旭光学さんのレンズの中でも、Pentax Super-Takumar 55mm F1.8という機種は人気が高い様です。生徒さんが持参する頻度も多く、写真家の中でも愛用されておられる方も多い様です。今回は生徒さんと、修理依頼者さんの質問に答えるべく、このコンテンツを作りたいと思います。もしも、この機種をレンズ修理販売としての商材として取り組む場合は、売り手市場的に激戦区の様ですので、修理して販売するとか、そのレンズを使って実際に風景写真を撮るとかの付加価値を付ける工夫が必要になると思います。
旭光学さん
日本の大手光学機器メーカーの旭光学工業株式会社さんは、現在は名称をリコーイメージング株式会社として、レンズ、カメラ、デジタルカメラ、天体望遠鏡、内視鏡などを製造しています。中でも、PENTAX(ペンタックス)というのはこの様な光学機器のブランド名になります。このメーカーは、日本初の一眼レフカメラ=アサヒフレックスI、世界初のフラッシュ内蔵オートフォーカス一眼レフカメラ=SFXを発売するなど、高い技術開発力を誇っていました。中でも、中判カメラの分野ではPENTAX 645やPENTAX 67の様なロングセラー機はとても有名です。
このレンズ機種の特徴
修理の世界からこの機種を捉えた場合、三つの主な特徴があります。先ず一つ目の特徴としては、市場流通価格帯が4,000円から8,500円くらいのゾーンの機種なので、修理依頼が発生し難いという特徴です。当協会の料金基準に照らし合わせてみると、この機種の場合は最低料金目安の5,500円(税込)の機種に該当します。
なので、中々この値段で修理を依頼なさる方は少ないです。もう一つの特徴としては、M42マウント形状レンズに共通している構造を持っている点です。なので、一回この機種の構造と修理手順を学んでしまえば、その後、他の機種にも応用が効くという特徴になります。
最後の特徴は、この機種に限った話ではないのですが、絞り羽調整機構関連部位が多い点です。通常は調整ダイヤルだけで機能操作性に問題はないのですが、【AUTO】⇔【MAN】切り替えレバーやマウント接点ボタン等が組み込まれています。
写真家の方に聞くと、この機能はそれ程実写の際に役にたつという訳ではないらしく、この機構が組み込まれているので、絞り羽フイルムが解放のまま固着しやすくなる原因のひとつになっているという特徴です。前置きはこれくらいにして、この機種の種類について解説致します。
この機種の種類
Pentax Super-Takumar 55mm F1.8というレンズの機種は3種類に分類されます。厳密には4種類あるのですが、残念ながら最後の1種類の機種は、筆者は手に取った事がありません。
1、初期型(このグル―プは更に二種類があります)
2、前期型
3、後期型
レンズの構造的には大きな差はありません。只、レンズ修理販売をする際には、市場人気価格に微妙な差がでてくる様なので、一応知識として押えておいた方がいいのかもしれません。勿論、私は写真家ではないので、種類差による映りの反映に関しては言及できません。その見分ける際の根拠として、解りやすいので二つの根拠を解説します。
初期型
この機種は、レンズ鏡胴内部に組み込まれている硝子部位の枚数により、更に二つに分類されすが、私は枚数の一枚多い個体を手に取り、修理した経験がございません。
この固体で解説すると、シリアル番号(692370)位置がSuperの左側に刻印されているのがわかります。この位置は、初期型と前期型の共通項目になります。そして、二つ目の根拠が指標マークデザインです。
指標とは、フォーカス調整ダイヤル数値と、絞り羽調整ダイヤル数値の現在位置を表す固定マークの事です。初期型の場合、このデザインがビックリマーク=!の様なデザインになっているのですぐに解ります。もう少し詳しく解説すると・・・
①絞り羽【A】⇔【M】切り替えレバー
②絞り値=16が向かって右側
③指標マークが!の形
こんな特徴がある個体は初期型と判断していいでしょう。二つの根拠写真を横に並べてみた方がより解りやすいかもしれません。
この様な個所=二か所をチェックして、その個体の種類を特定して下さい。
前期型
初期型の見分け方は前述しましたが、この前期型の見分け方も二つの根拠で見分けます。シリアル番号位置と、指標マークデザインになります。
写真の個体の場合は、シリアル番号(1133583)刻印位置が、Superの左側に刻印されています。この位置は初期型と共通です。なので。このシリアル番号刻印位置だけでは、初期型なのか前期型なのかの区別の特定ができません。
①絞り羽【A】⇔【M】切り替えレバー
②絞り値=1.8が向かって右側
③指標マークが細長のひし形 ♦
この様な個所をチェックして、その個体の種類を確定して下さい。これも、写真を横に並べて、見やすくしておきます。
後期型
最後に後期型の見分け方です。同じ様に二か所の根拠を探します。シリアル番号刻印位置と、指標マークデザインになります。
ちょっと、写真の光の反射でわかり難いと思いますが、シリアル番号(3309588)刻印位置が、1.8/55の右側になります。今まで解説してきた機種は二つともSuperの左側でしたので、この根拠だけで、この個体が後期型だと特定できます。
念の為に指標デザインを見てみると、この写真の様なデザインと数値配列になっている事が解ります。
①絞り羽【AUTO】⇔【MAN】切り替えレバー
②絞り値=16が向かって左側
③指標マークが♦の形
微妙に違う事が解ると思います。同じ様に二枚の写真を横に並べておきます。
以上、三種類(厳密には四種類)あるといわれているPentax Super-Takumar 55mm F1.8 機種の見分け方について解説しました。今後、この機種を入手して「みたいと考えている写真家の方や、この機種をレンズ修理販売ビジネスの商材として検討している生徒さんの情報源としてお役にたてれば幸いでございます。
クイズ
今まで解説してきた内容がどこまで理解できているかの確認の為に、二種類の機種を横に並べた写真を最後にUPしておきます。左側の写真と右側の写真をよく見て、自分なりの根拠で、機種を特定してみて下さい。
Pentax Super-Takumar 55mm F1.8 整備解説補足動画
いい機会なので、Pentax Super-Takumar 55mm F1.8という機種の整備手順を動画で解説しておきます。この機種の三つの種類に関係なく、動画を見て学習すればどなたでも、ご自宅でこの機種に関しては、整備を施す事ができると思いますので、ご自身で整備して、いつまでも状態の良い個体を維持して下さい。少なくても、光学系付着物除去はできると思います。尚、動画の撮影環境が、個人的な趣味で水の研究をしている部屋での録画の為、少しお聞き苦しいとは思いますがお許し下さい。
①部位名称
②A⇔M切替操作
③前玉ユニットの取り外し
④フロント(対物)側ユニットレンズの処置
⑤リヤ部位の処置
⑥リヤ部位の再組立
Pentax Super-Takumar 55mm F1.8で撮影した風景写真スライド
撮影場所は、当協会所在地から自転車で10分くらいで行ける、松戸市古民家文化財に登録されている旧斎藤邸敷地内で撮影しています。この空間は個人的にもとてもお気に入りで、まるで時が止まってしまった様な、静かでとても落ち着ける空間です。お弁当を持って、3時間位撮影していると何だか元気が湧いてきます。きっと、あなたの傍にも心を癒してくれる身近な自然風景があると思います。
他のオールドレンズを使って撮影した写真集をスライドショーにして公開しております。