Carl Zeiss Jena DDR Pancolar Electric 50mm F1.8 修理記録

この機種に限らず、一般的なレンズ鏡胴内部には、フォーカス調整機構と、絞り羽ユニット機構という二つの駆動系部位が組み込まれています。フォーカス調整機構螺旋状部には螺旋状金属同士の摩耗を防ぐ為にグリス＝油が塗られています。一方、絞り羽ユニット機構は乾いた状態が最善になります。

この相反した状態を好む機構が隣接して組み込まれている為に、フォーカス調整機構螺旋状部からの油分を含む汚れが、絞り羽ユニット機構に流れ落ちてきて、その事が原因で、絞り羽ユニット機構が、解放のまま固着してしまう現象が発生します。同じ機種でもその様な症状にならない個体もありますので、何故ある個体だけがこの様な症状になってしまうのかは、複数の原因によるものと診断されます。

レンズ検査ご依頼までの流れ（経緯）

今回のご依頼はメールにて受け付けましたので、その内容を簡潔にまとめました。

何度もありがとうございます。是非日本レンズ協会様に修理をお願いしたいと思いますので、ホームページに記載の住所に発送いたします。特に急ぎということではありません。どうぞ宜しくお願いいたします。

こちらからのお返事

お問い合わせありがとうございます。一般的なオールドレンズ鏡胴内部には、駆動系としてフォーカス調整機構と絞り羽ユニット機構の二つが組み込まれています。フォーカス調整機構螺旋状部のグリスが絞り羽ユニット機構に流れ落ちてしまう現象が発生すると、絞りが解放の状態で固着してしまう個体が散見されます。

もしも、この様な事が原因で固着している場合でしたら、油分を含む汚れを除去する処置にて課題が解決するケースはあります。只、この様な傾向にある個体はこちらでの処置後、時間の経過と共に同じ様な症状が再発する傾向があるのも事実です。この様な背景、ご理解の上ご検討お願い申し上げます。

過去の修理記録台帳を紐解きますと同機種にて概ね12,000円（税込）程かかっております。いずれに致しましても、O様の大切な光学機器です。業者さんの選定等々十分にご検討下さい。納期に関しましては、その時期で変化しますが現在は概ね10日間程お時間を頂いております。それくらいの目安で納品できております。お急ぎの方はその旨予め教えて頂いております。

修理報告

フォーカス調整機構螺旋状部のグリスが絞り羽ユニット機構に流れ落ちてしまう現象が主な原因で、この様な症状になってしまっていました。絞り羽ユニット機構に付着していた油分を含む汚れ除去処置施しましたので、その駆動は復元しております。作業工程で、光学系カビの付着も確認できましたので、併せて除去処置施しました。レンズ全体としての光学的なクリアー度は復元しています。

点カビの一種が腐蝕カビで、カビそのものは全て除去できていますが、除去後の腐蝕痕が若干ですが残ります。この点ご了承下さい。外観及び光学系及び駆動系、とても状態のよい個体に蘇りました。今まで同様大切にご所有下さい。尚、今回の様な症状の再発防止の為に、保管時のレンズの向きにもご留意下さい。重力の関係で上記写真右側の様な向きで保管される事を推奨させて頂きます。宜しくお願い申し上げます。尚、作業工程で撮影しました幾つかの写真もご参照下さい。

参考写真

納品に関しまして

発送方法	クロネココレクト便（着払い便）
送り状NO	別途メールにて報告
配送状況	お荷物追跡システム

ご決済に関しまして

整備費	12,000円（税込）
送料	茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 神奈川県 東京都 山梨県＝930円
代引き手数料	440円（税込）
合計	13,370円
決済方法	クロネココレクト便（着払い便）

ご縁ございましたら、今後もお付き合い・ご指導宜しくお願い申し上げます。
（一社）日本レンズ協会 代表理事 田斉 健輔