲しいと思います。

Pentax SMC Takumar 28mm F3.5
Pentax SMC Takumar 28mm F3.5

こちらの機種と比べてみると、レンズ鏡胴内部の構造自体は勿論全く異なるのですが、その大きさにおいて、Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5というレンズは、かなり小ぶりです。このコンパクトさも人気の要因なのかもしれません。以前、技術サポートを受けている生徒さんと一緒に、お弁当を持って、二時間くらいかけて、 Pentax SMC Takumar 28mm F3.5+ミラーレスカメラで、風景写真を撮った事を想いだしました 。

Olympusのレンズを所有する際留意して欲しい構造

このメーカーさんのレンズに限った話ではないのですが、8割くらいのレンズは、絞り羽調整ダイヤルという機構が、レンズ鏡胴マウント部位付近に組み込まれています。残りの2割くらいのレンズは、同調整ダイヤル部位が、レンズ鏡胴対物側先端個所付近に組み込まれている構造をもちます。後者の方に、Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5というレンズは分類されます。

Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 絞り羽調整ダイヤル
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 絞り羽調整ダイヤル

そして、この調整ダイヤルを、撮影中、何度も絞る方向=反時計回りに回していると、少しずつですが、絞り羽ユニット機構押えリングが緩んできます。

Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 絞り羽ユニット機構押えリング
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 絞り羽ユニット機構押えリング

絞り羽調整ダイヤルが、レンズ鏡胴マウント部位よりに組み込まれているタイプのレンズは問題ないのですが、矢印の押えリング=レンズの銘柄が刻印されている部位が緩んでくるので、時々締め付け直してあげて下さい。クリック型絞り羽調整ダイヤルは、スプリングが常にベアリングを押し上げて、溝プレートにはまる構造になっていますので、この押えリングが緩むと、絞り羽調整ユニットがバラバラになり、緩んだ状態で使用していると、その内に位相がずれて、調整ダイヤルが壊れてしまう事になりかねません。

こんなゴム治具
こんなゴム治具

こんな感じのゴム治具を使って頂ければいいと思います。押えリングと接する面の大きさが合えば何でも構いません。くれぐれも、時計方向に締め付けて下さい。

簡易的なゴム治具
簡易的なゴム治具

ヨドバシさんや、Bigカメラさん、Amazonさんでも安価に入手する事ができます。是非、ご協力頂きまして、末永く撮影の友として、このレンズを所有して頂ければ、幸いでございます。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂いたメール

【G.ZUIKO 28mm F3.5 の分解、清掃のお願い】

上記商品をオークションで購入したのですが、カビも多少ありますが、ホコリが多量に見られます。出品者或いは以前のオーナが一度分解したのか、銘板が緩んでカタカタ音がしておりました(この点に関しては自分で締めました)。カビ等の他ヘリコイドもやや重くこれもできたら修理をお願いいたしたく存じます。素人なので記載できる状態はこの程度ですが、よろしくお願いいたします。

こちらからのお返事

今回お問い合わせ頂きました機種はカタカタ音がして緩んでいたリング部位は、絞り羽調整ダイヤルのスプリングとベアリングと溝プレートを押える大切な役割の押えリングです。この緩みをそのままにしていると上記部位がバラバラになって絞り羽が動かなくなってしまうところでした。応急処置の判断は正しかったと思います。

・カビ等光学系付着物除去は可能と推測致します。

・フォーカス調整機構トルク感は、人により嗜好がございますので、どこまでお好みの感覚に仕上げられるかにつきましては、少し難しい課題になります。

・整備費用に関しましては過去の修理記録を紐解きますと同機種にて12,000円(税込)くらいかかっております。いずれに致しましてもお客様の大切な光学機器です。業者さんの選定等々、充分にご検討下さい。

ご依頼者様からのお返事

田斉様
ご多忙のところ早速ご返事いただきまして有難うございます。レンズの修理となると価格ばかりに目を向けてしまうと悲惨な目に合いそうです。貴社は信頼のおける会社と考えておりますので修理をお願いいたしたく存じます。ヘリコイドの件ですが、特に好みはないのですが、持ち合わせている他のレンズと比較しても少々抵抗があって、回すのに力がいるような状態と思われますので、グリースの劣化などがあれば処置をしていただければと存じます。今後の手続きの手順等についてご教示いただければ幸いです。

今回お預かりした機種

Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 付属品
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 付属品
機種名Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5
シリアルNO358939
付属品前後キャップ
課題(所有者さん見解)光学系付着物除去・フォーカス調整ダイヤルトルク
ご希望予算お聞きするのを忘れてしまいました。

整備報告

先ず、カビ等光学系付着物に関してですが、レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての、硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去処置施しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。光源がレンズ対物側から入射して、カメラ撮像素子に届くのですが、この光の総量を光束=こうそくと呼んでいます。処置前が光束値=40くらいだったのに対し、処置後は90くらいの値まで復元しています。カビの種類は、主に点カビでした。

下記写真全て処置前の状態です

Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 点カビと埃と傷②
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 点カビと埃と傷①
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 無数の点カビ
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 無数の点カビ
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 点カビと埃と傷③
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 点カビと埃と傷②
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 点カビと埃と傷①
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 点カビと埃と傷③

カビ以外付着物と致しましては、相当量の埃が鏡胴内部に混入、硝子部位表面に落下・付着していました。この症状はとても稀で、推測になりますが、過去のどなたかが、埃っぽい環境で撮影していたのか、 絞り羽ユニット機構押えリングが緩んだ状態で、使用・保管していた為に、隙間から埃が混入してしまったものと思われます。

この付着物も全て除去できております。只、点カビの一部が腐蝕カビで、カビ除去後の腐蝕痕が若干ですが残ります。又、前後硝子玉部位表面に無数の浅い擦れ傷がありました。過去の所有者さんがあまり適切とはいえない管理をされていたのだと思いますが、レンズが綺麗になった分、この様な症状が目立ちます。

この様な状態、ご了承お願い申し上げます。腐蝕痕も浅い擦れ傷も実写には大きく影響はないと診断致します。特に、擦れ傷は目視した時、付着物の様に目には映ると思いますが、処置後付着物はありませんので、ご安心下さい。

絞り羽ユニット機構

念の為に、絞り羽ユニット機構検査致しました。駆動伝達部位及びユニットBOX及び絞り羽フイルム問題ございません。まだまだ現役で活躍してくれると思います。

Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 解放時
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 解放時
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 絞り時
Olympus OM-System G.Zuiko Auto-W 28mm F3.5 絞り時

フォーカス調整機構

トルク感に関しましては、確かに少し硬めでしたので、関連螺旋状部検査致しました。グリスの劣化も原因のひとつと思われますが、螺旋状部に微小な歪みもありました。この二つが主な原因と思われましたので、グリス交換にて対応しました。只、微小な歪み=隙間からグリスが流れ落ちる事を懸念しましたので、再グリスUPは少し硬めのNOの物を使用しています。

グリス
今回使用したグリス

なので、トルク感そのものに大幅な改善はありません。トルクを優先しますと、いずれグリスが汚れを巻き込んで、絞り羽ユニット機構に付着してしまいます。そうなると、今度は絞りが解放のまま固着してしまう危惧を孕んでしまいます。この様な背景ですので、もう少し軽めに仕上げたかったのですが、この点ご了承お願い申し上げます。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ発払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費12,000円(税込)
クロネコさん送料片道づつ相互負担
決済方法銀行振り込み
合計12,000円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

納品後、ご依頼者様から頂いたメール

お礼のメール

今後の仕事の励みになります。わざわざ、ありがとうございました。

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。