Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 修理記録

Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR

今回ご依頼頂きましたレンズは、その銘柄刻印にもある通り、Switzerland For Alpa すなわちスイス製のケルン社= Kern-Aarau社が製造・販売したフイルムカメラ=Alpa用交換標準レンズになります。Alpaとは、フイルムカメラの事で、Alpa Reflexというカメラの機種名です。創業当初は時計部品メーカーだったPegnons S.A 社が1945年頃に発売したライカ判フィルムカメラになります。その標準レンズとして、同じ Switzerlandのシネカメラレンズで有名なKern-Aarau社が製造・販売したかなり珍しいレンズになります。 Alpa Reflexというフィルムカメラはどんなカメラだったのかというと、下記写真の様なルックスのカメラでした。

アルパリフレックスモデルII
Alpa Reflex ModelII

カメラやレンズといった光学機器といえばドイツという印象が強いのですが、時計で有名なスイスでも、1,900年台初期にカメラやレンズも製造されていたのですね。Kern Macro Switar 50mm F1.8 ARという機種は、現在でも中古市場で流通している様ですが、その価格は当然ですが相応に高額です。それ以上に、流通している個体数が少ないので、修理する立場的にはもしもの事を考えると、正直少し尻込みしてしまう機種の仲間に属します。今回は普段から懇意にしている写真家の方からのご依頼でしたので、お預かりする事にしました。

このレンズ独特の機構

Kern Macro Switar 50mm F1.8 ARという機種は、一般的な他の単焦点レンズにはない、ちょっと特殊な機構が、絞り羽調整ダイヤル部に組み込まれています。個人的には、絞り羽ユニット機構はシンプルな方がいいと思うのですが、各メーカーさんが様々な創意工夫をしてきました。何故、単純な機構のほうがいいかのかというと、駆動の伝達にあまり複雑な部位を組み込むと、時間の経過と共に、不具合が生じやすいと感じるからです。今回お預かり致しましたレンズは、下記写真の様に、独特な絞り羽調整指標ダイヤルが組み込まれています。

Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 絞り羽調整ダイヤル
Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 絞り羽調整ダイヤル指標

案の定、この機構の汚れがひとつの原因で、絞り羽構調整ダイヤル自体が固く固着してしまうという支障をきたしていました。一般的には、絞り羽ユニット機構の不具合の殆どは、フォーカス調整機構螺旋状部のグリスが原因なのですが、今回ご依頼の支障の原因は、この絞り羽調整ダイヤル指標部位にありました。

レンズ検査ご依頼までの流れ(経緯)

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

ご依頼者様から頂いたメール

今回も全体的な整備をお願いします。海外から送られてきたレンズになりますが、絞り羽ダイヤルが全く動きません。そして、レンズも決して綺麗とはいえない状態です。あまり出玉がないという事と、状態が芳しくないという事で、かなり安く入手できました。いつもの様に修理の範疇ででき得る処置で結構ですので、何とか絞りだけでも復元できたら嬉しいです。予算は購入時に安く入手できた分、50,000円くらいなら助かります。宜しくお願い申し上げます。

今回お預かり致しました機種

Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 付属品
Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 付属品
機種名Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR
シリアルNO733651
付属品専用フード
課題(所有者さん見解)絞り羽根リングを回しても動きません
ご希望予算50,000円くらい

整備報告

先ず、絞り羽調整ダイヤルが全く動かないという症状に関してですが、お電話にてもお話し致しました様に、フォーカス調整機構螺旋状部のグリスが原因ではなくて、支障の原因は、少し特殊な絞り羽調整ダイヤル指標部位にありました。この部位に相当な汚れが付着していて、調整ダイヤルが固着状態でロックされていました。関連駆動部位の汚れも併せて除去処置施しましたので、その駆動は復元しております。トルク感に関しましては、復元後やや重めかと思います。

Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 解放時指標
Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 解放時指標
Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 絞り時指標
Kern Macro Switar 50mm F1.8 AR 絞り時指標

上記二枚の写真の様に解放値から絞り値まで全領域にて駆動が復元していますのでご安心下さい。

次に、光学系付着物に関してですが、レンズ鏡胴内部全てのレンズ表面に付着していた埃・カビ除去しました。カビの種類は、主に点カビでした。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。只、点カビの一部が腐食カビで、除去後の腐食痕跡がレンズ外周等に残ります。フォーカス調整機構螺旋状部、汚れの除去と再グリスUP処置施しました。感覚的には大きな変化は感じないと思いますが、このトルク感にて今後もご使用お願い致します。いつもお願いしておりますが、未使用期間が長期化しない様、なるべく豆にレンズを手にして頂きます様ご協力お願い致します。

納品に関しまして

※お願い・・・銀行お振込み頂きましたら、その旨メールにてお知らせ頂けますと幸いでございます。確認後速やかに納品させて頂きます。

発送方法クロネコ発払い便
送り状NO別途メールにて報告
配送状況お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費40,000円(税込)
クロネコさん送料東京都(一律)=930円(税込)
決済方法銀行振り込み
合計40,930円
お願いご決済後メールにてお知らせ下さい
お振込み先銀行

・みずほ銀行
・五香支店
・口座名義 一般社団法人 日本レンズ協会
・普通口座
・口座番号 1715154

山田 太郎の様にご記入下さい

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
(一社)日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔

kensuke tasai と申します。 光学機器の修理を主たる業務としております。 関連コンテンツも並行して配信させて頂いておりますので、リクエストございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。