Canon FD 85mm F1.8 SSC 修理記録

Canon FD 85mm F1.8 SSC

この機種の銘柄刻印にある、FDとはマウント形状の通称で、Canonレンズの場合は、このマウントが主流になります。SSCという刻印もよく見かけられますが、Super Spectra coatingのそれぞれ3文字の頭文字をとった命名になっています。簡単にいうと、Canonが開発したコーティングによりカラーバランスの統一を行う技術の事を意味しています。

人様の大切なレンズを整備していて思う事

今回お預かりしたレンズに限った事ではないのですが、今後オールドレンズの余命は一体どうなっていくのか?という気持ちになる事があります。自転車や自動車、エアコンといった、道具という大きなくくりの中で捉えると、レンズも撮影の為の道具になります。世にある道具は全て定期的な整備若しくは、何だかの支障がおきた時に、修理する必要があります。

電子レンジや洗濯機等の電化製品は、平均寿命が10年くらいと認識されていますが、便利で快適な暮らしを追求してきた日本の現状を垣間見る時、オールドレンズくらいは時の流れに関係なく、いつまでも状態を維持しながら、子供の代、孫の代、そしてその先の代まで受け継がれていって欲しいと願う人間のひとりとして、 今後のオールドレンズの余命について考えてしまう瞬間が、歳のせいでしょうか、増えてきました。

今回お預かり致しましたレンズも、カビ等光学系付着物と絞り羽ユニット機構の不具合が確認され、整備すればこの先も充分に撮影の友としてまだまだ活躍してくれるのに、壊れている・・・の一言で、廃棄処分や、押し入れの様な暗い場所に放置され、忘れ去られていく個体が増えていくのではないかと憂う時間が増えてきました。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂いたメール

初めてメールします。実家に帰ったところ、祖父が昔使っていたカメラの事を知り、もうここにあっても誰も使わないから、祖母が好きに使っていいので、好きなものを持っていきなさい・・・という話になったのですが、写真初心者なので、状態が良く解りません。カメラもレンズも沢山仕舞われていたのですが、アドバイスして頂けますと嬉しいです。一度に全部なると、予算的にすぐに都合がつきませんので、優先順位から教えて頂き、少しずつ状態を良くして、撮影ができる様にして頂ければと思います。最初に教えて頂きました、レンズを先ずは送りますので、宜しくお願い申し上げます。

今回お預かり致しました機種

Canon FD 85mm F1.8 SSC 付属品
Canon FD 85mm F1.8 SSC 付属品
機種名Canon FD 85mm F1.8 SSC
シリアルNO21983
付属品前後キャップ、フード
課題(所有者さん見解)使える様にして欲しい
ご希望予算特にありません

整備報告

先ずは、光学系付着物に関してですが、レンズ鏡胴内部全ての硝子部位表面に付着していた埃・カビ除去しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。付着していたカビの内、点カビが腐食カビで、除去後の腐食痕が随所に残ります。腐蝕痕とは、カビが成長の過程で、硝子部位表面につけた一種の傷だと捉えて下さい。整備工程で撮影した数枚の硝子部位の写真、以下にUPしておきますので、併せてご参照下さい。

整備前光学系付着物状態

Canon FD 85mm F1.8 SSC 菌糸状カビと雲状カビ
Canon FD 85mm F1.8 SSC 菌糸状カビと雲状カビ=除去前
Canon FD 85mm F1.8 SSC 大きな菌糸状カビ
Canon FD 85mm F1.8 SSC 大きな菌糸状カビ=除去前
Canon FD 85mm F1.8 SSC 点カビと雲状カビ
Canon FD 85mm F1.8 SSC 点カビと雲状カビ=除去前
Canon FD 85mm F1.8 SSC 無数の菌糸状カビ
Canon FD 85mm F1.8 SSC 無数の菌糸状カビ=除去前

全て除去できていますので、納品段階で付着物はありません。

順番に検査

Canon FD 85mm F1.8 SSC レンズ鏡胴内部
Canon FD 85mm F1.8 SSC レンズ鏡胴内部
Canon FD 85mm F1.8 SSC レンズユニット
Canon FD 85mm F1.8 SSC レンズユニット

駆動系に関しまして

お電話にてお話しした段階では、絞り羽調整ダイヤルを回しても、絞り羽が動かないというない様でしたが、Canon FDマウントは少し扱いにコツがありまして、レンズ単体を手に持った時、マウント側のボタンを押しながらでないと、絞り羽調整ダイヤルの指示が絞り羽フイルムに伝わらない構造になっています。

Canon FD 85mm F1.8 SSC 絞り羽
Canon FD 85mm F1.8 SSC 絞り羽問題ありません

一番簡単なのは、カメラに装着しながら、その動きを点検する方法になります。規格に合ったマウントアダプターを装着しても、その駆動が確認できます。今後、フイルムカメラではなくて、デジカメで先ずは撮影していきたいとの趣旨でしたら、カメラ接点の形状規格も確認して、購入する時期が来ると思います。

その際解らない事があったら、お気軽にお問い合わせ下さい。フォーカス調整機構も絞り羽ユニット機構も、こちらで検査しましたが問題ありません。カビの付着以外は、外観共にとても状態の良いレンズでした。私は撮影家ではないので、実写に際しての技術的なアドバイスはできませんが、構造に関して解らない事は、少しづつご自身でも学習していきながら、都度お気軽にお問い合わせ下さい。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ発払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費18,000円(税込)
クロネコさん送料神奈川(一律)=930円(税込)
決済方法銀行振り込み
合計18,930円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。