今回整備致しました機種も、Canon 50mm F1.8 L39同様、銀鏡胴タイプのモデルは、銘柄表示として、Canon LensタイプとSerenarタイプの2種類が製造された、大口径F1.5の標準レンズになります。当時の高級機メーカーにとっては、大口径標準レンズを持つことがステータスでした。尚、本レンズはSerenar 50mm F1.9 L39、Serenar 50mm F1.8 L39の製造を経て、Carl Zeiss Zonnar 50mm F1.5をお手本に設計されました。
Serenar 50mm F1.5 L39というレンズ
引用元:Canon Camera Museum
Canon レンジファインダー バルナック型 IV Sb(4Sb)型
Canon 50mm F1.5 L39というモデルは、そもそもCanon レンジファインダー バルナック型 IV Sb(4Sb)型というフイルムカメラ用交換標準レンズとして製造されましたので、もしこのモデルをこれから購入しようと思っている写真家の方は、Canon レンジファインダー バルナック型 IV Sb(4Sb)型というフイルムカメラのキーワードで検索してみれば、レンズとカメラ一体で販売している販売者さんがいらっしゃるかもしれません。
尚、このフイルムカメラは1936年から26モデルが製造されていて、その外観はパッと見では区別が付きませんので、高速領域シャッタースピードダイヤルメモリ数値や、低速領域シャッタースピードダイヤルメモリ数値や、ストロボフラッシュコネクタ-という機構の有無等々、機種を特定できる根拠を根気よく調査する必要があります。昔、当協会で、このフイルムカメラに関して徹底的に研究した経緯があるのですが、その時の記録を宜しければご参照下さい。
Canon バルナック型レンジファインダーフイルムカメラ
尚、Canonのフイルムカメラシリーズの交換標準レンズとして、Canon 50mm F1.5 L39というレンズもCanon 50mm F1.8 L39というレンズも製造されていますので、当時のフイルムカメラ全般に関しましては、下記コンテンツサイトにて詳細解説しておりますので、宜しければ合わせてご参照下さい。
Canon 50mm F1.5 L39という機種の歴史的な位置づけ
Canon 50mm F1.5 L39という機種は、開放F値自体は明るいものの、その当時としては、コマ収差を劇的に改善した4群6枚のガウス型の標準レンズとして名声を極めた、Canon 50mm F1.8 L39モデルの影響で、存在感が薄い機種になってしまいました。同時に、CANON ⅤT型用に、CANON LENS 50mm F1.2 L39が登場したこともあり、短命に終わってしまいましたので、現在もその流通量は少ないのが実情です。
Canon 50mm L39モデルを購入時留意して欲しいポイント
もしも、これからCanon 50mm L39モデルのレンズを購入しようと思っている場合は、特に開放F値にこだわりがないのであれば、Canon 50mm F1.8 L39銀鏡胴モデルをお勧めします。Canon 50mm F1.5 L39タイプがどうしても欲しい場合は、整備業者さんがメンテした個体を入手して下さい。
その場合も、この機種はレンズ鏡胴内部に組み込まれているレンズユニットのガラス部位の一部が、カビを除去した後に腐食痕が残りやすいので、この点注意が必要です。腐食痕はその程度により実写に影響が出るケースもあります。上記写真のレンズユニットのガラス部位表面に腐食痕が残ってしまうケースが多いです。薄っすらとした腐食痕であれば実写に大きな影響はありません。
L39マウントレンズの注意点
写真愛好家の方であれば、周知の事柄とは思いますが、L39マウントのレンズは、元々レンジファインダーフイルムカメラ用の交換レンズとして製造されていました。M42規格同様、マウント形状がスクリュータイプですので、フォーカス調整ダイヤルのトルクが重いと、調整ダイヤルを回しているのに、レンズ本体がカメラ本体から緩んでしまうというストレスが発生してしまいます。こんな理由から、当協会で整備する際には、そのトルク感はやや軽めに調整しております。
今回整備したレンズ詳細
機種名 | Canon 50mm F1.5 L39 付属品 |
シリアルNO | 16559 |
付属品 | フロントキャップ |
整備内容 | 全体的な検査 |
整備目的 | 整備後にECモールサイトで販売 |
レンズ鏡胴外観
半世紀以上前の製造年代を考えると、大きな凹み等なく、若干のスレはありますが、実用品レベルとしては綺麗な方だと思います。
詳細は、ECモールサイトの掲載写真も併せてご参照下さい。付属品のメーカー純正フロントキャップは、一部亀裂が入っておりますが、ガラス部位保護の為にも保管時はお付け下さい。
絞り羽ユニット機構
調整ダイヤルは、その指標数値刻印が見えにくい状態ですが、16から1.5の指標領域までムラなくスムースに駆動しています。真鍮の押し上げプレートがベアリングを押し上げ、規定のプレート溝に収まって駆動するクリック型調整ダイヤルになります。
絞り羽フイルム状態
この写真の様に、絞り羽フイルム本体に若干ですが、油染みが散見されます。絞り羽ユニットBOXのスプリングが解放方向か絞り方向に常時作用している構造の機種の場合、油染みが原因で絞り羽が開放のまま固着してしまうという症状の原因になるので、一般的には、この油染みはマイナス要因として評価されますが、Canon 50mm F1.8レンズの場合は絞り羽ユニットBOX機構に、スプリングが組み込まれていませんので、この油成分が絞り羽フイルム本体のサビ防止にもなりますので、今回は敢えて除去処置は施しておりません。その駆動はとても滑らかです。
フォーカス調整機構
無限遠固定ボタン快適に作動しております。そのスプリングもまだまだ生きています。フォーカス調整機構螺旋状部に経年の汚れが目立ちましたので、除去処置施しました。
その後、該当螺旋状部再グリスUP施しておりますので、そのトルク感はしっとりとして滑らかな状態に復元しております。スクリューマウント形状ですので、少し軽めに調整致しました。
チョウ度=T1グリス
トルクを軽めに仕上げたかったので、グリスはチョウ度=T1グリスを採用しました。このトルク感は人により嗜好が異なりますので、お好みの感覚に仕上げるのは難しいのですが、L39マウント規格形状ですので、軽めの方が実写に際してストレスはないと判断しました。
光学系付着物
レンズ鏡胴内部に組み込まれているすべての硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去処置施しましたので、スカッと抜ける様な眩しい個体に復元しております。レンズ全体が綺麗に復元した分、元々あった硝子表面のスレ傷が目立ちます。
又、レンズユニット表面にカビ除去後の腐食痕が薄っすらと残りますが、実写には大きな影響はないと判断致します。整備後風景写真も撮っていますのでご参照下さい。本来は、適切なペーパー若しくは布でお手入れしてもらえれば、この様な微細な傷は付かないのですが、現在流通しているこの機種は残念ながら全てスレ傷があります。
除去前光学系付着物の状態
製造から半世紀くらい経っているこの機種は、下記写真の様な状態の個体が殆どです。このモデルは硝子部位も高品質な素材でできていますので、カビは付着しますが、一部のガラス部位以外は除去後の腐食痕が残る事がなく、とても良い状態に復元するケースが多いです。
例え保湿庫なる空間で保管していても、レンズの未使用期間が長期化しますと、カビが発生してしまう可能性が高くなってしまいます。今回整備したレンズは、ご希望であれば、購入後の無償補償を付けておりますので、所有中にもしもカビが生えてしまった場合は、無償で整備致しますのでご安心下さい。その場合、往復の送料はご負担お願い致します。カビ再発防止の為にも入手後はマメに使って頂きます様お願い申し上げます。
Canon 50mm F1.8 L39マウントというレンズの構造
すべての機種に該当するわけではありませんが、L39及びM42マウント形状のモデルは、その構造に共通点があります。下記写真の様な構造になります。
この写真の様に、レンズ鏡胴が大きく二つの部位で構成されています。一番左の鋼鉄はがねリングは左右のパーツを一つに固定するリングになります。その左側のパーツには、フォーカス調整機構が組み込まれています。一番右側部位には、光学系硝子部位と絞り羽ユニット機構が組み込まれています。右から二番目の真鍮は中間リングになります。こういう構造になっています。金属部位及びネジ山もとても精巧に作られていて、当時の職人さんの技術を感じる事ができます。
そのあと工程にて、この写真の様に順番に検査していく事になります。構造の理解と、整備に必要な治具・溶剤があればどなたでも整備できます。再組み立て時に気をつけなければならないポイントは、絞り羽調整ダイヤル指標マークと、フォーカス調整ダイヤル指標マークを一直線上に合わせて組み直す事です。Contax Gタイプの機種以外は、この二つの指標マークは必ず一直線上に位置します。
マウントアダプター
L39マウント形状のフイルムカメラでお使い頂く分には問題ありませんが、普段ご愛用のデジタルカメラでこのレンズを使う場合は、形状規格が会ったマウントアダプターが必要になります。
私は、風景写真を撮る際にSONY NEX というミラーレスカメラを使っておりますので、そういう場合は上記写真の様なアダプターが必要になります。ご自身のカメラ規格に合わせたアダプターをご用意下さい。
整備後 Canon 50mm F1.8 L39 レンズで撮影した風景写真
私は写真家ではありませんので、実写に関しましては何も言及できませんが、整備後このレンズで撮影したいくつかの写真掲載させて頂きます。このレンズの開放F値=1.8を生かして、概ね開放設定にて撮影してみました。カビ除去後に残った薄っすらとした腐食痕は、私の感性では実写には影響はないと感じました。
カメラのモードをマニュアル設定にして、絞りはレンズで調整します。シャッターボタンを半押ししても、自動でピントは合わないので、ピント合わせは自分の感性で行ないます。私の撮影レベルでは、ピント合わせと適正露出の表現が限界ですが、宜しければご参照下さい。
オールドレンズで撮影した身近な自然風景写真館
他のオールドレンズで撮影した写真集も公開しております。宜しければご参照下さい。
撮影場所は、当協会所在地から自転車で10分くらいで行ける、松戸市古民家文化財に登録されている旧斎藤邸敷地内で撮影しています。この空間は個人的にもとてもお気に入りで、まるで時が止まってしまった様な、静かでとても落ち着ける空間です。
お弁当を持って、3時間位撮影していると何だか元気が湧いてきます。きっと、あなたの傍にも心を癒してくれる身近な自然風景があると思います。松戸市内では数少ない光景が広がっています。詳細は、松戸市教育委員会広報公式サイトをご閲覧下さい。
販売後の無償整備補償に関しまして
ご希望であれば、このレンズを購入して頂いた方には、販売後の無償整備保証を付けております。通常使用下において発生した支障に関してでしたら、所有者さんの変更がない限り、いつでも無償にて整備致します。詳細は、出品ページ解説をご参照下さい。
出品ECモールサイト通信欄て無償整備保証希望とご記入下さい。この制度をご希望の場合は、レンズ本体と一緒に検査証を同梱致しますので、無償整備保証制度適用時にお使い下さい。その場合、往復の送料はご負担お願い申し上げます。
ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導お願い申し上げます。