13,800円という価格で販売いたします
本来、このモデルの場合は、修理依頼を頂いた場合、整備費用で、概ね12,000円(税込)くらいのお見積もり価格で整備させて頂いております。こちらで構造の研究が終わって、出品前に整備した状態ですので、お値段的にもとても価値のあるお買い物なのではないかと思っております。ご関心のある方は、以下の解説をお読み下さい。
Canon 50mm F1.8 L39というモデルのレンズの生い立ち
このレンズは、当時のCanon社が1936年から製造・販売を開始したバルナック型レンジファインダーフイルムカメラ用の交換レンズとして世にデビューしました。勿論、マウント形状はスクリューマウントです。同じ焦点距離・開放F値のモデルがその後開発されましたが、その仲間の中でも初期のモデルに位置します。
このフイルムカメラは、公式Canonミュージアムの記載によると、実に27種類ものモデルを開発しています。構造の研究元は勿論Leitz社のモデルになります。でも、構造的にはコピー元よりも、Canon社製品の方が優れていると個人的には感じています。高速領域シャッタースピード調整ダイヤルと、低速領域シャッタースピード調整ダイヤルのガバナーがそれぞれ独立しているので、シャッタースピードの故障が起きにくい点が挙げられます。より詳しい解説は下記バナー先の記事にてお話ししております。
出品する個体の説明
このレンズも、こちらでの構造研究が終わったので、整備して出品する事にしました。どなたかこの機種をお探しの写真愛好家の方に使って頂ければ幸いでございます。スクリュータイプのL39規格のマウントですので、このマウント規格のアダプターを介せば、デジカメやミラーレスにて実写が可能になります。
レンズ単体の重量もあり、スクリュータイプのレンズは、M42規格同様、撮影中や移動中にレンズがカメラ本体から外れやすいので注意して下さい。落下や水没のその一瞬で致命傷に至るケースが殆どです。
ミラーレスカメラで撮影してみました
整備後に、お気に入りの場所で風景写真を撮影してみました。使用したカメラはSony αになります。マニュアルモードで撮影します。Sony-α NEX5というカメラは、レンズ側の絞り値に合わせて、自動的にシャッタースピードで適正露出に合わせてくれるので、絞り値とシャッタースピードの関係さえ押さえておけば、後はピントを合わせるだけです。それでも、ピントぼけした写真を撮ってしまう自分が情けないです。
撮影場所は、当協会所在地から自転車で10分くらいで行ける、松戸市古民家文化財に登録されている旧斎藤邸敷地内で撮影しています。この空間は個人的にもとてもお気に入りで、まるで時が止まってしまった様な、静かでとても落ち着ける空間です。お弁当を持って、3時間位撮影していると何だか元気が湧いてきます。きっと、あなたの傍にも心を癒してくれる身近な自然風景があると思います。
私は光学機器の修理の分野で生きていますので、撮影の専門家ではありません。下手くそな写真ばかりですが、60枚ほど実写しましたのでご参照下さい。スライドショーにもしてみました。全ての写真は、ほぼ解放値で撮影しています。フイルムカメラが、まだレンジファインダー時代に使われていたレンズが、アダプターを介してデジカメで撮れるのは時空を超えた楽しさがあると思います。実際に撮影してみて、このレンズの特徴は私には解りませんでしたが・・・
出品するレンズ機種
機種名 | Canon 50mm F1.8 L39 |
シリアルNO | 85277 |
付属品 | フロントキャップ、フイルター |
出品先 | ヤフオク |
整備後に出品
外観に関しましてはとても綺麗です。一部微小ですが錆がございます。フォーカス調整機構及び絞り羽ユニット機構の駆動系は全く問題ありません。絞り羽フイルム本体にはグリス染みがありますが、実写には全く影響ありませんので、現状のまま出品します。
カビ等の光学系付着物が確認できましたので、レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ全て除去しました。レンズ全体としてのクリアー度は、スカッと抜ける様な眩しいレンズに復元しています。付属品はフロントキャップ(純正)とフイルター(純正)になります。
このレンズの出品時の状態
駆動系及び光学系及び外観に関して、それぞれ出品に際しての状態を解説します。
落下等による凹みはありません。経年使用下のすれも殆どなく、気になる傷もありません。この年代の個体としては、かなり綺麗な方なのではないかと思います。一部微小ですが錆がございます。ヤフオクの出品写真をご参照下さい。この個体の入手経緯は不確かですが、かなり大切に所有・保管されてきたものと推測致します。
出品に際し、レンズ鏡胴内部に組み込まれている全ての硝子玉表面に付着していた埃・カビ除去処置施しましたので、出品時付着物はございません。スカッと抜ける様な眩しいレンズに蘇りました。カビ除去後の腐蝕痕も殆ど残らないで、その復元状況は上々です。只、レンズが綺麗になった分、元々あった硝子玉表面の擦れ傷が極々わずかではございますが目立ちます。この症状は実写に際して大きな影響はないと判断します。実際に撮影した風景写真からもご確認下さい。
至近距離指標から無限遠指標まで、全領域でスムースに駆動しています。そのトルク感も丁度良い感じと診断します。無限遠指標固定ロックボタンも正常です。
解放値F1.8~絞り値F16まで全領域でスムースに駆動しています。そのクリック感も丁度いいと感じます。絞り羽フィルム=板本体にグリス染みがあります。実写には全く影響がないので、現状のまま出品させて頂きます。このモデルは自動絞り=Automatic lever機構が組み込まれていません。従いまして、絞り羽フイルムを常時絞る方向に作用するスプリングもありません。
従いまして、この機種はこの症状が進行して、絞り羽フイルム=板が絞り羽ユニットBOXに収納されたまま固着してしまう現象にはなりません。更に、この油分が絞り羽フイルム自体を守りますので、敢えて除去処置は施しておりません。この様な構造になっておりますが、見た目重視の方のご入札・ご購入は僭越ではございますが、ご遠慮お願い申し上げます。
このレンズは、スクリュータイプマウントの単焦点レンズですので、そのマウントはL39規格のマウントになります。下記写真の様なマウントを介してデジカメ等でお使い下さい。
この様な状態のレンズになります。この機種をお探しの写真家の方がいらっしゃいましたら、上記解説をお読みになった上でご検討下さいます様お願い申し上げます。
以下の解説は、今回出品するレンズのお話ではありませんので、興味のある方だけ読み進んでいただけますと幸いでございます。少し長い解説になります。
Automatic lever=自動絞りに関しての補足解説
自動絞りという機能は実写に際してとても便利なのですが、絞りを絞り羽調整ダイヤルのみで調整しないので、その駆動伝達部位が多くなって、それが故障の原因にもなり易いという欠点もあります。その点、今回出品しているモデルは、構造的にとてもシンプルで、絞り羽ユニット機構に支障がある個体は稀です。いい機会なので、自動絞りに関しまして少しお話し致します。
当協会の技術サポートを受講している生徒さんから頂いた質問
今回の質問は、この連動レバーの内部にあるスプリングの動き方についてです。開放状態の時に連動レバーのスプリングが効いている個体がある一方で、開放状態の時、レバーがプラプラになって全くスプリングが効いていない個体があります。
この「解放時にスプリングが効いていない」ということについて、お客様から問い合わせがありました。これまで、この機種の整備は7~8本やってきたように思いますが、たしかに僕自身も、絞り解放時にレバーがプラプラのものと、しっかりスプリングが効いているものがあるな~とは感じていました。割合としては半々くらいの印象です。
ただ、解放時にプラプラしているものでも、絞った時にはシッカリとスプリングが効いていたので、こういうのもあるのかな?くらいに思っていました。しかし今回、お客様から指摘を受けたことで、もしかしたら、絞り解放時にレバーがプラプラになっている個体は異常なのでは?と思いましたので、先生の見解をお聞きしたいと思いました。
ちょうど今、手元にスプリングが効いている個体と、効いていない個体を在庫しているので、これで動画を作成しましたので、ご確認いただけますか?よろしくお願いいたします。
絞り羽ユニット機構カメラ装着時 Automatic lever=自動絞り
このレバーは構造上の正式部位名称は、絞り羽ユニット機構カメラ装着時 Automatic leverとチョット長い呼称になります。レンズの銘柄板にはNikkor-Autoみたいに簡略して表記・刻印されているモデルが多いのは気づいていると思います。なので、このお返事の解説に際しては、このレバーの事を=Automatic lever=自動絞り・・・と便宜上呼ぶことにします。
Old Lens 初心者の写真家の中には、このーAutoーの事をピントと勘違いしている方もいらっしいますので、そもそもこのAutomatic leverの概念は少し分かりにくいスペックになっています。もっと簡単にいえば自動絞りという事になります。この自動の概念をAutoと命名しました。
各種連動方式
更に、このAutomatic leverは、その構造上からいくつかの種類に分類されます。
- レリーズ連動方式
- ピン押し込み方式
- 外部レバー連動方式
- 内部レバー連動方式
- 電子制御連動方式
この他にも、もしかしたら私の知らない方式の機構のモデルがあるのかもしれませんが、最も一般的なのは、内部レバー連動方式になります。日本では、Canon以外の殆どの製造元がこの方式を採用しました。ピン押し込み方式は、特に旭光学さんが積極的に研究した様です。そして、更にややこしい事に、各連動方式の中にも、製造年・工場によって、その構造が違っているモデルが存在します。
その他、自動絞り機構の特徴
この自動絞り機構を組み込んだ機種には、別の角度から診断すると、もう一つの顕著な特徴があります。それは、絞り羽根フイルム自体の枚数制限です。自動絞りの組み込まれていない機種は、絞り羽根の状態を、絞り羽根調整ダイヤルのみで操作・調整します。この完全手動のやり方は、ゆっくりとした動作になりますので、絞り羽根フイルムの摩擦に耐えられます。
なので、どの開放状態指標時においても、限りなく円形を維持できる様、沢山の枚数の絞り羽根フイルムを組み込むことが可能です。一方、自動絞り機構を組み込んだ場合、その役割上、撮影家がカメラのシャッターボタンを押した瞬間に、サクッと駆動する事が必須になる為、絞り羽根フイルムの数はそんなに何枚も組み込む事が無理になってしまう事になります。
フイルムカメラでいえば、シャッター幕の開閉速度、デジタルでいえば、例えば跳ね上げミラーの上下運動よりも早く絞り羽根フイルムが、指標値通りに駆動してくれないと困る事になります。なので、このーAutoーと明記されているモデルの絞り羽根枚数はMax=9枚までという制限を予めわかった上で開発・製造されました。なので、この機構のレンズを選ぶ際には、絞り羽根の穴の形が多角形になる事を承知の上で、写真家の方はレンズを選んでいます。
結論
長々と解説してきましたが、自動絞りが組み込まれている機種の内、今回お問い合わせ頂きました機種は、最も普及している、内部レバー連動方式のモデルの一種に属します。そして、上記解説致しました様に、この内部連動方式の中にもいくつかの構造上の違いがあります。何故、いくつかの異なる構造を組み込んだのかは、今となっては、その設計に携わった人物に聞いてみないと、正直なところ厳密には分かりません。なので、少しだけ推測の域を出ないお答えになってしまいますが、絞り羽根調整ダイヤルが開放指標に設定している状態で
- Automatic leverのスプリング=バネが効いている機種もあれば
- Automatic leverのスプリング=バネが休んでいる機種も存在します
全く同じ銘柄のレンズでも、この二つが存在する事になります。個人的には、後者のバネを休ませる構造の個体の方が、バネが伸びきってしまうのを防いでくれるので、バネ自体の寿命には有効なのかな?という見解はありますが、どっちにしても、現代の写真家の方にとっては、この辺の知識がないと、壊れているのでは?という不安要素になっているのは事実の様です。
どちらのタイプの個体でも、実際にカメラ本体に装着した際に、自動絞りという機能が働いているのであれば、その構造の違いで悩む必要は全くないと僕自身は感じております。なので、レンズ単体を手にとって、その差に対して悩むのではなくて、実際にカメラに装着して実写してみて、問題がなければその個体は正常だと判断してもらっていいと思います。
写真家の中には、相当な知識があった上で、細部に拘る方がいらっしゃる一方、あまり詳しくない知識の範囲で、細かいところで悩んでいる方もいらっしゃいます。前回のお問い合わせで、「カタカタ動く」という表現の文章を頂きましたが、そのカタカタという表現が、まさか自動絞りの構造の違いによる感覚だったという事に僕自身がすぐに気が付きませんでした。
何度もお問い合わせ頂きまして、お手数をおかけ致しました事、ここにお詫び申し上げます。この一件を通して、生徒さんの自動絞り全般に関する知識が新たに増えた事と交換にどうかお許し下さいね!それにしても、生徒さんの動画撮影技術は高度ですね。音声もクリアーですし、動画の写りも鮮明で、質の高さに驚きました。このペースでどんどん学習と実践を継続していって下さい。